陣凍小説を時系列順に読む


オリジナルのキャラクターが出てきます。
他にも捏造設定満載です。
苦手な方は閲覧をご遠慮ください。


  サヨナラからはじめた未来


 私は廊下を歩きながら、「今日は風が強いようだ」と心の中で呟いた。真っ直ぐ伸びる通路の両側には、一定の間隔でドアが並び、外の景色を伺える窓はない。それでも絶えることなく轟々と吹き荒れる風の音が聞こえている。それから、悲鳴のように聞こえるのは隙間風か。この塔が建設されたのも最近のことではなく、すでに短くない期間が過ぎていると聞くから、どこか傷んでいる箇所があったとしてもおかしくはない。修繕の必要があるようなものなのか、後で確認させなければ。「寒い」と文句を言うような者は、誰ひとりとしてここにはいやしないことは明白だが、それでも。
 辿り着いた突き当たりのドアを軽く叩いた。小さな音は外を吹く風の音にかき消されてしまうだろうかと一瞬思ったが、ノックをやりなおすよりも――あるいは在室を確認するための声をかけるよりも――早く、穏やかな、それでいて明瞭な返事が私の許へ届いた。いつもの彼の声だ。
「失礼します」
 私が入室すると、彼はすでに机に向かって、手には書類の束を持っていた。この時間に彼がまだ仕事を始めていないということは、私がここへ配属されてからは一度も目撃したことがない。なんて勤勉なヒトなのだろう。改めて素晴らしいヒトだと心から思う。
「おはようございます。凍矢様」
 私は深々と頭を下げながら、一定周期で廻ってくる業務報告の任の度に口にする挨拶の言葉を述べる。彼は「おはよう」と返しながらも、わずかに表情を歪めたように、それでも微笑む。このやり取りも、毎回のように繰り返しているものだ。彼は、私が彼のことを『凍矢様』と呼ぶのを喜ばしく思っていないらしい。「そんなに謙るな」、「自分に対して丁寧な言葉を使う必要もない」と言われたことは幾度もあった。自分はただの雇われ中間管理職に過ぎず、お前が従うべき存在は他にいる、と。しかし、偏狭と呼ぶよりも、いっそのこと僻地と称してしまっても良いような雪に覆われたこの土地に生まれ育ち、他所へ出たこと等数えるほどにしかない私のような者が、魔界全体を統治している王とも呼ぶべき存在に直接会う機会は皆無に等しい。直接と言わずとも、姿を見たことも声を聞いたことも極わずかしかない主なんかよりも、氷を操る者の中で最も位の高い今眼の前にいる彼の方が、よほど尊敬に値する。そう答えると、彼はまた眉を顰めたような笑みを浮かべるのだが。彼の許で働けることが、我々――雪や氷に属する妖怪達――にとってどれだけ光栄なことか、彼自身には――全く不思議なことに――理解出来ないらしい。軽々しく呼び捨てになんてすれば、氷の化身に等しきこの私の肉体は、忽ち融解してしまうだろう。あるいは瞬時に四散する。それほどまでに恐れ多いことなのだ。と、同僚に熱弁したら、「お前は少し大袈裟すぎる」と若干引かれた。何故だ。彼の偉大さに真に気付けている者は私以外にはいないということか。全く、嘆かわしいことこの上ない。
「報告をさせていただきにまいりました」
「ああ、頼む」
 彼が管理する土地の中で起こった出来事をまとめ、報告するのが私――当番制なので他にも同じ役目を持った者は数人いるが――の仕事のひとつだ。自作の資料を彼に手渡し、自分用の複写を1枚ずつ捲っていきながら内容を簡潔に伝えてゆく。彼に無駄な時間を取らせるわけにはいかないために、のんびりしていることは許されないが、それでもこの任務に当たっている時間は、彼と直接一対一で対面出来る多くはない機会だ。それを至福と呼ぶことに、私はなんの躊躇いも感じはしない――この主張も件の同僚に怪訝な眼で見られた――。
「まず、先日の会合の件ですが、日時を変更したいと先方からの連絡がありました」
「またか。会合の申し出はあちらからあったはずだと思ったが」
「仰る通りです」
「会いたくないのなら無理を強いるつもりはないのにな」
「なんでも、急務だとか」
「都会の管理者は多忙らしいな。分かった。改めて先方の都合を聞いておいてくれ」
 「かしこまりました」と頭を下げて、資料の次の頁を捲る。
「次の報告ですが……、近々分裂期に入る見込みである氷女が数名いるとの届出がありました。後ほど登録書が廻されてくると思います」
「分かった。要請があれば警備を増やすように」
「はい」
「他には?」
「“隣”から、領土内の雪が“あちら”にはみ出ているとの苦情が……」
「オレ達が降らせているわけではないのだがな」
「全くです。そんなに雪が嫌なら、そのはみ出ている土地とやらを手放して、“こちら”に明け渡せば良いのです。そうすれば“あちら”の土地には間違いなく雪はないのにっ」
 思わず腹立たしげな口調が自分から飛び出てきて、私は慌てて――遅いと知りつつ――口を噤んだ。彼はそれを咎めることなく、愉快そうに表情を緩ませた。今日の彼は、いつになく機嫌が良さそうだ。日頃から怒りを露にしている姿なんてものは一度たりとも見たことはないが。今日は、何か良いことでもあったのだろうか。あるいはこれからあるのか。
 不意に彼は立ち上がり、空気の入れ替えでもするつもりなのか、背後にある窓を開けた。強い風が吹き込んでくるのではと書類を飛ばしてしまわぬよう身構えたが、どうやら風向きが違うらしい。室内の空気がいくらか動いただけだった。
「他には何かあるか?」
 窓を開けたまま、彼は机の傍に戻ってきた。が、椅子に腰を降ろすことなく、立ったまま私が作った書類に眼を向けている。
「あとは予算案の件ですね。時間の都合が付くなら、今日の午後にでも打ち合わせをと……」
「他は?」
「今日の分は以上です」
 彼は「分かった」と頷くと、書類を机の上に置き、その上に分厚い本を乗せた。重石のように。何故……?
