ジャイジョニ 全年齢 現代パラレル ディエ→ジョニ要素有り

 −登場人物−
【ジャイロ・ツェペリ】養護教諭。
【ジョニィ・ジョースター】3年7組の生徒。
【ディエゴ・ブランドー】ジョニィのクラスメイト。
【マウンテン・ティム】ジョニィの担任。国語教師。
【サンドマン】3年6組の生徒。走ってる。


  模範解答:なし


 ノックの音にジャイロが顔を上げると、開けられた戸の向こうには車椅子に座った少年がいた。彼は不機嫌そうな表情で横を向き、こちらを見ようともしていない。「オレは来たくてこんな所へ来たんじゃあないんだからな」、そんな顔だ。
 彼は1人ではなかった。後ろから車椅子を押しているのはジャイロの同僚、国語教師のティムだ。優しくて教え方も丁寧で、オマケにルックスもイケメンだとかで異性の同僚や生徒からも人気がある男だ。ティムは車椅子の少年と共に中へ入ってきた。
「転んで怪我をしたらしいんだ。診てやってくれ」
「はいはいっと」
 ジャイロは慣れた手付きで机の引き出しの中から『保健室利用者カード』と書かれた書類を取り出した。その間に、少年は車椅子毎ジャイロの近くに移動させられて来ている。
「手首を傷めたらしい」
 ティムが言った。
「手? 足じゃあなくてか」
 ジャイロが少年の足を見ると、イラついたような眼が睨んできた。ティムは呆れたような溜め息を吐いている。
「彼は元々車椅子で通学してる。お前養護教諭だろ。生徒の健康状態くらいチェックしておけよ。持病のある生徒だっているかも知れないだろ」
「生徒何人いると思ってるんだよ。把握なんて出来るか」
「それにしたって──」
 「こんな目立つ生徒くらい」。ティムが言いかけたのはそんな言葉だろう。だがそれを口にすれば、後からどんな問題にされるか分からない。差別的な発言だ何だと騒がれるのは不味い。ティムは慌てたように口を噤んだ。おそらくその意図を、車椅子の少年はとっくに見抜いてしまっていたのだろうが、彼は相変わらずの様子で、何も言おうとしなかった。
「あー……とにかく……」
 その時、ティムの言葉を遮るように、始業を告げるチャイムが鳴り始めた。ティムは腕時計に視線を落とした。
「すまない、授業があるんだ。あとは頼んだ」
「はいよ」
 ティムが出ていくと、室内は急激に静まり返った。少年は相変わらずむすっとしている。
「えーっと、とりあえずこれに記入……」
「出来ない」
 少年はここへ来て初めて言葉を発した。短く、小さく、そして刺々しい声だった。
「やったの利き腕か? じゃあ仕方ねぇな」
 ジャイロは差し出しかけていたボールペンを自分で持ちなおした。書類の項目を順番に読み上げ、少年の返答を書き取ってゆく。
「名前」
「ジョニィ・ジョースター」
「学年と組」
「3の7」
「ああ、ティムのクラスか。えーっと患部と症状……」
 ジャイロは「診せろ」と言ってジョニィという名の少年の手を取った。痛みがあったのか、彼は僅かに眉をひそめた。
「少し腫れてるな。折れてはいないと思うが、痛みが退かなかったら大人しく病院行け。処置、湿布薬……と」
 ジャイロは棚から取り出した真っ白な湿布を、慣れた手付きで少年の白い肌に貼り付けた。
「よし。で? 何してて転んだ? 体育か?」
 尋ねると、ジョニィは「ふんっ」と鼻を鳴らした。
「ぼくが体育の授業受けられると思うの?」
 ジャイロは「ああ、そうだったか」と呟いた。ついクセで他の生徒が来た時と同じ台詞を口にしてしまったのだ。他意は全くなかったのだが、もしかしたらジョニィには今のは嫌味だと思われたかも知れない。「面倒臭いな」と思いながらも、ここで全て投げ捨ててしまうわけにもいかない。
「じゃあどうした」
「……それ言わなきゃ駄目?」
「記入の欄がある。『無理に』とは言わないが、その場合は言えない理由があるんだと判断されても仕方ないな。お前さんの知らない間に、大事件に発展してるかも知れないぜ。学校内で悪質な虐めが多発してる、とか、なんらかの事件に巻き込まれた可能性が、とかな。そうなったら黙ったままってのは難しいんじゃあないかねぇ?」
 おどけたように言うと、ジョニィは露骨に舌打ちをした。続いて溜め息。数秒の沈黙の後、やっと口を開いた。
「Dioに……」
「ディオ?」
「3年7組ディエゴ・ブランドー」
「ああ、クラスメイトか」
 再び唇を噛むように黙り込んだジョニィに、「そいつがどうした」と先を促すと、彼は小さな声で答えた。
「廊下で、……突き飛ばされた」
 彼の顔は、どこか幼さを残しつつも、とても整っている。それが笑顔なら、おそらく近付いてくる女子生徒は少なくはないだろう。だが今、それは明らかに歪んでいた。痛みを堪えているのだろうか。あるいは、他の何かを──?
