シージョセ 全年齢


  「見守っていてくれる?」


「ねえシーザー、見て見て!」
 子供のように笑いながらそう言ったジョセフが両腕で抱いているのは、こちらは正真正銘小さな子供で、僅かに首を傾げるような仕草をするその子は、大きな眼でシーザーの顔を見上げていた。
「オレの子。可愛いでしょ? 名前はホリィ」
「ボンジョルノ、シニョリーナ」
 シーザーは子供の小さな手を取って、軽く口付けをした。
「うわぁ、相変わらずキザね。って言うか、人の娘に勝手になにしてくれてんの?」
「挨拶だろ、このくらい」
 シーザーは笑いながら言った。
「将来美人になると思わない?」
「それは大変だ。既に充分美人なのに、これ以上?」
「親馬鹿呼ばわりされると思ってたのに、シーザーちゃんには負けたわ」
「お世辞なんかじゃあないぜ。良かったな、スージーQに似て」
 シーザーは大人しくジョセフの腕に抱かれているホリィの丸い頬を指先で軽く突付きながら言った。
「ねえ、それ、褒めてないよね?」
「褒めてるさ。スージーQ似の美人だって、そう言っただろ?」
「オレのことは褒めてないじゃん!」
 子供を抱えていなかったら、軽いパンチくらいは飛ばしていたかも知れない。代わりに伸ばした足はあっさりかわされた。
「子供は1人だけ?」
「んー、男の子もほしいかなぁって思ってはいる」
「家族が多いと、家の中が明るくなる」
 ジョセフは、シーザーの家族の話を――本人の口からではないが――聞いたことがあった。彼がどんな風にして成長してきたのかも。シーザーの笑顔が少しだけ寂しそうに見えたのは、気の所為ではないだろう。
「でもスージーQがさぁ!」
 ジョセフはわざと声のトーンを変えて言った。
「もう1人子供がいたら世話が大変すぎるって」
「ああ、なるほど」
 シーザーは納得したように頷いた。
「なに『なるほど』って。ああ、シーザーってきょうだいいるんだっけ? 下の子の面倒見るの大変だったから知ってるとか?」
「いや、お前がいたら、既に子供が2人いるようなもんだろうなと思ってな」
 ジョセフは眼と口を大きく開いた。
「ちょっ……、そーゆー意味かよ!? あんにゃろぉ! あとでおぼえとけ! ってゆーか、シーザーお前もだ! ジョセフ・ジョースター、容赦せん!!」
「おいおい、暴れるなよ。ほら、ホリィが起きるぜ」
 いつの間にか、ホリィはジョセフに抱かれたまま、眼を閉じて小さな寝息を立てていた。成人済みの男2人がこれだけ騒いでいるというのに、よくそんな安らかな顔で寝ていられるよなと、ジョセフは感心してしまった。
「こりゃ大物になるなぁ」
「お前達の子供だしな」
「それ褒めてる?」
「もちろん。それに、子供は寝るのが仕事だ」
「まだ1歳にもなってないってのに、仕事熱心ですこと」
「お前はそろそろ起きろよ。子供じゃあないんだからな。年齢的にも、立場的にも」
「うん……」
「スージーQが待ってる」
 シーザーは身体の向きを変えぬまま、1歩後ろへ足を引いた。それを合図にしたかのように、ジョセフは自分の意識がこの場所から離れ、目覚めへと向かおうとしていることを自覚した。
「なあシーザー」
「うん?」
 彼の声は既に遠くなりかけていた。ジョセフはシーザーが自分の声を聞き逃してしまわないように、口を大きく開けて言った。
「また、会いにきてくれるか?」
 するとシーザーは笑った。
「お前の夢だ。好きにするといい」
 そう、これはジョセフの夢だ。現実の世界で、こうして彼と言葉を交わすことは出来ない。今眼の前にいるシーザーは、所詮ジョセフが作り出した紛い物でしかない。ジョセフが作り出した彼は、ジョセフが望む言葉以外を口にしない。だから、何を尋ねても無駄なことは分かっていた。それでも――
「あのさ、シーザー!」
 おそらく「なんだ」と尋ねたのであろうシーザーの声は、もう聞こえなかった。口の動きだけで彼が「JOJO」と自分の愛称を呼んだことだけが分かった。
 ジョセフは眼を覚ました。
 夢の中で抱いていたホリィは、今は仰向けになったジョセフの腹の上で眠っていた。どうやらスージーQが乗せたらしい。ベッドの傍に立っていたスージーQは、眼を開けたジョセフに向かって「やっと起きたわね」と言って笑い、ホリィを抱き上げて寝室を出て行った。静かになった部屋に、夢の余韻が戻ってくるような気がした。
「夢……ね」
 ジョセフは溜め息を吐いた。その耳に、微かに届いた――ような気がした――。
『ああ、ずっと見ててやるよ』
 それも、夢と同じ、ジョセフが聞きたいと思う言葉を、彼の頭が作り出しただけだったのだろう。それでもジョセフは、微笑んだ。
「人が言おうとしてたセリフ先に読むんじゃあねーよ。それはオレの十八番だぜ」


2011,07,02


シージョセの練習しようと思ったら、なんか切なくなりました。
公式で結婚したキャラでカップリングって、わたしにはなかなか難しいです。
そのキャラが結婚する前に既にどっぷりはまってしまっていれば話は別なんですが。
2部よりも先に4部読んじゃったからなぁ。
結婚どころか不倫してたよ(笑)。
読む順番が違っていたら今頃もっとシージョセシージョセ言っていたかも知れませんね。
よく考えたら2人が一緒にいられたのって、1ヶ月ちょっとだけで、過去設定も作れないし、実は結構書くの難しいカップリングだったんだなぁと今更思い知りました。
あと自分はそろそろ夢オチを封印すべきだと思います。
<利鳴>

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