フーゴ&ジョルノ 全年齢 フーナラ


  koibana


 ペンを走らせる手をとめたジョルノは、ふうと小さく息を吐いた。ほぼ同時聞こえたもっと大きな溜め息が、その音を完全に掻き消した。顔を上げると、愁いを帯びた横顔がテーブルの向こう側にあった。
「フーゴ?」
 声をかけると、フーゴははっとした表情をした。もしその溜め息が、いかにも「どうかしたの?」と尋ねてほしそうなわざとらしいものだったら、ジョルノは触れようとはしなかっただろう。が、その時のフーゴは、まるでその場にジョルノがいることにも、自分が溜め息を吐いたということすらも今の今まで全く気付いていなかったかのような顔をしていた。
「あ、す、すみません。邪魔しましたかっ? えっと、資料作り?」
「いえ。学校の課題です。それも、今ちょうど終わったところ」
 ジョルノが微笑んでみせると、フーゴもわずかに表情を緩めた。
「そうか。ジョルノはまだ学校に籍を残しているのか」
「はい。暇潰しくらいにはなるかなと思って。まあ、世を忍ぶ仮の姿と言ったところですかね」
「……ニンジャって本当にいるんですか?」
「さあ。ぼくは日本育ちじゃあないので」
 ジョルノが真顔で返すと、フーゴはくつくつと笑い出した。先程は浮かない表情をしていたが、笑うことすら出来ないほどの重大な悩みを抱えているということではないようだ。
「みんなは、今日は遅いんでしたっけ」
 最年少2人に留守を任せて、リーダーを始めとする仲間達は皆出払っている。特に賑やかなメンバーが不在だと、事務所の中は至って静かだ。ジョルノが意識的に会話を振らないと、フーゴはまた溜め息を吐き出すのではないか。そう思って適当に選んだ――当たり障りのなさそうな――話題だったつもりなのに、ついさっき笑ったばかりの顔は再びわずかに曇った。
(この話題はNGか……)
 実は、ジョルノが「学校の課題を」と言った時にも、彼はわずかに眉間に皺を寄せていた。学校の課題と、仲間の話題がNGで、ニンジャはOK。基準がさっぱり分からない。
「お茶いれたら飲みますか?」
「あ、ぼくが……」
「いえ、ここは後輩のぼくが」
 ジョルノが立ち上がると、フーゴは素直に席に残った。その傍を通り過ぎる時、テーブルの上に、なんの変哲もないノートが1冊置かれているのが見えた。
(あれは……)
 見覚えがある。どこにでも売っている定番の物だという意味以外で。
(そうだ。確かナランチャが)
 フーゴに勉強を教えてくれとねだる少年――実際にはジョルノ達よりも2つ年上だ――が、確かそのノートを使っていた。
(なるほど)
 そういうことかと、ジョルノは心の中で呟いた。
 ナランチャは、自分から「勉強を教えてほしい」と言い出しておきながら、あまり熱心に机に向かってはいられないようだった。粘り強く教えようとしても、ナランチャの集中力が切れてしまうのは早く、ちっとも予定通りに進まないと愚痴をこぼすフーゴの姿は珍しくはない。そんな時の彼と、今の彼は、よく似た表情をしている。おそらく、今日もまともに進められないまま、ナランチャが出かけなければいけなくなったのだろう。「学校の課題をやっていました」、「そう。ナランチャもちゃんとやってくれるといいんだけどね」。「みんなの戻りは遅いんでしたっけ?」、「うん。今日の予定がまだ終わっていないのにね」。そういう法則だったか――別にフーゴがニンジャ好きだということではなかったようだ――。
「ナランチャは」
 フーゴに背を向けたままその名を口にしたジョルノに、そこにある表情がどう変化したのかは見えない。が、想像は容易に付いた。
「勉強があまり好きではないみたいですね」
「あまりと言うか、全くと言うか……」
「それでも完全にやめてしまいはしない」
 カップを乗せたソーサーをテーブルに置くと、カチャリと音が鳴った。