「すまないが」
「はい」
 私は顔を上げた。
「お偉方に渡しておいてもらいたい物があるんだ。頼まれてくれるか?」
「ええ、それはもちろん。責任を持ってお預かりいたします」
 私がそう応えると、彼は満足そうに頷いた。かと思うと、机の引き出しから取り出した白い紙に、傍にあったペンでささっと走り書きをした。そしてそれを、こちらへ向かって差し出した。
「これを」
「こ、これを……?」
 たった数秒で書いたものを、上層部に? 封筒に入れるどころか、折り畳むことすらしないということは、私が見てしまっても差し支えないということか。一体何を……。
 手を伸ばしてそれを受け取ろうとした時、彼の長い前髪がふわりと靡いたのが見えた。でもさっきは確か風向きが……。そう思った直後に、強風が吹き込んできた。
「うわっ……!?」
 室内に置かれていたあらゆる物が煽られ、バサバサと音を立てた。重量のない本が飛ぶ。その風の強さに、眼を開けていられない。何かが倒れる音がした。咄嗟に防御の体勢を取りながらも、たった今受け取った書類――というか紙――は守り切った私は、部下の鑑であると同僚達から称えられても良いと思う。
 風はやむどころか強くなっている。それでも何とか片眼を開けると、なんと凍矢様の姿が消えていた。
「なっ……、と、凍矢様ッ!?」
 窓が開いている。室内を舞う様々な物達。私の手には彼から渡された1枚の紙。そこに書かれた文字が眼に入ってきた。いつもの彼ならありえない、まるで子供が書いたかのような――だが私は間違いなく彼自身がそれを書いたところを見ている――乱雑な字。それが、ようやく意味のある言葉として認識出来た。
『旅に出ます。探さないでください。凍矢』
「凍矢様ッ!?」
 慌てて窓に駆け寄り、身を乗り出して外を見た。馬鹿な、ここは地上数百メートルの塔の最上階だぞ。
 何か、生き物の影が見えた。飛んでいる。鳥? いや、ヒトの形をしている。赤い髪が見える。男だ。腕に何か抱えている。あれは……。
「凍矢様!?」
 私の声と重なって、部屋のドアが開けられる音がした。続いて聞き覚えのある声。
「凍矢様、何か騒がしいようですが……、こ、これはッ!?」
 そこにいたのは私と同じ――ただし私の方が数年後輩である――凍矢様の部下の男で、荒れた室内の様子に驚いた顔で立ち尽くしていた。
「先輩、大変です! 凍矢様が!!」
 外を指差すと、先輩はやっと駆け寄ってきた。
「あの男が!」
「! あれは……」
 風の音が煩い。そうでなかったとしても声が届くかどうか危うい距離のところで、その男は滞空していた。腕に凍矢様を抱えたまま。
「おいこらくっ付きすぎだろうッ!!」
 私が声を張り上げると、男の口が動くのが見えた。やはり声は聞こえない。だがその動きは……。
「『いってきまーす』じゃあないッ!! 今すぐ凍矢様を返せッ!!」
 しかし、あろうことか凍矢様は、こちらに向かって軽く手を振った。少し申し訳なさそうな笑顔で。口が動く。『行ってくる』。
「そんな……」
 凍矢様を抱えた男は、あっと言う間にどこかへ飛んで行ってしまった。その姿はすでに見えない。
「あーあ、また逃げられたか……」
 隣で先輩が溜め息混じりに言った。その暢気な調子に、私は苛立った。
「誰なんスかあの男はッ! よりによってオレの眼の前から凍矢様を掻っ攫っていくなんてッ!! 許せない! 末代まで祟らずにはいられない!!」
「おい、地が出てるぞ、少し落ち着け。凍矢様はご自分の意思で出て行かれたのではないのか? お前何を持っている? 書き置き? ……ああ、やっぱり」
 先輩は再度やれやれと息を吐きながら開け放たれたままの窓を閉めた。煩かった風の音がいくらか納まる。
「お前は配属からまだ日が浅いから知らんか。あの男は、凍矢様の旧友らしい」
「きゅ、旧友?」
「幼少期からの仲だと聞いている」
「そ、そんな、うらやま……い、いや、何故、その男が、こんな突然……」
「凍矢様は普段は至って真面目だが、時々こうして飛び出して行ってしまうのだ。そんな時には、決まってあの男が現れる」
「し、しかし、この書き置きには『旅に出る』と……」
「それは凍矢様の遊びだ。完全に職務を放り出してしまうほど無責任なヒトではない。前にも似たような手紙が残されていたことがあったが、その時も3日ほどで戻ってこられた。しかもその間の仕事は、前以てほとんど片付いた状態だった。文面は確か、『普通の妖怪に戻ります』だったな」
「と、凍矢様にそんな茶目っ気が……」
