陣凍小説を時系列順に読む


  Darkness of Velvet


 早い時ではそれは1日と開けずに現れた。昼間にやって来る者、寝首をかこうとする者、正面から堂々とやって来る者、暗殺を目論む者と、実に様々だった。しかし彼等2人が今こうして無事でいると言うことは、訪ねてくる者の末路は皆同じであったと言うことである。
「また来たか」
 先にそう言ったのは凍矢だったが、陣も凍矢と同時にその存在には気が付いていた。それ――刺客は、その気配を少しも隠そうともせず、寧ろ剥き出しにした殺気を放ちながら一直線に向かってきた。直後に現れる2つの影。
「余程自信があるのか……それとも、只の間抜けか?」
「風使い陣と呪氷使い凍矢だな」
「一々用件を言わなくてもいい。ついでに返答を改めるつもりもない」
 きっぱりと言い放つと、2つの影は同時に動き出した。片方は大振りの刀を持ち、もう片方は小型のナイフを1度に複数投げ付けてきた。
「爆風障壁!」
「魔笛霰弾射!」
 ほぼ同時に放たれた2人の攻撃が重なり、辺りは瞬時にして氷の礫に覆われる。
 一瞬怯んだ敵の隙をついて、陣と凍矢は同時に地を蹴る。
 刀を持った方の男が、凍矢に斬りかかる。凍矢はそれをひらりとかわし、距離を保ちながら再び術を繰り出す。
 凍矢が接近戦を不得意とすることを敵は承知らしい。その為、刀の男が凍矢を集中的に攻撃し、結果的にもう1人の投げナイフの男が陣の相手をする形となった。が、これははっきり言って――少なくともこの時点では――敵の選択ミスとしか言いようがなかった。陣にとって、正面から飛んでくるだけの妖気も通っていないただのナイフを風を使って吹き飛ばすことくらい、妖力を消費するうちにも入らない程雑作もないことなのだ。そして凍矢も、確かに接近戦は得意ではないのは事実ではあるのだが、敵の動きは素早いとは言い難い。攻撃を回避し、距離をとり、反撃する一連の動作をするだけの余裕は充分過ぎる程にある。
「お前等では役者不足のようだな?」
 敵の背後に瞬時に移動し、凍矢は氷の剣を敵の首筋にぴたりと当てた。
「……そう……かな?」
 男が不敵ににやりと笑う。と同時に、草むらから新たな気配が出現する。
「もう1人!?」
 新たに現れた刺客は、妖力を鋭いナイフのような形に変え、それを飛ばしてきた。刀の男が巻き込まれる危険性があることは、どうでも良いようだ。それが魔忍の姿なのだ。
(最初の2人が気配を隠そうとしなかったのは――)
 3人目の存在を悟られぬようにするための、謂わば囮。
 凍矢は慌ててその場を離れた。しかしすぐさま自由を取り戻した刀の男が次の行動へ移る。大きく跳躍して回避した凍矢の着地地点に先回りし、体勢の悪い空中で攻撃を仕掛ける。
「凍矢ッ!!」
 陣が駆けつけようとする。が、目の前の敵がそれを許さない。
「貴様の相手はこちらだ!!」
「くっ……」
 凍矢はなんとか体勢を変え、回避しようとする。敵の刀は凍矢の左脇腹の辺りを掠めた。
「凍矢!!」
「なんでもない! 浅い!」
 「なんでもない」と宣言したものの、傷の具合を確認している暇はない。とりあえず致命傷ではない。それだけ分かれば今は充分だ。
 再び妖気のナイフが飛んでくる。それをかわしたところへ、刀の男が斬りかかる。 
「凍矢! 今そっちへ……」
「させるか!!」
 陣は敵の攻撃を風を纏って回避し、そのままの勢いで殴りかかった。直線的なその攻撃はいともあっさりかわされる。しかし、陣はすぐさま振り切った拳を引き戻した。今度はその腕に竜巻を作り出しながら。
「修羅旋風拳!!」
「ッ!?」
 敵は直撃だけは回避した。しかしそれでも体勢を崩すには充分だった。すかさず左腕にも竜巻を作り出す。
「ダブル修羅旋風拳!!」
 今度は確かに直撃した。敵は少し離れた地面に吹き飛ばされた。しかし陣はそれを見届けようともせず、凍矢の元へ駆け出した。敵の刀は既に振り下ろされている。
(体勢が悪い、避けきれない!!)