「苦手な勉強を我慢してまで、フーゴの近くにいたいんですね」
 振り向きながらにっこりと笑ったジョルノは、フーゴの表情が面白いことになっているのを見て余計に笑いそうになった。フーゴの眼は、驚きの形に見開かれている。口元はにやけそうになるのを堪えるように歪んでいる。そして顔全体が赤い。一歩間違えば、怒っているようにも見えるかも知れない。やっぱり、フーゴにお茶をいれさせないで良かった。きっと彼は、今のタイミングでポットかカップを持っていたら、取り落として割ってしまっていただろう。
 フーゴはそのまま固まってしまったようだ。呼びかけてみても、変化はない。フーゴの再起動が完了するより先に、ジョルノがお茶をいれ終わってしまった。
「フーゴ、はいりましたよ。砂糖とミルクは入れて良かったでしたっけ?」
 フーゴは弾かれたように立ち上がり、そのままの勢いでテーブルの上に手をついて身を乗り出した。カップとソーサーが揺れて音を立てたが、幸い中身は零れなかったようだ。
「ほ、本当にそう思いますかッ?」
 フーゴは真剣な眼で尋ねてきた。
「はい?」
「だから、な、……ナランチャが、その……」
「ああ、その話」
 ジョルノは熱いお茶をゆっくりとひと口飲んでから、頷いた。
「ただの勘ですけどね。あ、冷めない内にどうぞ」
 手を差し出しながら促すと、フーゴは慌てたように椅子に座りなおし、顔を隠すようにカップを持ち上げた。ジョルノは「そんなことをしなくても見てませんよ」というふりをした。
 お茶には鎮静作用がある。蒸気と共に立ち上る香りを顔面に浴びている内に、少し落ち着いたのか、フーゴはぽつりと呟くように言った。
「実は……、少し前に、他のみんなにも言われたことがあるんです」
 カップの中で少し反響した声には、まだ照れが混ざっているようだ。“なにを”を省いてしまったのも、そのためだろう。あえて「なにを?」と聞いてやろうかとも思ったが、やめておいた。
「組織に入ったばかりのぼくが分かるくらいだから、他の人に分かっても不思議はないですね」
 それをわざわざ本人に言ったのは誰だろう。ブチャラティだろうか。それともミスタか。おそらくアバッキオは違うだろう。根拠はないが。
「本当にそうだったら、嬉しいなって、思うんです。でも……」
 フーゴはゆっくりとカップを下ろした。隠れていた表情はやはり冴えない。溜め息を吐いた時と同じ顔だ。
「自信がない?」
 それに応える声はなかったが、小さな頷きが返ってきた。
(第三者の眼から見たら、あんなにも明らかなのに)
 頭が良いはずのフーゴが、それに気付けないというのはなんとも不思議だ。恋愛事に関しては、得意分野とは言えないようだ。年相応の生活を送ってきていないそうだが、それが原因か。そんなことを考えていると、不意に、フーゴはふっと笑った。
「すみません。こんなくだらない話を聞かせてしまって」
 『くだらない』のかどうかは、ジョルノにはよく分からない。それを「無駄なことだ」と切り捨てる者はきっといるのだろうが、万人に共通する答えは存在しないはずだ。
「なんだか、普通の学生の会話のようでしたね」
 自分も“くだらない”ことを言ってみようと思い付いて、ジョルノはそんな言葉を口にした。フーゴは2度、3度と瞬きをした。
「そうなんですか?」
「学校内ではわりとありふれた会話です。誰が好きだとか、嫌いだとか」
「へえ」
 フーゴは14歳の時にすでに大学へ通っていたそうだが、年齢だけを考えれば、ジョルノとクラスメイトであってもなんの不思議もないのだと気付いた。では、今の会話は「2つ上の先輩で気になる人がいて……」のようなものか。ジョルノが学友からその手の相談事を受けることは、滅多にないが。
(あと、ナランチャが先輩だっていうのがすごくしっくりこない)