 本当はよそ見をして歩いているクラスメイトと衝突した程度のことを彼が誇張して言っているだけだとしても、少しぶつかったくらいで車椅子から転がり落ちるような事態にまでなるだろうか。余程勢いがついていたのか、あるいは故意か。まさか本当に『悪質な虐め』だとでも言うのか。
「ふざけあいでもしてたか?」
「ふざけてるのはDioの方だ!」
 ジョニィはむきになったように声を荒らげた。少なくとも当人の認識では、何等かの揉め事があったようだ。
 ジャイロは息を吐き、ペンを握り直した。
「……2時間目後の移動時間にクラスメイトと廊下で衝突、転倒した際右手首を傷めた……と」
 「これでいいな」と首を傾げると、少なくとも否定や訂正を求める声はなかった。
「じゃ、手当て終わり。教室戻れ」
 出来上がった書類をファイルに綴じながら言うと、ジョニィは鼻で笑ったようだった。
「あんた優しいね。片手だけで車椅子動かせって?」
「なんでそんな言い方するかな。素直に『手伝って』って言えないのか?」
「戻ったってノートもとれないんだぜ」
「じゃあ早退するか?」
「だから片手じゃあ車椅子は」
「親に電話してやるよ」
「来るわけがない」
 彼はますます苛立ったように言った。
「じゃあどうしたい」
「ここで休ませて」
 ジャイロは深い溜め息を吐いた。
(ったく、せめてもー少し可愛いげのある頼み方は出来ないのかねぇ……)
 教師と会話をしているというのに、彼の口からは一度も敬語が出てきてすらいない。この少年は、いつもこうなのだろうか。普段からそういったことはそれ程煩くは言わない上に、自身も相当砕けた口調で喋り、生徒曰く気さくに話しかけ易いらしいジャイロはともかく、厳しい教師にはしつこく何か言われていそうだ。適当に従っているフリをしていた方が楽だと言うのに、何故彼くらいの年頃の少年にはそれが分からないのだろうか。あるいは、相手を選んで態度を変えているのだろうか。
(もしかしてオレ、こいつにナメられてる?)
