ディエジョニ ジャイジョニ R18 3P


  終わりなき落下


 ホテルのフロントで偶然擦れ違った時、意味ありげな視線を向けてきたのはジョニィ・ジョースターの方からだった。一瞬だけこちらを見て、唇の端でにやりと笑ってみせる。そんなジョニィの表情を見るのは、これが初めてではなかった。それに込められた意図も理解している。応じたことも、すでに数回はある。
 ディエゴが無言で通り過ぎると、ジョニィもまた、何も言わずにジャイロ・ツェペリの後ろを車椅子で移動していった。
 部屋のドアが叩かれたのは、真夜中近くになってからだった。ドアを開けた先には案の定、ジョニィの姿があった。車椅子が入れるように横へ避けてやると、それが当たり前のことであるような顔をして、彼は部屋の中へと入って来た。
「君さぁ、なんでこっちに来ないわけ?」
 ドアを閉めて振り向いたディエゴに、ジョニィは、批難するような口調で言った。
「車椅子でここまで来るの、大変なんだけど」
「ふん。オレが来いと言ったわけじゃあないぜ。お前が勝手に来たんだ」
「へぇ、なるほどね。じゃあ君はぼくが来るのを寝ないで待ってたんだ? ペットの犬みたいに? ふーん、それはいい子だったね。頭でも撫でてもらいたい?」
「相変わらずの態度だな」
「いきなり変わるわけないだろ」
 ジョニィはそう言ったが、ある1人の男の前でのみ、彼が全く違う態度を取っていることを、ディエゴは知っている。
 ジョニィはベッドの横に車椅子を移動させて、「早くしてよ」と言うような眼でディエゴを見ている。ベッドに上がることくらい、自分1人の力でわけもなく出来るくせに。最近では――おそらくは『遺体』の影響で――その脚が僅かにではあるが動く――こともある――ようになっていることも、ディエゴは知っていた。彼がこんな時間にディエゴの部屋を尋ねてきた――日によっては逆にディエゴを自分の部屋へ招き入れる――のも、戻りつつある感覚の所為なのだろう。
 ディエゴは車椅子からジョニィの身体を抱き上げ、それを自分の胸の高さからベッドへ向けて投げ落とした。このベッドのクッションがあまりきいていないことは知っている。ジョニィは「痛いだろ」と文句を言ったが、そんなことには構わずに、壁にもたれ掛かるようにベッドの上に腰を下ろした。するとジョニィは、自分から身体の向きを変えて、ディエゴの脚の間にやってきた。断ることもせずに、ディエゴのズボンに手をかける。その中から目的のものを取り出すと、彼は先端に口付けを落とした。そしてそのままミルクを舐める猫の仔のように、ピンク色の舌を覗かせながらその形をなぞってゆく。
「ペットみたいに?」
 ディエゴは「ふんっ」と鼻で笑った。
「よくそんなことが言えるな? この口で」
 頭を撫でてやる代わりに髪の毛を掴んで顔を上げさせると、白い歯を覗かせるように小さく開いたジョニィの口はディエゴから離れ、上目遣いの青い眼がこちらを見た。それは、何かが体内を一瞬にして駆け巡るかのような衝撃を与える光景だった。
 ディエゴの中心部に起きた変化を感じ取ったジョニィは、今度はそれを深く銜え込んだ。徐々に激しくなってゆく息遣いを聞きながら、僅かに残る幼さと娼婦顔負けの淫らさを共有するジョニィを見下ろしていたディエゴは、こんな行為をしていてもなお、この少年を自分のものとして従わせることは叶わないのだと知っていた。
(生意気なやつだ)
 だがそれが面白くもあった。簡単には従わない存在、ジョニィ・ジョースター。