「お前、なんでちょっと嬉しそうなんだ……。あの赤毛男の影響なのかも知れんな」
「何者なんです、あの男は」
「詳しくは知らないが、オレ達は『赤いつむじ風』と呼んでいる。噂では調査団の副長だとか……」
「と言うと、実力だけなら組織内において右に出る者はいないが、いかんせんアホだから団長の座を与えられていないという、あの?」
「それもただの噂でしかないが……」
 先輩はちらりと凍矢様の書き置きに眼をやった。
「案外事実かも知れん」
「凍矢様をアホと同類のように言うな!!」
「お前、後輩のクセに態度がでかいな。とにかく、2、3日もすれば何事もなかったかのようにお戻りになるはずだ。オレ達の役目は、その間何も問題を起こさずにいること」
「もう充分大問題だと思います……。何も対策を打たなくて良いのですか。せめて、凍矢様の執務室を地下に移すとか……」
「馬鹿言え。地面毎抉り取られるぞ」
「そ、そんなに強いのですか、あの男は」
「それも噂だ」
 いつの間にか風の音は遠くなっていた。窓の外に眼を向けても、ただ暗い空が広がってる他には何も見えなかった。
「凍矢様……」
 彼は笑っていた。部下達を労ってくださる時の微笑みとは違う、少し幼いとでも言いたくなるような笑顔。彼があんな顔をするなんて……。
「貴重なものを見てしまったぁ!!」
「お前何喜んでんの」

 数年に一度と定められた魔界統一トーナメントは、順調にその開催数を増やしていっていた。大会が開かれる度に、統治者は変わり、あるいは戻り、それを繰り返し、魔界は今やひとつの大きな国となっている。広大過ぎる土地は地図の上でいくつかの地域に区分され、それぞれに管理者が置かれることとなった。その内のひとつ、氷河の国を始めとする、季節を問わず雪に覆われた地域を管理するのに、氷の属性を持つ妖怪の中ではトップクラスの力を有する呪氷使い凍矢を置いて、他に適任者があろうはずがない。魔界からやってきた“管理局”の者は、にこやかな――しかし拒否することを許さないような――表情で、そんな言葉を並べ立てた。
「土地の管理等、オレに出来るものか。そういった役割は、もっと政治の心得がある者にやらせるべきではないのか」
 不機嫌な様子を隠そうともせずに言う凍矢に、老人の姿をした妖怪は、そんな反応は予想済みだとでも言うように、笑顔を歪めもしなかった。
「ご謙遜を。貴方様は大層ご聡明な方だと伺っておりますよ」
「誰がそんなデタラメを」
「ご心配せずとも、きちんと補佐の者は付けさせていただきますとも。代行者を立て実のところは丸投げ。なんて者も、大きな声では言えませぬが、すでにその職務に就いている方の中にはいらっしゃるくらいでして」
「なら、始めからそいつにやらせればいい」
「他ならぬ呪氷使い様がトップに立つともなれば、その地に住まう者からの異論が飛び交うこともありますまい」
 ではオレはただの飾りのマスコットかと揶揄するのに、老人は臆面もなく「流石察しが良い」と返してきた。凍矢の口からは最早溜め息しか出てこない。が、そんな話を引き受ける気には全くなれなかった。
「悪いが、他を当たってくれ。名前が必要なら適当に『呪氷使い推薦』とでも銘打ってくれて構わない」
 しかし相手もそんな返答では納得してくれないらしい。踵を返そうとする凍矢に、あれやこれやと声を掛け続ける。
「もしや……」
 老人はぴくりと眉を動かした。
「あの風使いのことを気にかけていらっしゃるのでは?」
 凍矢の肩はぎくりと強張った。それは、ほんの一瞬のことにすぎなかったが、その一瞬を、老人は見逃してはくれなかったようだ。皺の向こうに半ば隠れた眼が、何か見付けたようにきらりと光ったのは気の所為ではあるまい。
「確かに、耐性を持たぬ者が永久凍土のあの地に住まうことは容易ではないでしょうなぁ。それどころか、長く留まればそれだけで寿命を削ることになりましょう。同行させるのは無謀かと……」
「分かっている!」
 凍矢は、思いがけず声を荒らげていた。そのことに自分で驚いた。違う。そこはそうではない。「そんなことを考えていたのではない」と、否定するのが正解だった。それなのに……。
 土地を治めるなんてことに興味がないのは事実だ。だが、その役目が誰にでも果たせるものではないということは理解出来る。彼が断れば、おそらく一定数の者が困るのだろうということも。雪解けを知らぬその土地は、立ち入る者を容赦なく選別する。氷の耐性を持たぬ者には間違いなく不可能だ。だが、いや、だからこそ……。
