ジョナサン中心 全年齢 EoH


  未来への希望を引き連れて


「チッ。また来やがったか」
 最初に敵の接近に気付いてそう呟いたのは承太郎だった。一瞬遅れて、彼の仲間達もはっと顔を上げた。
「またあいつ等か」
「さっき追っ払ったばっかりだってのに」
「これも“あの男”の能力か……。全てが“あの男”が作った偽りの“真実”に到達する……。つまり、倒した敵も、いくらでも復活してくる」
「キリがないわね」
「かと言って、放っておくわけにもいかねーしなぁ」
 皆がそれぞれ溜め息を吐いた。その表情には、疲れが浮かんでいる。いつまで戦い続ければ良いのか……、いや、戦う術はあるのか、“あの男”と……。
「まるでレクイレムだ」
 吐き捨てるように言ったジョルノの肩に、定助が手を置いた。
「オレが行こう。オレが来たのは一番最後だったから、他の人達よりも元気なはずだ」
 「いいのか?」と視線を向ける者はいたが、反対する者はいなかった。誰も口には出さないが、少しずつ苛立ちが蓄積されてきている。定助のこの申し出は、正直に言うと有り難かった。
「よし、ぼくも行こう」
 今度はジョニィが言った。
「その理屈でいけば、ぼくだって条件はほぼ同じだ」
「でもあんたはこうなる前からずっと戦っていたんじゃあないのか?」
「大丈夫。少し休んだからもう回復した。それに、今むしゃくしゃした気分なんだ。ちょっと暴れてくる」
 ジョニィはにやっと笑うと、愛馬と定助に「行くぞ」と声をかけた。
「なんかあったら呼べよ!」
「OK!」
 定助の足音と、スローダンサーの蹄の音が遠ざかると、周囲は急に静かになった。聞こえるのは誰かの唇の間から発生する小さな乱気流の音だけだ。そこへひとつの声を投げかけたのは、ジョナサンだった。
「ちょっといいかな」
 彼の子孫達の眼が彼へと向く。それを確かめるように見廻してから、ジョナサンは口を開いた。
「さっきあの人……ヴァレンタイン……だっけ? 彼が言っていたことを、考えていたんだけど」
 そこで一度言葉を切り、ジョナサンは二人と一頭が駆けて行った方をちらりと見た。彼等が戻ってくる気配はまだない。ジョニィはヴァレンタインのことを酷く嫌っているようだったから――「むしゃくしゃしている」と言ったのも、きっとそれ由来だ――、おそらくこの場にいたら、また「あいつを信用するな」の話からしなければならなかっただろう。彼が邪魔だと言うのではないが、今を逃せば次のタイミングがいつくるか――あるいはこないのか――分からない。
「“あの男”は並行世界からやってきた。だから、この世界のディオの身体があれば、“あの男”を消滅させることが出来る。確か、そう言っていたね?」
 わずかな間の後に「ああ」と相槌を打ったのは承太郎だった。そこにある疲労の色はより一層濃い。
「だが、あの時にも言ったが、この世界のDIOはオレが倒しちまった後だ。死体も全て灰になった」
 ジョナサンは「うん」と頷いた。
「でも、ディオの首から下はぼくの身体を乗っ取ったものなんだろう?」
 息を呑む音がした。が、それは全員分にしては小さな音だった。おそらく、何人かはすでに“その可能性”に気付いていたのだろう。
「ぼくが“あの男”の身体に触れれば……、触れることが出来れば――」
「そんなッ、ジョースターさん!!」
 ジョナサンの言葉を遮り、スピードワゴンが声を上げる。
「あんた、自分が何を言っているのか分かってるんですかい!? そんなことをしたら、あんたまで消滅しちまうッ!」
「分かっているよ、スピードワゴン」
 ジョナサンはうろたえた様子を見せることなく、それどころか穏やかな笑みを浮かべていた。
「ぼくの両親はぼくを庇って死んだ。同じことをするだけだ。それに、これはぼくにしか出来ないことなんだ。そうだろ?」
「それならッ、オレ達の時代のディオを探してきた方が……ッ!」
「ディオが大人しく捕まってくれると思うかい?」
「そ、それはッ……」
 スピードワゴンが言葉を喉に詰まらせると、辺りは再び静けさで満ちた。それを打ち破ったのは、今度はジョセフだった。
「ったく、誰だよこのジジイにディオの身体がどーこーなんて教えたのは」
「ジジイは酷いな」
「じゃあ、お、じ、い、ちゃ、ん。これでいいかっ? あんた、どーやって“あいつ”に触るつもりだ? こっちの攻撃は全部効かなかったんだぜ? おじーちゃんも見てただろっ?」
 ジョセフが詰め寄ると、ジョナサンは微笑んだまま視線を動かした。その先には、承太郎がいる。
「何か考えがあるんだろう? 承太郎」
 たっぷり数秒の間の後に、彼は「やれやれ」と息を吐いた。
「やつは拳で殴るか触れるかして能力を発現させるタイプのスタンド使いだ。それはおそらく、間違いない。逆に言えば、やつの拳にさえ触れられなければ、やつと戦うことも出来る」
「なあんだ、それなら話はもっと簡単っスよ!」
 ジョナサンの前に、仗助が歩み出た。彼は自信に満ちた顔をしている。自慢の髪を手で撫で付け、整えながら、彼は続けた。