(お前は実に面白い)
 しかし、そろそろ馴れ合ってばかりもいられない。レースは既に折り返し地点を過ぎた。この辺りでこのDioには敵わないのだということを、その身をもって思い知らせてやる必要がある。
(何でも思い通りになるとでも思ったか? 大間違いだ)
「ジョニィ」
 名を呼ぶと、ジョニィの動きは一瞬とまった。が、すぐにそれは再開される。聞こえていないふりでもしようと言うのか。
(面白い)
 出来るものならやってみるがいい。ディエゴは心の中でそう呟いた。
「ジャイロ・ツェペリとも、毎晩こんなことをしているのか?」
 今度こそ、ジョニィは完全に動きをとめた。ジョニィはディエゴの口からその名前が出てくることを非常に嫌っていた。とくに行為の最中には。まるでその名を神聖なものとし、ディエゴのような穢れた者がそれに触れようとすることを嫌悪するように。
「むかつく」
 ジョニィは己の感情を率直に言葉にした。
「ここで吐いてやろうか?」
 ディエゴは咽喉を振るわせるように笑った。
 ジョニィがジャイロ・ツェペリに好意を寄せていることは、ディエゴにはすぐに分かった。ジャイロに対して熱の篭ったような視線を向けるジョニィを見れば、気付かない方がどうかしている。そしてそれが、間違いなく彼の純粋な気持ちからの感情であって、性欲の捌け口として望んでいるのではないことも。
「このDioを代用品にするとはな」
「何のこと?」
 あくまでも白を切るつもりらしい。だがそれは、そうやって欺瞞をもってしてでも守りたいと思っている証拠でもある。ジャイロには知られたくないのだ。自分の醜い本心だけは。残念ながらその思いは、ディエゴに見透かされてしまった時点で破滅以外の終着はありえないものとなった。
「ジョニィ、いいことを教えてやろうか」
「なにさ」
「もうすぐここへジャイロ・ツェペリが来る」
 ジョニィの表情が凍りついた。その変化の様子を何等かの形で記録出来たとしたら、さぞかし愉快なことだろう。
 事態を呑み込めていないらしいジョニィのために、ディエゴはゆっくりとした口調でもう1度言った。
「ジャイロを呼んである。もうすぐ約束の時間だ」
「なっ……」
 ジョニィは慌ててディエゴから離れると、ベッドから降りようとした。しかしディエゴの方が早かった。うつ伏せの状態で腕の力を使って移動しようとしている細い身体を押え付けるのは簡単すぎるほどに簡単だった。馬乗りになって動きを封じ、掴んだ腕を捻り上げた。
「痛いッ、は、なせ……!」
「大人しくしていれば、後で頭を撫でてやる」
 耳元で囁くように告げたのと、ノックの音が響いたのはほぼ同時だった。ジョニィの身体がびくりと震える。
「鍵なら開いてるぜ。入れよ」
 ディエゴがそう言うと、躊躇うような短い間の後に、ドアが開かれる音がした。この部屋は、入り口からすぐにベッドが見えるような構造ではなかった。しかし、ジャイロが奥までやってきて2人の姿を眼にするのは、残酷なほどに容易い。
 「くるな」とでも言おうとしたのだろうか、ジョニィは息を吸い込んだ。そんなことをすれば、結局自分がここにいるということをジャイロに知らせてしまうというのに。しかしディエゴは、そこから言葉が出てくるよりも早く、その口に自分の手を突っ込んだ。出口を失った声の代わりのように、ジョニィの眼から雫が零れた。
「出迎えてやれなくて悪いな。今手が塞がって……いや、手で塞いで……かな? こっちまで入ってこいよ」