 まあ、それはさておき、
「『普通の学生』なら、貴方の悩みになんて応えるか、分かりますか?」
「……いや」
 ジョルノは幾度目かの微笑みを見せた。
「『そんなの本人に聞いてみりゃーいーじゃん』ですよ」
「なっ……」
 今日のフーゴは表情が豊かだ。リーダーと年上の後輩が不在で、普段はしていないつもりで実はしている緊張が解けているのかも知れない。こうして見ていると、彼もただの16歳の少年だ。
「き、聞くってッ……」
「一番シンプルで無駄がないでしょう?」
「それは、そうかも知れないけどっ」
「遠回しな方法ではナランチャには伝わらないのでは?」
「た、確かに……」
「だから、聞いてみましょう。『フーゴのことを、どう思いますか?』って」

「『どう』……って?」
 ナランチャは訝しげな様子でそう返した。まあ、そうだろう。帰ろうとしていたところを突然呼び止められて、予想したこともないような質問をされたとあっては、おそらく誰でもそうなる。
(本当に聞いてしまった……)
 「自分に任せておけば大丈夫ですよ」等と言われて、ジョルノが立てた計画に、フーゴは躊躇いを捨てられないまま乗ってしまった。件の質問をナランチャにぶつけてしまった以上、もう引き返すことは困難だ。
(ジョルノめ、本当に大丈夫なんだろうなッ)
 素直に認めるなら、フーゴはナランチャの返事を聞きたいと思っていた。いや、“好意的な返事を”だ。もし聞かされる言葉が“好意的”からかけ離れたものだったら……。そんなことになるくらいなら、やはり何も聞かずにいた方が良かったと、きっと後悔するだろう。しかし、もう質問はしてしまった。
「うーんと……」
 意図が良く分からなかったらしく、ナランチャは唸るような声を上げている。もっと簡単な聞き方をしないと駄目なのかも知れない。彼の場合は。
「つまり、単純に言うと、好きとか、嫌いとか、一緒にいて楽しいかとか、苦痛かとか、そういうことです」
(ここまで言わないと駄目なのかッ)
 フーゴは頭を抱えたくなった。
「なんだ。そーゆーことか」
 ナランチャの口調は途端に軽やかになる。そして、
「好きだぜ。フーゴのこと」
 その答えだけ聞けば、もちろん嬉しい。思わず口元が緩みそうになる。だがあまりにもあっさりと返されてしまい、やはり自分が真に望んでいるのは“それ”ではないと感じてしまう。おそらくナランチャは、他の仲間について聞かれても、同じように答えるだろう。
(みんなと同じ。それが不満か?)
 不満だ。
(自分だけが特別でありたいと?)
 そう。ナランチャの“特別”になりたい。
(それが、叶わないなら……)
 自分の中に、なにか黒いものが堆積していくのを感じた。それは、少しずつ膨らんで、外に溢れ出ようとしている。そんななにかを押し留めようとして、フーゴは無意識の内に息をとめていた。
 フーゴの心境等知るはずもないナランチャは、無邪気な声で続ける。
「そもそも、フーゴがいなかったらオレってここにいなかったんだよな。それどころか、とっくに死んでたかも。だから、すっげー感謝してるし」
(違う)
「怒ったらこえーけど、それ以外の時は優しいし」
(違う)
「あと、年近いからかな? やっぱり喋り易いってのはあるな。喋ってたら楽しいし――」
(そんなことが聞きたいんじゃあないッ!)
「年なら、ミスタの方が近くなかったでしたっけ?」
「あれ、そーだっけ?」
「そーですよ。ひとつ違いでしょう」
「そうか。でもオレがここに来た時は、まだミスタいなかったから」
「なるほど。じゃあ、結論は?」
「結論? フーゴのこと、好きだぜ」
「仲間だから?」
 そう尋ねられると、それまでテンポ良く喋っていたはずのナランチャは、急に黙ってしまった。少し待ってみても、答える声はない。
(……ナランチャ?)