「それなら、“犠牲になる”のは両腕だけでいいってことだ。やつの隙をついて両腕をぶっ飛ばす。そしたらやつはもう能力を使うことは出来ない。あとは普通の攻撃でもなんとかなるはずだ」
「待てよ! あいつは吸血鬼なんだろッ。ぶっ飛んだ腕くらい、いくらでも再生しちまうぜ!」
「聞けって、マッチョジジイ! まだボケちゃあいないんだろっ」
「にゃにぃ!?」
「承太郎さんのスタープラチナなら、あいつの腕が再生するよりも早く追撃が出来る。なんたって、時間を止められるんだからな。それに、あんた波紋使いなんだろ! 腕のない吸血鬼くらい、さっさと片付けちまえよ!」
「テメー等! 結局はジョースターさんに犠牲になれって言うのかよッ!? 両腕をぶっ飛ばすって言ったって、それが出来るのはジョースターさんしかいないってことになっちまう! いや、本当に隙なんてつけるのか、そこから問題だぜッ!」
「違う! 犠牲になるのは腕“だけ”だ!」
 その声に応えるように、仗助の背後にスタンドのヴィジョンが出現した――もっとも、その場にいる数人には見えていないが――。
「オレのクレイジー・ダイヤモンドで問題なく“なおす”! 破壊が全身に到達する前に、腕を切り落としさえすればいい!」
「そうか、その手が……」
「オレのスタンドのこと、忘れてもらっちゃあ困りますよォ、承太郎さん。オレ等の時代の承太郎さんなら、すぐに思い付きそうですけど、年の功ってやつっスかね」
 承太郎がむっと口を噤むと、仗助は歯を見せてにっと笑った。
「ぼくからも、ひとつだけいいですか」
 それまで口数の少なかったジョルノが、すっと前へ出た。今亀の外に出ているメンバーの中では彼が最年少であるらしかったが、それを感じさせぬ堂々とした態度だ。彼の“生まれ”のことを思えば、それは不思議なことでもなんでもないのかも知れない。
「その“なおす”役目、ぼくに譲ってくれませんか」
「手柄でも欲しいか?」
「違います。ただ、“あの男”を倒すために彼が少なからず犠牲になると言うのであれば、……ぼくはその二人のどちらとも無関係ではない」
 ジョルノの身の上は他の者達と比べても少々複雑だ。ゆえに、他の者以上に、他人のフリをしていられないという気持ちが強いのだろう。身内の不始末は自分が……とまで思っているかは不明だが。
「でもよぉ、お前知ってる? お前の“治療”って、すっげーいてーのよ。厳密に言えば、“治す”能力じゃあないんだろ? オレのクレイジー・ダイヤモンドの方が安心だって」
「ああでも、痛みなら波紋で抑えることが出来るよ」
 自分の腕を切り離してふっ飛ばす話をしているというのに、ジョナサンはどうということはないと言うような顔をしている。それを見た何人かは、やれやれと肩を竦めながら笑っていた。
「……じゃあ、片腕ずつで」
「分かりました。譲歩しましょう」
「ありがとう、二人とも」
 ジョナサンが微笑むと、仗助は「任せるっス」と胸を叩いた。一方ジョルノは、ふいっと顔を背け、「礼なんて」と呟くように言った。父親に褒められて照れる子供のような仕草は、彼がこの事態に巻き込まれてから初めて見せた少年らしさだったかも知れない。
「じゃあ、あたし達は“あいつ”との戦いになったら、全力で攻撃するってことでいいのね? “あいつ”が能力を使った直後なら、“あいつ”に触れるチャンスがあるはず」
「と言っても、“あの男”のスタンドに触れられるわけにはいかねえ。接近戦じゃあ駄目だ。お前は下がってな」
 承太郎の声に、徐倫が「何よ、自分だって」と反論しようとしたところへ、ジョニィと定助が割り込んだ。どうやら、追っ手は――一時的に――退けたらしい。
「遠距離攻撃か。ぼくのタスクの出番だな。途中からだけど、話は聞こえてたよ。流れは分かってる。たぶん」
「たぶんン? おいおいおいおい〜、大丈夫なのかそれェ? オレのシャボン玉に任せた方が良くないかぁ?」
「そういう君は分かってるわけ?」
「そりゃあもうばっちり。きっと」
「うわあ、どっちも超不安……」
「で、お前は何が出来るって?」
 承太郎が徐倫に尋ねた。いつの間にか、彼も笑っている。
「そうねぇ、父さんが“あいつ”をしっかり弱らせてくれるっていう、な、ら、波紋とかいうのを流してとどめを刺すまでの間、“あいつ”を縛り付けておくことくらいは出来ると思うけど?」
 彼女も、倣うように口角を上げた。
「とどめはオレの波紋? 悪いねぇ、美味しいところもらっちゃって」
「ぼくも腕が治り次第手伝うよ」
「いや、そこは無理すんなよ」
「そういえばジョセフ、毒のリングは平気なのかい?」
「今その話するぅ? まだ何日かあるって。これが終わったらちゃんとなんとかするから」
 ジョセフとジョナサンの会話は今の彼等の年齢差を考えればありえないことなのだが、まさに孫と祖父の間のそれだった。その隣では、スピードワゴンがまだ心配そうな顔をしている。それでもジョナサンが「大丈夫」と言うと、彼も黙って頷いた。
「よしっ」
 ジョナサンは大きく息を吸った。
「行こう!」
 全員がそれに応え、力強く頷いた。