 ディエゴの指示に従って、部屋の奥まで進んできたジャイロは、そこにある光景に驚いて脚をとめた。状況を把握出来ない眼が大きく見開かれている。
「ジョニィ……?」
 ジョニィは顔を背け、痛みを堪えるように歯を食い縛った。今の彼に出来ることと言えば、あとは「せめて自分が一方的な被害者に見えることを祈る」くらいだろうか。おそらくジャイロもそう判断したのだろう。救いの手を差し出そうと、駆け寄ろうとした。だが、
「とまれ」
 ディエゴは部分的に恐竜化させた指先をジョニィの首筋にあてた。鋭く尖った爪が狙っている箇所にある太い血管の名称は、ジャイロが医者ではなかったとしてももちろん知っていただろう。そこを傷付ければどうなるかも。
「まずその場で武器を捨ててもらおうか。どうせ持って来ているんだろう?」
 ジャイロは小さく舌打ちをすると、それでも大人しく2つの鉄球をホルスター毎床へ放った。
「よし、こちらへ来い。ゆっくりだ」
 そう言いながらディエゴは自分も立ち上がり、ベッドの上にスペースを作るように床へと降りた。ジョニィを押え付ける力は緩めず、そのままだ。
「ここへ来い」
 ディエゴが先程まで自分がいた場所を指差すと、今度もジャイロは従い、ベッドの横までやってきた。
「ジャイロ、ジョニィを犯せ」
「なっ……」
 ジャイロの眼は先程よりもさらに大きく開かれる。ジョニィがディエゴの手を解こうと、もがき出した。
「聞こえなかったか?」
 ディエゴは無駄のない動きで、ジャイロをベッドに向かって蹴り倒した。
「ジョニィを犯せと言ったんだ」
 ジャイロの眼の前には投げ出されたジョニィの脚がある。華奢なそれを、彼は信じられないという表情で見ている。
 ディエゴはベッドの横に置かれたテーブルに手を伸ばし、あらかじめそこにおいてあった銃を取った。銃口はジョニィの腰の辺り、すでに別の銃によって作られた古い傷跡が残る場所を狙う。そうしたうえで、彼はジョニィの腕から手を離した。
「どうした? やれよ。撃つぞ」
「やめろっ!」
 ジャイロは叫んだが、ディエゴは何も聞かなかったかのように引き金に人差し指をあてた。
「なぁジョニィ、そうして欲しいんだよな? ジャイロ・ツェペリに滅茶苦茶にされたいんだろう? このDioがしてやったように」
「ち、……ちが……ッ」
 ディエゴは飛び起きようとしたジョニィを銃身で殴った。ジャイロが叫ぶ。
「やめろ! お前、何が目的だッ!?」
「目的? 目的があるのはオレではないと思うがな。なぁ、ジョニィ? お前は『そう』されたいんだよな? 『そう』されるのが好きで好きでたまらない。そうだろ?」
「違うッ! そんなんじゃ……ッ」
「教えてやれよ、ジャイロ・ツェペリに。お前がどれほど淫乱かをな!」
「嫌だあぁぁああぁッ!! やめろッ! やめて……ッ!!」
 ジョニィは両方の耳を手で覆った。その手を奪い、ディエゴは後ろから羽交い絞めにするようにジョニィを身体を抱き起こした。彼の中心部では、彼がディエゴのためにその口を使った時に生まれた熱が、まだ完全にはその形を失っていなかった。姿勢を変えたことによって、着衣の上からでも、それははっきりと確認出来た。
「あああぁぁああぁあああッ!!」
 動物の咆哮のような声を上げながら、ジョニィが今度は顔を覆うと、ジャイロは慌てたようにその光景から眼を背けた。
(そうすることをジョニィが望んでいるとでも? とんでもない! こいつは見られて興奮する変態野郎なのさ!)