 決して嬉しいことではないなと思いながら、ジャイロは再度溜め息を吐いた。
「3時間目が終わるまでだ。終わったら、大人しく教室に戻るか早退するかしろ」
 ジョニィは譲歩するように頷いた。かと思うと、ジャイロに向かって両腕を伸ばしてきた。
「ベッドまで運んでよ」
 「頼む」と言うよりは「命令する」ような口調だった。しかし、確かに片腕だけで車椅子からベッドへ移動するのは少々手間だろう。仕方なくジョニィを抱え上げると、彼はジャイロの首に腕を廻してきた。ベッドまで移動させ、離れようとしたところでその腕に力が込められた。そのままぐいっと引っ張られる。危うく倒れ込みそうになったが、なんとかベッドの上──ジョニィの顔の横──に手をついてそれを防いだ。
「何してる」
 ジャイロは真下にある顔に向かって尋ねた。ジョニィは腕を離そうとしない。
「ねぇ、せんせー? 一緒に寝ようよ」
 彼は唇だけで笑った。
「何考えてる」
「さぁ?」
「写真でも撮ってゆする気か?」
「そうして欲しい? でも教室に携帯置いてきちゃったから」
「どうせやるなら苦手な教科の担当相手の方がいいんじゃあねーの? 養護教諭は試験作らないから、問題の横流しは出来ないぜ」
「それは残念。でも、不正じゃあなくて嫌がらせなら出来るんじゃあない? バレたらクビでしょ?」
「3年のくせにそんなことして、進学も就職もしないつもりか?」
「そうなったらせんせーが養ってくれる?」
「そうなったらオレもクビになってんじゃあねーの? そんな資金どこにもないぜ」
 ジョニィは肩を竦めるような仕草をすると、口を閉じ、そのままジャイロの顔をじぃっと見上げていた。なんとなく、先に眼を逸らせた方が負けな気がして、ジャイロもそのままじっとしている。しばらくして、先に折れたのはジョニィの方だった。挑発的な表情は消え、彼は溜め息と共に両手をベッドの上へ投げ出した。
「……つまんないの」
 不貞腐れたような口調で言う。
「もっとびびれよ」
 ジャイロは近くの椅子に座りながら、彼の言葉を鼻で笑い飛ばした。
「はんっ。手ぇめっちゃ震えてたぜ? お前の方がびびってんじゃあねーか。馬鹿なこと言ってる元気あるなら、教室に戻らせるぞ」
「キスされるかもとか思わなかったの?」
「全然。気付いてないかも知れねーが、お前演技下手だぜ。学芸会で主役に選ばれたことないだろ」
 淡々とした声が止み、彼がここへ連れてこられた時と同じ、沈黙が訪れた。ジョニィはジャイロがいるのとは反対の方へ顔を向けている。ジャイロの嫌味が聞こえていたのかどうかも不明確だった。
 そのまま寝てしまうつもりになったのだろうと、立ち上がって自分の机に戻ろうとした時だった。
「ぼくもそう思った」
 自分に向かって言ったのかと思い、ジャイロは首を傾げた。
「何か言ったか?」
 しかし返答はない。答えずに、ジョニィは独り言のように小さく続けた。
「冗談だろうって」
「おい?」
「……でもあいつはした」
 相変わらず顔を背けた彼の表情を伺うことは出来なかった。
「キスくらい、遊びみたいなもんじゃあないか。誰だって……誰とだって、別に意味なんかない」
 ジャイロが質問をしようとするより早く、ジョニィは突然起き上がり、自分の口を押さえた。喉から「ぐっ」と呻くような音が聞こえた。ジャイロは咄嗟に部屋の隅にあったバケツに手を伸ばした。
「要らないっ! 触るなよッ!」
 突き刺すように鋭い目線が向けられた。
 どうやら何かあったらしい。おそらくは、転倒の原因を作り出したらしいディエゴという生徒との間に。
 ジャイロはやれやれと息を吐いた。
「3の7だったな。荷物とってきてやる。さっさと帰れ。ついでに一応レントゲン撮りに行ってこい。車出してやるから」
「……いいの?」
「何が」
「早退しても」
「学校にいてもやることねーんだろ? だったら、さっさと帰って漫画でも読んでる方がよっぽど有意義だぜ」
 ジャイロがそう言うと、ジョニィはふっと息を吐いた。
「あんたって、変な人だな」
(今、もしかして笑ったのか?)