 名ばかりの飾りをさせるのかとの問いに、魔界からの使いはあっさりとあんな軽口をきいてみせたが、まさか本当に凍矢の名前だけを期待しているということはないだろう。彼なら、何らかのトラブルが生じた際にそれを解決するだけの知力が、そして必要に応じて力尽くで抑えることの出来る強さがあると判断してのことに違いない。つまり、評価されている。それは決して嬉しくないことではない。
 だが、魔忍としての己を捨てて以来、凍矢の隣にはいつも陣の姿があった。凍矢にとって陣の存在とは、そこにいるのが極自然であり、自身の半身のようですらあり、なおかつ、彼が支えてくれていなかったら自分はここにいることすら叶わなかっただろうと思えるほどに大きな役割を果たしている。
 もし凍矢が魔界からの要請を呑んだら、陣はどうなる……?
 土地の管理を任されるとなれば、当然その地に住まいを設ける必要があるだろう。そこへ陣が同行することは可能か……? 人間界の冬を越すのとはわけが――むしろ次元が――違う。陣がその低すぎる気温に堪えることは出来ない。辛うじて寒さの和らぐ極短い夏の期間に限っての滞在ならともかく、これまでのように寝食を共にすることは不可能だ。
 陣と離れる。そんなことは彼と共に行動するようになって以降、考えてみたこともなかった。陣は何と言うだろうか。おそらく嫌だと言うだろう。それとも「せめて近くに」とでも言って、隣の地域にでも住み着くだろうか。それから? それでどうする? そんな場所に留まって、陣はこれから何をして生きていく? 凍矢が近くにいるからというだけの理由で、その場に留まり、ただ無為に長い時を過ごす。それが陣の望みか?
(駄目だ。それではオレが陣の自由を奪っているようなものではないか)
 そんなことは、出来ない。
「適材適所……という言葉がありますな。もちろんご存知かとは思いますが」
 魔界からの使いは凍矢の胸中を読み取ったかのような口調で言った。
「あの者にはあの者に相応しい場所と役割があるはず……。もちろん、貴方様にも」
「オレにも……」
「今日のところは引き上げさせていただきます。お返事はまた改めて頂戴しに参ります故に……」
 深々と頭を下げて、使いの者は姿を消した。が、数日もしない内に「お考えはお決まりになりましたか?」と催促をしに現れた。陣が傍にいない時にばかりやってくるのは偶然なのか、それとも配慮してくれているのか……――それはそれで借りを作ったような気がして溜め息が出た――。
 陣には何も話していなかった。受けるつもりのない話だ、聞かせる意味もない。そう思う一方で、別の声が凍矢の頭の中で響いている。「では今の生活を続けることは、真に陣が望むことなのか」と。そして、彼自身は……。
 今の彼等は、何の役割も持っていない。何にも縛られていない。どこかに行きたいと思い立てば、すぐにそれを実行に移してしまえる。だが、それだけで良いのだろうか。
 以前は追っ手から逃れるだけで精一杯だった。過去から離れる、それだけのために生きていた。だが、魔忍が解散となった今、彼等は“次”へ進むことを考える必要があるのではないか。それはすなわち、“未来”だ。手を伸ばして掴むべき未来とは……。かつて戦った相手に問われた言葉を思い出す。「表の世界で、何をするのか」……。その時はただ「分からない」と答えた。いつまであの時のままでいる? 彼が頭を悩ませるべき問題は、すでに違う内容のそれになっていた。
 そんなことを考えている内に、数ヶ月が経っていた。一見何事もないかのように、外見上はそれまで通りの生活を繰り返し、いつも通りに仕事を与えられれば、それをこなした。その日も凍矢はひとりで魔界へと脚を運んでいた。いつものように同行を申し出た陣に「難しい仕事じゃない。すぐに終らせて帰るから」と告げ、実際、やるべきことはすぐに――簡単すぎるくらい簡単に――済んだ。が、その後で管理局の連中――どうやら凍矢の“説得”担当の者は少なくとも3人以上であるらしい――に捕まり、すでに何度も聞かされた話をまた聞かされた。おそらく彼を魔界に呼び出したのも、わざわざ人間界から召喚せずとも近くで暇を持て余していそうな誰かにやらせれば良いような内容の仕事のためなんかではなく、そちらが本命だったのだろうと後で気付いた。こうもしつこく付き纏われては、落ち着いて考えをまとめることすら出来ない。適当な口実をいくつも並べてようやくの思いで解放され――最も、連中はそれがその場限りのデタラメの口実であることをおそらく見抜いていただろうが――、人間界にある住居へと戻ってきた時、言い争うような声が聞こえてきた。