「やれ」
 再び銃を構え、ディエゴはジャイロに命じた。
 鉄球を手放したジャイロに、反撃する術はなかった。彼はスタンド使いではない。従う以外の道はなく、彼は非常にゆっくりとした動きでジョニィに向かって手を伸ばした。が、途中で泪が滲んだジョニィの眼を見て、その動きをとめてしまう。それを見たディエゴは悟った。
(こいつもか)
 ジャイロもまた、ジョニィに想いを寄せている。「ディエゴに脅されて仕方なく」という言い訳をもってしてでも穢してしまいたくない愛しい者として。
 そうと知ってしまったからには、2人纏めて突き落としてやらないという手はない。
「夜が明けるまでそうしているつもりか? お前は童貞か?」
 ジョニィの腕を再び掴み上げ、頭がジャイロの方へ向くように叩き付けた。身体を手で支えるどころか庇うこともせずにベッドへ倒れ込んだジョニィを助け起こそうとしたジャイロは、しかし黒い銃口を向けられて凍り付いた。
「ジョニィ、どうやらジャイロはお前相手では勃たないらしいぞ」
 否定するわけにも肯定するわけにもいかないジャイロの唇が戦慄く。
「ジョニィ、お前がやってやったらどうだ? その口で。得意だろう?」
 ディエゴはジョニィの髪を掴んでジャイロの足元へぐいっと押し付けた。
「やれよ。ジャイロを撃つぜ」
「くっ……」
 屈辱に歪んだ表情をしながら、それでもジョニィは動きを見せた。肘で上半身を支えながら、ジャイロに向かって手を伸ばす。
「……ジョニィ?」
 ジャイロの困惑が空気を媒体として伝わってくるようだ。
「ジョニィ、よせ!」
「だいじょうぶ」
 ジョニィは弱々しく微笑んだ。
「大丈夫だから……。ジャイロは何も悪くないから」
「素晴らしい友情じゃあないか!」
 揶揄するように言うと、ディエゴはジョニィの背後に廻って彼の腰に手をやった。そのまま臀部を高く突き上げさせる姿勢をとらせる。ジョニィが声を出すより先に、後ろから手を伸ばして彼の中心部を握り込んだ。
「あッ……!?」
「ほら、いいから始めろよ」
「っ……」
 ジョニィは震える手でジャイロのベルトに手をかけた。その振動にあわせて、金具がカチカチと音を立てる。せめてその姿から眼を背けてやろうというつもりなのか、ジャイロは目蓋を硬く閉ざしている。怯えているようにも見えるその様子は、ディエゴにとっては酷く滑稽だった。
 ジョニィの唇がジャイロに触れた。
 ディエゴが急かすように手の中のそれを揉みしだくと、やがてジョニィは舌先でぴちゃぴちゃと音を立て始めた。呼吸の合間に喘ぐような声が混ざる。
「んっ……、はっ、ふぁ……。んっ、んんぅ……」
「本性を現したな」
 満足げにそう言って、ディエゴはジョニィのズボンを一気に剥ぎ取った。
「あっ!?」
 振り向こうとした頭を後ろから押さえて固定すると、ジョニィは苦しそうに唸り声を上げた。
「くぅ……」
「続けろ」
 冷ややかな声で言い放ち、ディエゴは眼の前にある白い双丘へと顔を近付けた。息が触れると小さく震えるその奥へ、伸ばした舌を進入させる。
「ひぁあッ!?」
 大きく撥ねた身体を押さえ、ディエゴは黙々と作業を続ける。
「や……、ああァッ! い……、やだッ、あぁ……」
「動くなよ、ジャイロ・ツェペリ」
 ジャイロはぎくりと肩を強張らせた。
「お前が動くよりは、オレが銃を取る方が早い」
 銃はディエゴのすぐ傍らにある。
「休むな、ジョニィ」
 そう命じてジョニィの内部へ唾液を送り込む作業に戻ると、ジョニィもまた、口での奉仕を再開させた。
「ジョ……ニィ……」
「だい……じょうぶっ。へいきっ、だから……っ」
 しきりに「大丈夫」と繰り返すジョニィの表情に、変化が現れ始めたことに、果たしてジャイロは気付いているだろうか。今のジョニィはディエゴの命令がなくとも、おそらくその行為をやめることはなかっただろう。包み込んだ両手の中にあるものを見詰める瞳は、愛しいものに向けるそれのようですらある。彼の腰は時折何かを求めるように揺らめいた。