「凍矢!!」
 陣は地面を蹴った。
 そして――どうなったのか、凍矢は直ぐには理解できなかった。背中に強い衝撃を受けた。目の前に赤いものが広がる。気が付いたら地面に倒れていた。少し遅れて陣に突き飛ばされたのだと理解する。
「陣……?」
 地面に手をついて、身体を起こす。手も足も無理なく動いた。特に大きな傷はないようだ。左脇腹辺りにうっすらと血が滲んでいるが、それは先程かわし損ねた時の物のようだ。
 すぐ近くに陣が倒れていた。
「陣!?」
「っ……」
 助け起こすと僅かに呻き声を上げた。左胸の辺りが真っ赤に染まっている。
「敵の攻撃に自ら飛び込んでくるとは、愚かな」
 刀の男が嘲笑うかのように顔を歪める。
 凍矢が静かに立ち上がる。
「次は貴様の番だ!」
 男が刀を構える。駆け出そうとする。が、その足は何かに引きとめられたかのようにぴたりと動きを止める。
「……おい、どうしたっ?」
 もう1人の男が不審そうに声をかけ、駆け寄ろうとする。が、その足もすぐさま動きを止めてしまった。威圧されているとでも言うべきか。凄まじい妖気が辺りを支配している。身を切り裂くような冷気と共に。僅かに動くだけでも、生命力を削られそうな程だ。それが何者によって放たれているのかは、言うまでもない。そして魔界の忍びと雖も滅多に出会うことがない程の、鋭く冷たい目。
「く……、くそっ! 怯むな!!」
 刀の男は無理矢理とでも言うかのように、駆け出そうとした。しかしその足は氷で地面に繋ぎとめられた。凍矢が静かに手の平を男に向けながら、1歩ずつ前へ出る。その動きに応えるように、氷は徐々に足から身体へと上ってくる。
「水の凝固点は摂氏0度」
 恐ろしい程に静かで、抑揚のない声が響く。
「空気はマイナス210度で凍り始める」
 男は必死にもがこうとする。しかし体のどの部分も既に動こうとはしない。
「人間は体温が20度まで下がると心臓が停止するそうだ。妖怪とは言え……どこまで耐えられるかな?」
 男は悲鳴を上げたようだった。その声も最早音にはならない。
「超低温は全ての動きを止める。死の世界を作り出す。マイナス273.15度……絶対零度。試してみるか?」
「や……め……」
 凍矢はより一層鋭い視線を投げ付けた。同時に、男の身体は完全に凍り付いた。
「死ね」
 凍矢は軽く跳躍すると、氷に覆われた男の身体を蹴り砕いた。氷の破片が地面に転がる。
「な……、なんだ……これはっ……!?」
 背後で声がした。振り返るとそれは最初に現れた投げナイフの男だった。陣の攻撃を受けて僅かな時間意識を失っていたのが、今目を覚ましたところらしい。凍矢が視線を向けると、男は怯えたように小さくうめいた。
「う……、あ……」
 男は踵を返し、走り出そうとした。が、次の瞬間にはその姿を氷の彫刻へと変えていた。
「1匹逃がしたか……」
 いつの間にか、もう1人――3人目に現れた男の姿がなくなっている。他の2人がやられている間に逃げたらしい。追って行って捕え、仕留めることはできたかも知れない。しかし凍矢は放っておくことにした。あの怯えきった顔では、恐らく直ぐに反撃をしようとは思わないだろう。もしそうだとしても、一度魔界に戻って応援を連れてくるに違いない。
 周囲に敵がいなくなったことが分かると、凍矢は一気に全身の力が抜けていくのを感じた。足に力が入らなくなり、崩れるように地面に両手をつく。急激に妖力を消耗し過ぎた。いや、それだけでもなさそうだ。肩が震え出して止まらない。
「……陣……」
 蒼褪めた顔に閉ざされた目。それでも肩が僅かに上下していることから、まだその生命は確かにそこに存在しているのがわかった。しかしその傷は、お世辞にも浅いとは言い難かった。
「じ……ん……」
 思うように動けない。陣に向かってもどかしく手を伸ばす。しかし伸ばし返してくる手はない。
「陣……」
 半ば這うようにして、やっとの思いで陣の元へ辿り着く。上半身を抱え起こす。それでも呼びかけへの返事は聞こえない。