「おめーらしつけーっつってんべ!」
 それは紛れもなく陣の声だ。誰か来ているようではあるが、相手の声はあまり聞き取れない。陣のそれがでかすぎて。
「なんべん来ても変わんねーだ! これ以上しつけーようならぶっ飛ばすぞ!」
 ずいぶんと荒れているようだ。戦いの場にいる時以外は無邪気な子供のような振る舞いを見せる陣にしては、少々珍しい。が、最後の一言が、
「明後日来やがれ!」
 だったのは、ある意味彼らしい。
 そそくさと立ち去っていったのは魔界からの公的な使いであることを示すマークが入ったマントを着た男だった。凍矢は、また管理局の者が催促をしに来たのかと眉間に皺を寄せたが、自分はつい先程まで魔界にいた。催促したい連中がそれを知らぬとは考え難い。実際に、あちらですでに見慣れ――てしまっ――た顔に、嫌と言うほど時間を潰されてきたばかりなのだから。
 マントの男と入れ違うように、凍矢は陣の傍によっていった。
「それを言うなら『一昨日来やがれ』だ。本当に2日後にまた来たらどうするんだ? 招いた以上はもてなさないわけにはいかないんじゃないか?」
「あ、凍矢。おかえり」
「ただいま。今のは……、魔界からの使いではなかったか?」
 陣の口から説得させればあるいはと考えた管理局の連中が、自分の留守を狙って聞かせるつもりのなかったこと全てを彼に話してしまっていたらどうしようかと思いつつ、凍矢は尋ねた。それは、痛むと分かっていて傷口に触れる行為に似ていた。
「なにかあったか?」
 半ばおびえるような気持ちで言うと、それに陣が気付いた様子はなく、しかし彼もまた、視線を逸らしながら躊躇いがちな頷きを返してきた。
「うん……」
 短い沈黙があった。
「……凍矢、調査団て、知ってっか?」
「調査団?」
 聞いたことがある。国から認められた実力者のみで構成された、魔界中を調べて廻ることを主な活動内容とする組織のことだ。彼等の活躍によって地図の空白は埋められ、未開の地は拓かれ、極端に危険な動植物は駆除、あるいは管理される。一般の者が立ち入ることを許されていない場所でも力を使うことが認められているとも聞く。調査団が今日の魔界を成り立たせていると言っても過言ではない。幼い妖怪達を対象とした『将来なりたい職業』のアンケートで、3年連続断トツ1位を獲得するほどの人気を誇る存在らしい。人間界に住んでいる陣や凍矢にはあまり馴染みはなかったが……。
「入れって」
「調査団に?」
「うん」
「陣が?」
「うん……」
「すごいじゃないか」
 いくら望んでもそれが叶えられぬ者も多くいると聞く。そんな役割に抜擢されるなんてことは、他に類を見ぬほど名誉なことであると言えよう。それだけ陣の実力が高く評価されていることの証明でもある。凍矢は、それを自分のことであるかのように喜ばしく思った。
 しかし、陣の表情は浮かない。何故だ。「お前は強いな」と言われて嬉しく思わないなんて、どうかしているというのに。ましてや“あの”陣が、だ。
「陣?」
 凍矢は陣の顔を覗き込んだ。俯いた眼に、「嬉しくないわけではない」、そんな感情が読み取れた。どこかで見たことがあるような顔だ。なにかが陣を躊躇わせている。素直に喜ぶことが出来ない。その理由は……。
「これ」
 陣は痛みを堪えているような表情で、白い封筒を差し出した。一度強く握り潰しでもしたのか、ずいぶんと形が崩れているそれは、しかし魔界から届けられたことを示す印が捺されていることは確認出来た。開封された様子はない。
「なんべんも破って捨ててんのに、またなんべんも持ってくんだ、あいつら」
 促されて封を開けた。中から出てきたのは、達筆な文字で書かれた決して短くはない文章で、さっと眼を通してみると、陣の飛翔術をぜひ組織で活かしてほしいというようなことが記されていた。高く評価されたのはやはりその機動力であるようだが、戦闘力も申し分ないとの言葉もあった。
「でも、凍矢をつれては行けない……て……」
 陣は再び顔を伏せると、堰を切ったように口を開いた。
「凍矢も一緒なら、行ってもいいだ。でも、凍矢は飛行部隊に入れねえって。そんならオレが抱えてくって言っても、機動力が落ちるから駄目だって……!」
「それで、断ったのか?」
「だって!!」
 顔を上げた陣の眼には、透明な液体が溜まり始めていた。