 頃合を見てディエゴは自分の唾液でぬらした指をジョニィの秘部に押し当てた。強い抵抗はあったが、すでにそこはディエゴの存在を知らない箇所ではない。ディエゴの指は徐々に内部へと埋まってゆく。最初は第一関節、続いて第二関節、ついに根元まで潜り込むと、ジョニィは色を含んだ声を上げた。やがて人差し指が自由に内部を動けるようになると、今度は中指も添えて同じことを繰り返す。締め付けてくる力はすでに異物を拒むそれではない。
「あぁっ……、あっ、あっ。ディ……オっ」
 ジョニィが自分の名を口にした時、ジャイロの表情がぴくりと引き攣ったのを、ディエゴは見逃さなかった。
「も、ぉ……っ」
「なんだ?」
「……い、れてっ」
「いいだろう」
 荒々しく指を引き抜くと、今度は自分自身をそこへと宛がう。ゆっくりと力を加えていくと、指の挿入とは比べ物にならない熱の塊に、ジョニィは呼吸をするのでさえ精一杯だ。彼の手は、完全にジャイロから離れ、代わりにベッドのシーツを握り締めている。
「おいおい、自分だけ気持ち良くなろうっていうのか? 薄情なやつだ。ジャイロ・ツェペリが可哀想だとは思わないのか? なぁ?」
「はあっ、はっ……Dioっ……。ねぇっ、早く……」
 しかしディエゴはわざと極浅い箇所ばかりを突いた。痺れを切らせたジョニィがなんとか自分から動こうとしても、すっと身を引いてそれを受け流してしまう。
「ひどいっ……。なん、で……っ」
 ジョニィの眼からは透明な液体が流れ続けている。
「口を休めるな。オレがイくまでにジャイロをイかせられなかったら、このまま貴様をそこの窓から外へ捨てるぞ」
 一瞬蒼褪めたジョニィの顔は、すぐに覚悟を決めた表情へと変化した。ジョニィは再び手を伸ばす。
「ジョニィ!」
 ジャイロの声はジョニィへは届いていない。彼はすでに両手と口を使うことに夢中のようだ。ジャイロのためにではなく、ディエゴを求めて。それでもジャイロのそれは形を変えてゆく。すでに先端からは白い液体がにじみ出ている。ジョニィの唇は、それを掬い上げる動きが段々追いつかなくなってきているようだ。
「やれば出来るじゃあないか!」
 笑い声を上げながら、ディエゴは律動を開始した。それはどんどん激しさを増してゆく。
「あ、あッ! すごいっ……、あ、はァ……ッ。そ、こっ……。おかしくなるっ……!!」
「おかしくなる? それこそおかしなことを言う。お前はもうとっくに狂っているよ」
 すでに把握しているジョニィの弱点を、ディエゴは集中的に攻め続けた。
「うあッ、ああ!!」
「狂っていないわけがない。正気な人間がこんなことをするか? お前の中がどうなっているか言ってみろよ、ほら」
「あっ、あっ! 入ってるッ! 中にっ……! ッ……はっ、はあっ、ねえッ、もう駄目! イくっ! イっちゃうよぉっ……」
「よく見ていろジャイロ・ツェペリ! 貴様が抱いているものは所詮だたの幻想だ!」
 最初に絶頂を迎えたのはジョニィだった。迸る声と共に白い熱がシーツと彼の肌に飛び散った。同時に、彼の内部は急速に狭まった。それを合図に、ディエゴは己の欲望をジョニィの中へと放った。
「うっ、ああああああああッ!! あつ……いぃッ!」
 ディエゴが自身を引き抜くと、支えを失ったジョニィの身体はがっくりと崩れ落ちた。白く汚れた身体が断続的に痙攣している。
「おやおや、間に合わなかったようだな?」
 恍惚に満ちたジョニィの顔が再びさっと血の気を失った。彼のすぐ眼の前で、ジャイロの屹立は以前変わりなくそこにある。ジャイロは両手で耳を塞ぎ、目蓋を閉ざしていた。歯を食い縛ってその衝動を耐え切れば、それでジョニィを汚さず、自身も汚れずにいられるとでも思っているのだろうか。
(無駄無駄無駄無駄!)