「陣っ……目を、開けろ」
 凍矢の手に、まだ乾かぬ温かい血液が触れる。
「陣……、陣、陣ッ」
 肩を強く掴んでも、陣は目を開けようとしない。
「駄目だ……陣、行くな」
(一緒に旅をしようと言ったのは、お前だ)
「1人で行くな」
(駄目だ)
「陣……行くな。行かないでくれ……」
(連れて行かないでくれ)
「画魔……」
(連れて行くな)
「陣…………」
 何度呼んでも、いつもの明るい声は返ってこない。
 道はある。辛うじてだが、まだ最悪の状況に追い込まれたわけではない。
 敵はきっとまたやって来る。陣が深手を負っているこの時を、みすみす逃す筈がない。
 どうすれば良いのか、凍矢はもう決めていた。
(簡単な事だ)
 次の刺客が来たら、こう言えば良い。陣に充分な手当てを施した上で、彼を自由にしてやってほしい。代わりに自分は魔忍へと戻り、陣の分までその務めを果たそう、と。実に簡単なことだ。陣は自分をかばって倒れた。今度は自分が陣のために犠牲になる。それだけのこと。問題は次の刺客が来るまでの間、陣の体力がもつかどうかだ。
「陣……」
 凍矢は縋り付くように陣に抱き付いた。
「陣ッ……」
「凍矢」
 不意に声が返ってくる。それは今1番聞きたい声ではなかった。が、次の敵が来たにしては早すぎる。一体誰が――
 振り返った先にいたのは、意外な人物だった。
「……蔵馬?」
「お久しぶりです。と、言いたい所ですが、呑気に挨拶なんてしている場合ではなさそうですね」
 蔵馬は駆け寄ってきた。
 そうか、蔵馬なら傷の手当てができる。そう思った瞬間、凍矢はもう喋り出していた。
「頼むっ、なんとかできないか!? 代わりに、オレにできることなら何でもするっ!!」
「とりあえず応急手当を。その後で移動した方がいいですね」
 そう言うと蔵馬は何かの草を取り出した。
「魔界の薬草です」
 慣れた手付きで手当てを始める。
「貴方も手当てを」
 蔵馬は手を差し出した。しかし凍矢は首を振った。
「贖罪のつもりですか?」
 蔵馬は大体の事態を察しているようだ。
「これはオレの血じゃあない」
 陣を抱え起こした時に付いたのであろう、服の胸の辺りが赤黒く染まっている。
「それでも怪我をしているでしょう?」
「対した傷じゃあない。もう塞がりかけている」
 「それよりも」と凍矢は続ける。
「どうして蔵馬がここに?」
「ええ、ちょっと貴方達を探していたんです」
「オレ達を?」
「こんなところで話すのもなんですから、移動しましょう」
 蔵馬は陣を抱え起こした。凍矢も手を貸してやりたいところだったが、自分自身の身体を真っ直ぐ立たせているだけで精一杯だった。蔵馬はそれを見通しているかのように小さく微笑み、ゆっくりと先を歩き出した。
「あ、それは放っておいてもいいんですか?」
 蔵馬は顎で氷漬けの妖怪を指した。1人はその氷毎砕いてしまったが、もう1人は恐怖の表情を顔面に貼り付けたまま凍り付いている。
「いい。日が昇れば勝手に融けるだろう」
「融けたらまた動き出すかも知れませんよ? 超高速の超低温で冷凍された魚が解凍したら生きてたなんて話を聞きますよ」
「構わない。また追って来たらその時に始末する」
「分かりました」
 蔵馬はどんどん進んで行く。
「移動手段は?」
 凍矢が尋ねる。これまでは陣の力で飛んで移動していた。ここは小さな無人島。船の類はないはずだ。いや、蔵馬がここにいるのだから、なにかはあるのかも知れない。
「ええ。オレも飛行の手段は持ってないこともないんですが、今回は幽助から霊界獣を借りてきてます。もっとも、幽助は今魔界にいるから、無断拝借のようなものだけどね」
「幽助が魔界に?」
「その辺のことも含めて、順番に話しますよ。それに、協力もしてほしい」
「協力?」
 やがて大きな生き物の影が見えてきた。
「あれがあの霊界獣?」
 以前、首括島で見た「プー」とか呼ばれていた霊界獣はぬいぐるみのような姿だったはずだ。
「成長したんです。さ、乗って」