 ジョニィの顔をまじまじと見ていると、「なに」とつっけんどんな声が返ってきて、一瞬和んだように見えた表情はもうどこにもなかった。
「いや、なんでもない。大人しくしてろよ」
 ジョニィの視線が背中を追ってくるのを感じながら、ジャイロは保健室を出た。念の為に鍵をかけて、ジョニィの教室へ向かう。
 3年7組の教室では、担任であるティムの授業が行われていた。彼なら、事情を知っているので説明が面倒臭くなくてありがたい。前の黒板に近い方の戸を開けて中に入ると、ティムは生徒達に「全員教科書黙読」と指示を出して、よってきた。
「どうだった?」
「念の為医者に診せる。親は来られないらしいから、オレが連れてく」
 生徒達の眼が「何事だろう」とこちらに向けられている。ジャイロは、説明を求める視線を、「いいから教科書読んでろ」と一蹴した。
「午後の授業は? そのまま早退か?」
「本人がノート取れないって言ってるからな」
「そうか、分かった」
「荷物持って行く。席どこだ」
 ティムが指差すまでもなく、ジョニィの席はすぐに見付かった。おそらく車椅子の彼が使い易い位置にと配慮されてなのだろう、後ろの出入口に一番近い席が、唯一無人になっていた。
 ティムに授業を続けてくれと告げ、ジャイロはジョニィの席へと向かった。机のわきに下げられている鞄の口を開き、教科書やノートを詰め込んでゆく。
「手伝いましょうか」
 声を掛けてきたのは隣の席の男子生徒だった。顔を上げたジャイロは、思わずその手をとめていた。
(――こいつ……)
 ジョニィの隣の席の生徒は、碧い眼を真っ直ぐこちらへ向け、わずかに微笑んでいた。ジャイロの返事を待たずに椅子を引くと、立ち上がってジョニィの机の中身を取り出し始めた。言動だけ見れば、教師受けの良い優等生だろうか。しかし、彼の瞳にはどこかぞっとする光が宿っていた。おそらく彼が誰かに従うことはあるまい。表面上はそうではなかったとしても、腹の中では自分以外の全てのものを見下しているに違いない。単純な反抗期等ではない。それは彼の根本に存在しているものだ。明らかに『ただの高校生』にしては異質にしか見えない。
「これで全部かな」
 男子生徒にそう言われて、ジャイロははっと我に返った。すでに机の中は空になっているようだ。
 重たくなった鞄の口を閉めたところで、ふと思い付いて聞いてみた。
「ディエゴ・ブランドー?」
 確証があったわけではなかった。だが「もしかして」と思って尋ねてみると、男子生徒は「はい」と返事をした。
「なにか?」
 ディエゴは首を傾げた。笑顔のまま。「ジョニィからオレの名前を聞いたんだろう?」と言うように。
「……いや、なんでもない。助かった」
「どういたしまして」
 そう言うと、ディエゴは自分の席に戻った。
(なるほど……な)
 ジャイロは心の中で呟いた。ジョニィの負傷の原因を作ったと思われるディエゴ・ブランドー。その張本人が、すぐ隣の席にいるのでは、ジョニィが教室に戻りたくないと思うのも無理はないかも知れない。加えて双方のあの性格……。こんな2人がいるのでは、担任のティムも大変だ。小さく溜め息を吐き、ディエゴの視線がずっと自分を追ってきているのを感じながら教室を出た。
 保健室に戻ると、ジョニィはベッドの上で仰向けになって眼を瞑っていた。しかし眠ってはいなかったようで、ジャイロが近付いて行くと、頭を半分上げてこちらを見た。
「ほらよ、鞄」
 彼は自分の荷物を受け取ると、眉を顰め、鞄の口を開けて中を覗き込んだ。
「辞書まで入ってる」
「ないと家で宿題出来ないだろ」
「家にだって辞書くらいある」
「また教室まで行って置いてこいってか?」
「ぼくがこれだけの重量持って登校するのがどれだけ大変か分かってないんだ」
 正論かも知れないが、やはり言い方が可愛くない。彼と先ほどのディエゴ、どちらがより問題児なのか、あとでティムに聞いてみようと思った。
「分かった。じゃあここに置かせてやるから、明日の朝取りに来い」
 ジョニィの手から分厚い辞書を取り上げると、ジャイロはそれを自分の机の上に置いた。一応納得したらしいジョニィを車椅子に座らせ、それを後ろから押して一緒に廊下へ向かった。玄関から外に出て、移動させてきた愛車の後部座席に彼と彼の車椅子を積み込む。学校の敷地から外の道路へ出ようと左右の確認をしていると、ジャージ姿の生徒が数人見えた。どうやら、体育の授業で学校の外を走っているようだ。こちらへ向かってくるのは、おそらくクラス内で最も速い者達だろう。その中に見知った顔を見付けたらしいジョニィは、車内からコンコンと窓ガラスを叩いて自分の方へ注意を促した。それに気付いた外の生徒に向かって、ひらひらと手を振っている。