「その手紙みてーのに書いてあっただ! 遠くに長く調査に出る時は、何週間も、何ヶ月も帰ってこれねえって! そんなに凍矢と会えないなら、凍矢が一緒でないなら、そんなもんになんてなりたくねーだ!!」
 凍矢は自分の胸がズキリと痛むのを感じた。まただ。また、自分の存在が陣の自由を奪おうとしている。
「いつから、そんな話が?」
「3ヶ月……、ううん、4ヶ月くれー前」
 ちょうど凍矢の許にも、管理者の件で使いが現れた頃だ。あるいは凍矢がその任を受け易くするために陣にも遠く離れることが必須であるような役割が与えられようとしているのだろうか――もしくはその逆か――とも思ったが、どうやらその可能性は低いようだ。もしそうなのだとしたら、凍矢が返事を濁してから「ならば仕方がない」と陣に声がかかるまでにはもっと時間が空いていたはずである。2つの話は、偶然にも最初から同時進行であったと考えた方が自然だろう。最初からお互いを理由に断ることまで想定されていたのだとしても、大切な役目を、それだけの理由で決めてしまうほど、魔界はいい加減では――流石に――ないだろう。
 本当は、陣はその話を純粋に喜びたかったのだろう。こんな堅苦しくて長ったらしい文章に彼がきちんと眼を通しているらしいことからも、それは充分伺えた。だが、凍矢と離れていなければならない時間が決して短くはないと知り、その喜びを捨てようとしているのだ。
(それでいいのか?)
 陣は、それで満足なのだろうか。本当にそれで良いのか……。
(オレは、それでいいのか?)
 いつまでもこのまま、お互いだけを見て、それ以外の世界に背を向けて……。何かを失ってまで手に入れたいと望んだのは、そんなものだったか? そんな鎖された世界が欲しかったのか?
 凍矢の中で、何かが“融けた”。本当に望むものを、たったひとつにしぼった時、そこに残ったもの……、それは……。
「陣」
 名を呼ばれた肩がびくりと跳ねた。すでに何かを感じ取ったのかも知れない。それを拒むように、彼は顔を背けている。その頬に、凍矢は右手を伸ばした。
「オレがいなかったら、お前はその話を断りはしなかった。違うか?」
 陣は答えなかった。だがその沈黙が答えだ。
「オレ達はこのままでいてもいいと思うか?」
「……どういうこと?」
 かつて、共に魔界の忍達から追われる身となった2人の前には、ただの1本しか道は伸びていなかった。彼等がその同じ道を進むことは必然であり、何の疑問も抱きはしなかった。だが、魔界が統一され、彼等を追う者がいなくなり、自由を得た時、幾重にも広がった大樹の枝のように、複数の道が姿を現した。今、それぞれが己の道を選ぶ時がきたのだ。2人は同じひとりではなかった。どちらかがもう一方の付属品であるということもない。2人は、全くの違う存在だ。故に、歩むべき道は――限りなく近付くことはあっても――別にある。他人の道を歩むことは、己を偽り続けることと同意だ。
「オレはお前ではないし、お前はオレではない。だから、ずっと同じでいることは出来ない。お前には、お前に適した場所と、役割がある。それはオレにも言えることだ。実はオレにも、仕事を任せたいという話がきている。お前ほどかっこいい仕事ではないがな。だが、力を必要とされるのは嫌じゃない。お前もそう思っただろう?」
「凍矢……」
 陣の声は震えていた。
「凍矢、オレといるのが嫌になっただか? オレが、キライ?」
 凍矢はゆっくりと首を横へ振ると、陣の身体に両腕を廻した。
「お前が好きだよ。この世界の何よりも」
 自分から好意の言葉をはっきりと口にするのは非常に珍しいことだった。面と向かって当人に伝えたことは、おそらく数えるほどもないだろう。いつもそれをするのは陣の方だった。陣が好きだと率直に伝えてくれるから、凍矢はそれに甘えていたのだ。いつまでもそうしていてはいけない。不思議と、自分の心が穏やかであることに、彼は気付いた。
「お前には、お前でいてほしい」
 自分のためにと、己を歪めてしまわないでほしい。
「自由な陣が好きだ」
 陣は何も言わなかった。ただ代わりのように2本の腕が凍矢の肩に廻された。ぎゅっと強い力が込められる。
 少し前までは、いつでも傍にいないと不安だった。たったひとつの確かなものだと思いつつも、手の届かないところにいってしまえばそれすら信じられなくなった。だが今は、もう距離なんてものは関係ない。そう思えるだけの絆が、2人の間にはあるはずだ。
「ひとりでも大丈夫だ。お前がいるから」
 なにも永遠に離れているわけではない。これまでと比べると、その時間は格段に減るが、会えなくなるわけではないのだ。