 陣を1番前に乗せてから2人も乗ると、霊界獣は「プー」と一声鳴いて、羽ばたき出した。
「それにしても」
 と蔵馬が言う。
「?」
「行き成り『何でもするから』だなんて」
 凍矢からは前に座っている蔵馬の顔は見えないが、どうやら笑っているらしい。
「もしもオレがとんでもない要求突きつけたらどうするつもりなんですか?」
「とんでもない?」
 凍矢は首を傾げた。
「まあ、それは冗談ですけど。手当ての代わりに……と言うわけではないんですが……」
 蔵馬は、暗黒武術会の後にあった戦いのこと、魔界への穴が開かれたこと、幽助が魔族の血を引いていたこと、そして、これから始まるであろう新しい戦いのことを話した。
「このままでは魔界のバランスは壊れてしまう。それを食い止めるために、力を貸して欲しい。貴方達2人の」
「分かった」
「やけにあっさりですね。分かってます? 魔界へ戻らなきゃあいけないんですよ? 貴方達は魔界が嫌で人間界に来たんでしょう?」
「そうやってずばり逃げ出してきたみたいに言われるのは図星なだけに耳が痛いが……。魔界に『行く』のと、魔忍に『戻る』のとは違う。それに言っただろう? なんでもする、と」
「陣の目が覚めてから2人で相談して決めてもいいんですよ?」
「陣なら、たぶん平気だろう。陣は……、オレよりも強いから…………」
 蔵馬は満足そうに頷いた。
「今は幻海師範の道場へ向かっています。そこなら陣を休ませる事もできるし、修行もそこで。もう他の4人は来てます」
「4人?」
「行けば分かりますよ。着いたら、貴方の手当てもちゃんとしましょうね」

「気が付いたか?」
 その声で目が覚めたのか、それともその前にもう気が付いてきたのか……。陣が目を開けると、心配そうな凍矢の顔が目の前にあった。
「う……ん……? とう……や?」
 起き上がろうとすると胸部に鋭い痛みが走った。一瞬顔を歪めるが、凍矢に肩を支えてもらいながら何とか起き上がる。
「まだ痛むか?」
「ん、あ、でも、結構平気っぽいだ。動けない程じゃあ……あっ、そんなことよりも凍矢はどこも怪我してな……」
 陣の言葉は途中で止まる。突然凍矢が抱き付いてきたのだ。
「と、凍矢っ?」
「……どうして庇った?」
「え?」
「オレはそんなに信用できないか? お前に庇ってもらわなければならない程弱いか?」
「凍矢……?」
 陣からは凍矢の顔は見えない。それでも声が若干震えているのは分かった。
「誰かを……お前を盾にしなければ生き残れないなら、オレは……そんなことをしてまで生き延びたくはない……っ」
「凍矢……違う。オレ、ただ……」
「お前が勝手にオレを助けるのは、これで4度目だ!」
「よん……っ? え? ちょっと待って……身に覚えがないだ。それ、水増ししてねーだか?」
「口答えをするな!」
 肩に回された腕にぎゅっと力が篭る。
「もう……二度とするな」
「…………わかっただ。ごめん」
 すると突然凍矢はぶんぶんと首を振った。
「違う。そうじゃない。陣が悪いんじゃないんだ。そうじゃなくて……」
 本当はそんなことを言いたかったのではない。でも、代わりの言葉が出てこない。
「凍矢、ごめん」
「謝って欲しいんじゃないっ。オレはっ……」
(もし、お前が居なくなったら……)
 そう考えることが、どれだけ恐ろしかっただろう。
「凍矢。オレな、もし凍矢が大丈夫だって言っても、凍矢が傷付くのなんて見たくないだ。そう思ったら、勝手に身体が動いてて、敵の攻撃に突っ込んでってただ」
 陣は凍矢の細い肩に腕を回し、抱きしめ返した。
「でも、結局凍矢に心配かけちまっただな。ごめんな」
「……陣が怪我をしたのは、オレの所為だろう……。……すまない」
「ごめん」
「すまない」
「ありがとう」
「……ありがとう」
「……で、そろそろ邪魔してもいいですか?」
「ッ!?」
 突然の蔵馬の声に、陣と凍矢は慌てて離れた。
「くっ、くっ、蔵馬っ!?」
「いっ、いつからそこにっ!?」
「そうですね、しいて言うなら『最初から』……と言ったところでしょうか」