「お前何やってんだ。大人しくしてろ」
「手振っただけじゃん」
「授業サボってる自覚ないのか。もっと後ろめたそうにしてろよ」
「『止むを得ず早退』だもん」
 そんな減らず口を叩くバックミラー越しのジョニィは、先ほどよりも少し落ち着いたのか、なんだか楽しそうな顔をしているように見えた。
 そのまま近くの病院にジョニィを連れて行き、レントゲン検査の結果骨に異常はなしと聞くまでの時間は妙に長く、途中で何故か缶ジュースを奢らされるハメになりながら彼を自宅まで送り届け、ジャイロが学校へ戻ったのは午後の授業がとっくに始まっている時間になってからだった。

 翌朝、まだ授業中であるはずの時間に教師と生徒が車で校外に出て行くところが目撃されたそうだがどういうことかと問い合わせの電話が学校に入ったらしい。
「ふつー保健室の先生が生徒乗せてたら病人か怪我人だと思わねーか? 分かんだろそのくらい」
 ジャイロは机に肘をつき、自分の顎を支えながら溜め息を吐いていた。
「呑気に手なんか振るから、そのどっちにも見えなかったんじゃあねーか。お前の所為だ」
 ジャイロは机の向こうにいる車椅子の少年を睨んだ。しかし彼は平然としている。
「何? なんか説教でも食らったの?」
「校長が『迂闊な行動は控えるように』だとよ。こっちの説明なんざ聞きやしねぇ」
 駆けつけたティムが該当の生徒は以前から足が不自由であることと、その前の時間に転倒して怪我をしたが、迎えに来られる保護者がいなかったことを説明してくれたお陰で、やっと解放してもらえたが、そうでなければ、ジャイロはまだ校長室のソファから立ち上がることすら出来ずにいたかも知れない。
「ふーん。じゃあぼくが無理矢理車に乗せられて、ホテルに連れ込まれましたとでも言ったら本当にクビか」
「で、その元凶が何の用だ」
「人聞きの悪い。辞書取りに来たの。来いって言ったでしょ」
 彼はジャイロの机の上を指差した。
「ああ。これな。ほらよ」
 ジャイロはそれを、手を伸ばして渡してやった。彼は右手で受け取った。
「どうも」
「もう治ったってか」
「まあね」
「最初から仮病だったんじゃあねーの?」
「さあね。転んだ時に床についちゃったのは本当だけどね」
「クソガキめ」
「また問題になるよ、そのセリフ」
「もう行け。ホームルーム始まるぞ」
 ジャイロはハエを掃うように手を振った。ジョニィは、僅かに肩をすくめるような仕草をすると、車椅子を――両手で――操作して、出口へ向かった。廊下に出て戸を閉める時、彼は笑顔でこう言った。
「またね、ジャイロせんせー」
 本人にはもう聞こえないであろうことを承知の上で、ジャイロは「もう来んな」と溜め息を吐いた。しかし、それから卒業までの間に、その保健室にジョニィ・ジョースターが顔を見せない日は数える程しかなかった。時には、彼は次回訪ねて来る用に、わざと『忘れ物』を置いていくことさえあった。担任に届けたこともあったが、そうすると彼はわざわざ全く気持ちの篭っていない感謝の言葉を言いに、結局来た。そして新しい『忘れ物』を残していく。ジャイロは、どうやら自分はやっぱりナメられているらしいと、今日の『忘れ物』である――普通に考えれば保健室で使うわけもなく、忘れるどころか取り出す意味すら分からない――三角定規を見ながら思った。


2012,04,30


ジャイ←ジョニなんだかディエ→ジョニなんだか……。
なんとかジャイジョニにもっていこうとしたら激しく無理矢理感が……。
ディエゴがジョニィに嫌がらせするのも
ジョニィがジャイロにちょっかいかけようとするのも、相手が好きだから。
君たち小学生ですか。
その愛情表現は一般的と言うか、『普通』や『正しい』カタチではないかも知れないけど、
そんなこと本人にとってはどうでもいいんです。
恋愛に模範解答なんておそらくないのでしょう。
でも相手が嫌がるようなことはしてやんなよ。
なんだかんだでジャイロだって毎日ジョニィが忘れ物取りに来るのがだんだん楽しみになってたらいいと思います。
一番正しくないのは教師→生徒ですがね。
ジョニィ早く卒業してあげて。
<利鳴>

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