2016,04,19


別題:ぼくがかんがえたてんごくでぃおのたおしかた。
承太郎は大好きなのですが、ジョジョ=承太郎みたいな扱いには納得出来ません。
みんなジョジョだろう! 強いてひとり選ばなきゃいけないなら、初代か現行主人公をセンターにしてよ! と日頃から思っています。
それでもEoHはかなりちゃんと楽しんではおりますが、承太郎じゃあなくてジョナサ〜ン。が主人公ポジションだったら……と考えてみました。
そしたらむしろ皆に守られるヒロインのポジションみたいになった気がしますw
腕輪なんて拾ってこなくても、ジョナサンがいたらなんとかんるんじゃね? と思うんですよねー。
承太郎が時止める→ジョナサンの腕もいでDIOの腕にくっ付ける→DIOは腕が消滅して能力使えなくなる→腕再生前に全員でふるぼっこ。
これで勝てませんかね。もちろんジョナサンの腕は治療する。
でも本当は3部DIOはもう細胞全部入れ替わって物理的にはすでにジョナサンとは別の者になってるんだと思います。
だからジョナサンと天国DIOが接触してもなんでもないと思います本当は。
でも1部ディオと天国DIOなら消滅するんじゃあないかなと思ってる。
それとも100年も時代ずれてたら駄目なのかなぁ。
ってか大統領が並行世界から新たに3部DIO連れてくるっていうのは駄目だったんでしょうか。
まあ、大人しく接触して消えてくれるとは思えませんが。
あ、開幕ザ・ハンドで天国DIOの腕もいだら良くね? まあ、最終決戦の場に億泰いませんでしたが。
そんなことより人数増えるとそれに反比例するかのように地の文が減るのなんとかしたいです。
修行しなきゃ。もっと飢えなきゃ。
しまったこれジョナサンの誕生日にアップすればよかったー!!
<利鳴>

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