 怯えるような眼に不敵な笑みを向けながら、ディエゴはジョニィの胸倉を掴んで自分の方へ引き寄せた。
「もう1度チャンスをやろう。ルールはさっきと同じだ。ただし……」
 ディエゴはジョニィの身体をベッドへ戻した。今度は頭を自分の方へ向けて。
「今度は逆だ」
 泪が流れた跡の残る上気した頬を撫でると、ジョニィは頷いた。
 しかし、下半身を自由に動かせないジョニィは、自分1人ではジャイロの挿入を促すことは出来ない。ジャイロの全面的な協力が不可欠だ。
「ジャイロ……」
 ジョニィはジャイロの方へ振り返った。
「ねぇ、お願い」
「っ……ジョニィ……、オレ……は……っ」
 まだ理性を捨て切れないでいるのか、ジャイロは必死に視線を逸らせている。しかし彼の本能は音が聞こえそうなほどの脈を打っている。
「ジャイロ」
 甘い声に、ジャイロの眼が揺れる。一度視線を合わせてしまった後は、ただ欲望に呑まれるしか道は残っていなかった。あの濡れた上目遣いから逃れられる者は、そう多くはないだろう。ジョニィには男を欲情させる先天性の才能でもあるのではないだろうかと思えるほどだ。ジャイロも例に漏れることはなかった。それだけのことだ。
「ねぇジャイロ。ぼくの中に入れて……」
 ジャイロの口が小さく、繰り返し動き出した。耳を傾けると、それは謝罪の言葉であることが分かった。
 少々の間を要してから、ジャイロは膝立ちになり、先程のディエゴと同じ動きを始めた。一度ディエゴの体液で満たされたジョニィの身体は、おそらく容易くジャイロを受け入れるだろ。
「さあジョニィ、こちらも相手をしてもらおうか?」
 再び息を乱れさせながら、ジョニィはディエゴのそれを手に取った。そこに残る液体を、丁寧に舐め取ってゆく。その動きは次第に速度を増し、やがて彼はディエゴを口の奥まで導いた。
「一度下で銜え込んだものを今度は上の口で銜えるとはな。お前は本当にどうしようもない淫乱だよ」
 くつくつと笑いながら言うと、しかしジョニィは口を休めることはなかった。ディエゴはその頭を押え付け、彼の咽喉の奥まで自身を捻じ込んだ。
「んンンっ、んぐぅ……っ」
 ジョニィの声を聞きながら視線を上げると、一瞬だけジャイロ・ツェペリと眼が合った。そこにある屈辱の火は、すでに消え失せようとしている。
「衝動に呑まれることが怖いか? なぁに、恐れることはないんだよ。そのまま呑み込まれてしまうがいい」
(どこまでも……。そう、どこまでもだ。深く、永遠に堕ちてしまえばいい。オレも、お前達も!)
 ディエゴは2人に向かって微笑んだ。
「友達になろうじゃあないか。なぁ?」


2012,03,03


少し前に「前はジョニィを泣かせたいと思ってたけど今は泣かないで欲しいと思う」とか言ってたんですが、
ディエゴ×ジョニィならめっちゃ泣かせて鳴かせたいと思ってます。
もっとジョニィにあんあん言わせたい! 卑猥な言葉とか言わせたいよ!!
ディエゴにそそのかされてノリノリのジャイロはいかんだろうと思ったのですが、そしたらなんかヘタレに……。
<利鳴>

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