「なっ……お、お前なぁ……」
「ほら、陣。傷を見せて下さい。続きはそのあとでごゆっくりどうぞ」
「つ、続きって、お前……ッ」
「あれぇ、何で蔵馬がいるだ? ってゆーかここどこだ?」
 陣は辺りを見回した。どうやら畳張りの部屋に敷かれた蒲団に寝かされていたようだ。わかったのはそれだけで、ここがどこなのか検討も付かない。
「詳しくはあとから凍矢に聞いて下さい。ここは幻海師範の道場で、暫くここで修行してもらいたいんです。貴方達6人でね」
「へ?」
 すると、蔵馬の言葉を待っていたかのように戸が開いて、人影が現れた。
「あっ」
 それは、暗黒武術会では六遊怪チームだった酎と鈴駒、その後ろに裏御伽チームの自称「美しい魔闘家」鈴木と死々若丸だった。
「陣っ、目ぇ覚めたんだねっ? もぉ、オイラ心配しちゃったよぉ」
「そうそう。陣は血だらけで動かないし、凍矢は真っ青になってオロオロしてるしなぁー」
「ッ……おいっ!」
「だぁれが霊界獣から陣を降ろして運んでやったと思ってんだ!? このオレ様だぞっ!」
「陣よりもでっかいのなんて酎しかいないんだからそのくらいやってとーぜんだろー。陣、こいつには感謝しなくてもいーよ」
「なんだとぉっ!?」
「感謝するなら手当てしてくれた蔵馬と凍矢に、ね。凍矢ってば自分だって怪我してるし妖力も殆ど使い果たしてるのに丸一日寝ないでずっとつきっきりで」
「余計なことは言わなくていいッ」
「え? オレそんなに寝てただか?」
「あと半日経っても目を覚まさなかったらオレの作りかけの、試作品の、実験段階のアイテムを試してやろうと思ってたのに」
「うげっ……」
「あと半日で危うく永眠するところだったな」
「何ぃ!? 言っておくがなっ、お前が持ってる魔哭鳴斬剣だって試作段階なんだぞっ」
「威張ってないでさっさと完成させろ!!」
「ああっ、もうっ、少し静かにして下さいッ! ……傷は大分塞がりましたね。無理しなければもう大丈夫でしょう」
「良かったねー、陣っ」
「快気祝いだー。酒持ってこーい!」
「やめろって! この間だって『再会を祝してー』とか言って立てなくなるまで飲んでたじゃん!! 第一まだ全快じゃあないし!」
「静かにして下さいってば! なんですかこの学級崩壊したクラスみたいなのはっ。あ、修行は明日から思いっ切りきついの始めますからねっ。凍矢も今の内に少し休んでおいた方がいいですよ」
 突然のあまりの賑やかさに、凍矢はやれやれと溜め息をついた。
 不意に陣がくるりと凍矢の方を振り向く。
「凍矢っ」
「うん? どうかしたか?」
「ありがとなっ」
 満面の笑みを浮かべながら。
「ああ、さっきも聞いたしさっきも言ったが……、ありがとう」
 微笑み返す。
 本当は目を覚ましたらもっと色々と言ってやろうと思っていたのに。
(なんか、どうでも良くなったな……)
 陣の笑顔には、そう言う力があるのかも知れない。そんなことを思いながら、凍矢は壁にもたれ掛かって溜め息を吐いた。


2007,05,26


蔵馬出てきてから台詞多すぎ。後半台詞ばっかりじゃん!
どうもわたしの書くものは、後半文章考えるの面倒臭くなってきて台詞ばっかりになっちゃう気がします。
敵に名前がないのでどれがどれだか自分でもよくわかんなくなった気がした。
Wordに貼り付けすると、蔵馬と陣の台詞に文章校正の波線が多いです(笑)。
っつーか蔵馬何キャラだ。
穴があったら入りたいわ……。
<利鳴>
あぁーセツもアクション物書きたいぃ!(前半気に入り過ぎで煩いですよ)
確かに陣の台詞なんかは特に緑とか赤とか下に見えてきそうな…(笑)
蔵馬は色んな意味で良い奴だと思いました。
ある意味主役より主役。そして主役作品より主役(笑)
そんなワケでインスパイアされて戦闘描写を書きたくて仕方無くなる1品でした。はぁはぁ。
<雪架>

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