「任務がない時には会いにきてくれるだろう?」
 陣は黙ったまま、何度も頷いた。
「毎日お前のことを考えるよ」
 陣の眼から零れた液体が、凍矢の頬を濡らした。凍矢はそれを、温かいと思った。

 そうやって2人は、道を選んだ。もちろん、それぞれ別の道を、だ。しかしその2本の道は一時的に離れることはあっても、カーブを繰り返し、何度も交差していたようで、彼等が顔を合わせることも声を聞くこともないという期間は、続いても精々ひと月というところだった。人間界に負けず劣らず、魔界の技術も進歩している。離れていても会話をする術等、いつしか掃いて捨てるほどあるようになっていた。あれだけ大騒ぎして離れたというのに、今なら「今生の別れでもあるまいし」と当時の自分を笑い飛ばすことが出来る。
 それぞれが魔界に戻り、新たな役割を手にした。かつては頑なに帰ることを拒んだ魔界は、いつの間にか特別気に留めるような存在ではなくなっていたようで、危惧していたほどの抵抗もなく、生活の場とすることが出来た。考えてみればその以前から、比較的頻繁に仕事のためにと脚を運んでいたのだ。魔忍が解散された時点で、しがらみはなくなっていたのだろう。人間界に執着したのは、「自分達にはそれしかない」という思い込みでしかなかったようだ。
 意外と受け入れて慣れてしまえるものなのだなと、陣は心の中で呟いた。新しい環境にも、隣に凍矢がいないことにも。それでも2人の仲が変わってしまうことはなかった。陣は、暇さえあれば自分のことを凍矢に聞かせたがったし――時々団外秘のことまで話しそうになり、その度に団長に小一時間叱られた――、同じだけ凍矢のことを聞きたがった。一度は陣からの通信で連絡用の回線が塞がって、仕事に影響が出たと凍矢を困らせたことまであった。
 凍矢のことを考えている時間は、決して減りはしなかった。むしろ傍にいた時よりも多く感じるほどだ。以前よりも、愛しく思う。己のことを大切に思うのは生き物の本能として当然のことだろう。それと同じ……いや、それ以上の感情を向けられる自分ではない存在というのは、まさしく“特別”と呼ぶに相応しい。もしも2人が同一のひとりだったら、そんなことを思う日はこなかっただろう。
 与えられた仕事は楽しかった。毎日が冒険のようで、次はどんなものに出会えるかといつもわくわくしていた。それでも長く凍矢に会えない日が続くと、次の帰還の時が待ち遠しかった。それでつい、半ば強引に連れ出すようなことをしてしまうのだ。ついさっきのように。
 窓からその身を躍らせた凍矢を空中で受け止める。最初の1度目こそ凍矢がそんな無茶をするとは思ってもおらず、咄嗟のことに慌てたが、今では道端に落ちている小石を拾い上げるのと同じくらい容易にそれが出来る。凍矢は窓から吹き込む風の向きや強さで陣がどれほどの距離にいるのかを察しているらしく、合図もなしに外に飛び出してくるが、1度も受け止め損ねたことはない――もちろん1度でもしくじれば、妖怪の身であるとはいえただ事では済まないが――。
 数週間振りに会う凍矢は、いつも穏やかな顔で陣を迎えてくれる。
「凍矢、ただいま!」
「おかえり」
 仕事がひと段落し帰還することを連絡すると、その当日には遠目には氷の大地から真っ直ぐ生えた長い針のように見える塔の最上階の窓が開け放たれている。それが凍矢からの返事だ。
「平気だっただか? 仕事、抜けてきちまって」
 一応申し訳ないと思っていないわけではないのだ。自分が普段あちこち飛び廻っている所為で、2人の時間を合わせようとすればどうしても凍矢の仕事に穴を開けてしまうことになるのを。彼の部下には快く思われていないらしいことも、薄々勘付いてはいる。先程も、手が届けば首を絞めんばかりの形相で何事かを叫んでいる若い男の姿が見えた。それぞれが今の仕事に慣れてきた頃に、調子はどうかと尋ねたら、「思ったよりもやりがいがあるよ」と凍矢は答えた。彼は彼なりに、そこに楽しさや喜びを見付けたようだと陣は思った。それだけに、無理に連れ出すことに罪悪感を覚えぬということはない。いくら凍矢が責任のある立場にいるといっても、24時間休みなく働いているわけではない。夜には身体が空くはずなのだから、それまで待てと言われれば、なんとか待つ努力はしようと思ってはいるのだ――実際に堪え切れるかどうかは別としても――。しかし、
「問題ない」
 凍矢はさらりと答えた。いつもそうだ。「お前はお前らしくいればいいんだよ」と――いつかと同じ言葉を――言われたこともある。だから陣も、結局遠慮をしたことがないままだ。