「どうかしましたか?」
「そう、思ってたんだけどさあ」
 独り言のように呟くと、次の言葉まで再び間があった。
「ナランチャ?」
「仲間……。うん、仲間だよな。だから、好きだよ。フーゴのこと」
 彼は「でも」と続けた。
「それなら、みんな同じはずだよな? ジョルノも、ブチャラティも、みんな仲間なんだから」
「ナランチャ? どうしたんです? 何が言いたいんですか?」
 ナランチャの様子は明らかにそれまでと違っていた。なにか、酷く戸惑っているようだ。
「よく、わかんない」
 彼は小さな声で言った。フーゴには、ただじっと待つしか出来ない。
「なんか、違うんだ。最近。よく分かんないんだけど」
 ナランチャは何を言おうとしているのだろうか。フーゴには分からない。分からないのに、心臓の鼓動が早さを増してゆく。うるさい。これではナランチャの声を聞き逃してしまうかも知れない。その音は、自分の意思で一時的にとめてしまえるものならそうしてしまいたいほどにうるさく響いている。
「フーゴだけ、みんなとは違う気がするんだ」
「……どんな風に?」
 2つの声が酷く遠くで鳴っているように感じる。
「なんか、時々、苦しくなる感じ」
「一緒にいるのが苦痛?」
「違う! そういう意味じゃあないんだ! そうじゃあなくって……」
 次の言葉を聞いた瞬間、フーゴの耳はその声以外の音をなにひとつ聞いていなかった。相変わらず左胸の臓器がハイテンポで血液を循環させていることははっきりと自覚出来るのに。
 ナランチャは、静かに言った。
「なんか、ドキドキする。フーゴといると。ううん、フーゴのこと、考えると」
 フーゴはポケットの中でスタンバイしていた携帯電話のボタンを押した。少しの間の後に、軽快な電子音のメロディが聞こえてきた。ナランチャへの質問をどうしても打ち切りたくなったら、携帯電話を鳴らして急用が出来たように装う。これも、ジョルノが考えたことのひとつだった。
「あ、電話?」
 ナランチャもその音に気付いたようだ。
「いえ、メールですね。……ちょっと用事が出来たみたいです。すみません、話の途中なのに。と言うか、ナランチャも帰るところだったんですよね。引き止めてしまってすみませんでした」
「んーん、別にいいよ」
 ナランチャの声はいつもの子供っぽいものに戻っていた。ついさっきまでは妙に真剣な口調でいたというのに。なんとも切り替えが早い。自分だけが無様に焦っている気がして、フーゴはますます落ち着かない気分になった。
「ナランチャ、戸締りはぼくがしておきますから、先に帰っていいですよ」
「分かった。じゃあまたな」
 ぱたぱたと出口へ向かってゆく足音がした。が、それは戸の少し手前でとまったようだ。
「……あのさ」
「はい」
「……なんで聞いたの? フーゴのこと」
(ほらきた)
 流石のナランチャでも、理由を聞かされぬままにあんなことを尋ねられれば不審に思うだろう。それは事前にも充分予想付いていた。ジョルノは、それも「大丈夫です」と言っていたが……。
「ぼくは組織に入ってまだ日が浅いから、みんなのことを色々と聞いて廻ってみようかと思って」
 ジョルノは、さらりとそんなことを言ってのけた。フーゴは開いた口が塞がらない。隣室にいるジョルノの表情はもちろん見えないが、おそらく、平然としているのだろう。
「フーゴのことから聞いたのは、年齢が近いからなんとなくってだけの理由です。もちろん、時間があれば他の人のことも聞きたかったんですけど……」
 いかにも残念だというような口調。よくもまあいけしゃあしゃあと……。フーゴはうっかり何か叫びだしてしまわないように歯を強く食いしばっていなければいけなかった。
「じゃあ、オレのことも他の人に聞くの?」
 ナランチャは今の説明で完全に納得しているようだ。少し考えれば、新入りが仲間のことを知ろうと思ってリサーチしているにしては、質問の内容がおかしかったことは明白だというのに。
(ナランチャ、君はアホなのか!?)