「現時点で手元にある仕事は向こう1週間分ほどは終わらせてある。後から追加になる分は戻ってからで充分間に合う」
「すげ」
「部下達も本当はもっと面と向かって文句を言いたいらしいが、出来ないでいるらしい」
 凍矢はくすくすと笑った。
「お前に会いたいからな」
「凍矢変わったべ。前はそんなこと、頼んでも言ってくんなかったのに」
「戻るか?」
「だめ」
「お前の方は、仕事は順調か?」
「んだ。団長にはよく怒られてっけど」
「国のトップクラスの人材に苦労をかけるんじゃない」
「えー? オレの所為?」
「そうでないはずがあるか」
「見てもいないくせに」
「見なくても分かる」
 やがて陣が纏っている風の温度が冷たさを顰めてきた。凍矢が管理を任されているエリアは、陣には少し寒すぎる。行き先を決めるよりも先に、まず“外”へ出てしまうのが、彼等のいつものパターンだった。
「さってと、どこ行きたいだ?」
 2、3日中に行って戻ってこられる距離に限るなら、陣に知らない場所はほぼない。仕事で見聞きしたものの中に、凍矢が見たいと望むものはきっとあるはずだ。幼い頃、自由に出歩けなかった凍矢の代わりに、陣は様々な場所へ行き、色々な物を持ち帰った。あの頃と、やっていることだけならよく似ている。もちろん、もうあの頃のように捕らえられて等いないが。
「なんか見たいもんとかあるか?」
 なんでもこいという気持ちで尋ねると、しかし凍矢はゆるゆると首を横へやった。
「どこでもいい」
 凍矢は陣の肩に頭を預けながら言った。
「それ、意味分かって言ってっか?」
 顔を見合わせて笑い合うと、陣は進行方向を調整した。凍矢に見せたい……いや、凍矢と一緒に見たい物は、たくさんある。遠くの景色。そこに住む動物達。見たこともないような形の植物。あの時、自分が進むべき道を選んでいなかったら、きっとずっと知らずに過ごしていたであろう物が、たくさん。
 風に吹かれながら地上を見下ろす凍矢の表情は、いかにも楽しげだ。「やはり飛べるのはいいな」と彼は呟いた。
「気分転換にはもってこいだ」
「なんべんでもつれてきてやるだ!」
「ああ、また頼むよ」
 凍矢を外へ連れ出すのは、いつだって自分の役目だ。それだけは、どんな仕事を与えられようが、降りるつもりもないし、誰かに譲るつもりもない。絶対に。
「よしっ、行くだ!」
「ああ」
 凍矢の腕がしっかりと自分に捕まっていることを確かめると、陣はスピードを上げた。


2015,05,13


トモカ様から「100年後の陣凍」とのリクエストをいただきました!
明確に○年後とは書いてませんが、とにかく第一回目の魔界統一トーナメントからはだいぶ経ってるっぽいなと思っていただければ幸いです。
まず、そんな未来の時代に人間界がどうなっているか想像がつきませんでした。
そして常にべったりくっついていないと駄目な2人よりも、離れていてもお互いが1番な2人の方が愛情としては深いのではないかと思いました。
結果として、魔界在住しかも2人ばらばらという形に。
学生時代は毎日顔合わせてた友達と卒業後は年に数回会う程度になってしまったけど、今でもちゃんと親友。みたいな。あるいは、遠恋。もしくは夫が単身赴任中(笑)。そんなイメージです。
ほら、蔵馬もサヨナラはピリオドじゃないって言ってるし。
なんで陣凍なのに蔵馬のキャラソンの話になっちゃうんだってツッコミは禁止です。
本当はただ一緒にいるだけで満足っていうのもひとつの幸せの完成形だなとは思うのですが、それじゃあ小説のネタにはならないという大人の事情も……(笑)。
冒頭のオリジナルキャラはただの凍矢ファンを拗らせたヒトみたいです(笑)。
凍矢の管轄内で十数年前くらいに生まれた氷属性の妖怪(ヒト型・♂)で、親に頼まれて凍矢が名付け親になったんだけど本人はそのことを知らないまましかしちょっと異様なくらい凍矢を尊敬しまくっている。という裏(?)設定。
オリジナルだとキャラ崩壊とか気にしなくていいのはちょっと楽でした。だいぶ遊んだ(笑)。
リクエストいただいたのは2人がずっと傍にいて幸せに暮らしているという内容のものだったのかなと思いつつ、こういう未来ももしかしたらあるのかも知れないと持って読んでいただけたら幸いです。
リクエストありがとうございました!!
<利鳴>

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