 たぶんそうなのだろうと、フーゴは思った。
 ジョルノとナランチャの会話は続いている。明るい声。きっと普通の学生の会話とは、このような感じなのだろう。それが終わらない限り、フーゴは出て行くことすら出来ない。
「もちろん、ナランチャのことも聞いて廻りますよ。やっぱりリーダーに聞くのが一番ですかね?」
「うわ、なんかこえー。オレ、何て言われんのかなぁ」
「気になります?」
「え? そりゃあ、まあ」
「それは誰からの情報が?」
 このままではジョルノはなにか余計なことを言い出すのではないか。フーゴはそう思えて気が気ではない。「早く終われ」との思いを込めながら、彼はもう一度ジョルノの携帯電話を鳴らした。
「あ、催促」
「戸締りオレがする?」
「いえ、大丈夫です。お疲れ様でした」
「ん。じゃあな」
 今度こそドアの開閉音がして、ナランチャは出て行ったようだ。それでも用心してじっとしていると、ドアをノックする音が軽く響いた。
「もう大丈夫ですよ」
 ジョルノの声だ。それでもフーゴはまだ警戒をやめないままドアノブを廻した。なにしろ相手は、本人が隣室にいることを隠して、ナランチャに「フーゴのことをどう思いますか?」なんて聞くようなやつなのだから。油断して騙まし討ちにあうようなことがあっては眼もあてられない。
 そっとドアを開けて、部屋の中の様子を伺う。つい先程までジョルノとナランチャが話をしていたそこは、今は静かだった。本当に大丈夫のようだ。
「信用ないですね」
「あんなの聞かされて、信用なんて出来るか」
「まあ、それもそうですね。それにしても、良かったんですか? 結局決定的な言葉は聞き出せていないと思いますが」
「いいんだ」
 フーゴはドアを閉めるためにというフリをして、ジョルノに背を向けた。それでもきっと、ジョルノには気付かれているのだろう。自分の顔がおそらく紅潮しているのであろうことは。
「流石にあんなやり方でなんて聞けません」
 あれ以上の言葉は――ナランチャが言ってくれるのであれば――もっときちんと、正面から受け止めなければ駄目だ。そうでなければ彼に悪い。いや、そもそも、あまりにも卑怯ではないか。自分で聞き出そうとするのではなく、他人の手を借りるだなんて。
「じゃあ、自分で面と向かって聞く決心をしたってことですか」
「うるさいな」
 前髪の下から睨んでやると、ジョルノはくすくすと笑った。最初に会った時はなんとも言い難い雰囲気を持った男だと思った。妙に落ち着いている、とも。が、今はただの生意気な学生にしか見えない。
「そうだフーゴ。ぼく、ナランチャに『みんなのこと聞いてるんだ』って言っちゃったんですよ」
「聞こえてたけど……」
「新入りのぼくにしか使えない手段だったでしょう? でも、下手すると本当はそんなことしてないってバレるんですよね」
 例えば、ナランチャが他の仲間達がいる場で「ジョルノ、リサーチは済んだ?」なんて尋ね出したら、「何の話だ?」「そんなのオレ達は知らないぜ」となりかねない。
「だから、それは本当にやっておこうかなと思うんです。根掘り葉掘りはどうかと思いますが、簡単にあの人ってどんな人ですか? なんて聞いて廻る分には平気でしょう?」
「それは、まあ、構わないと思うけど……」
 フーゴは首を傾げた。ジョルノはなにを言おうとしているのだろう。
(なんか、嫌な予感がする……)
 フーゴの心の声が聞こえたかのように、ジョルノはニヤリと笑った。
「手始めに、フーゴから聞いてもいいですか? 年が近いから、ナランチャのことから聞きましょうか」
「なっ……」
「ナランチャのこと、好きですか? 嫌いですか? あ、隣室で聞き耳立ててる人なんていませんから、正直に答えちゃって大丈夫ですよ」
「お前ッ……」
 フーゴは再び顔が赤く染まっていくのを自覚した。ジョルノの笑顔が悪魔に見えた。
「無駄なことは嫌いだとか言ってなかったでしたっけッ?」
「ええ。でも今は大いに楽しんでいます。娯楽が無駄だとは思っていませんよ」
 どうやら、ジョルノの方が一枚上手であるようだ。
「君は」
「はい?」
「性格が悪い」
 目一杯睨み付けてやったつもりだったのに、ジョルノは笑みを浮かべながら「知っています」と答えた。「とんでもないやつだ」と、フーゴは改めて思った。


2016,02,07


叙述トリック!!(笑)
ジョルノとフーゴが対立してるような感じになってしまった話を書いていた時に、もうちょっと仲良しっぽい(それでいてカップリングではない)話も書きたいなと思っていました。
やっと書くことが出来たわけですが、ジョルノが「○○ちゃんが□□君のこと好きだって、本人に言っておいてあげたから♪」とか言うお節介な女子みたいになりました(笑)。
<利鳴>

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