初めに。
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また、極端な描写ではありませんが、性的表現に変わりは無いので苦手な方もご遠慮下さい。
尚、シンジ×アスカではありません。あくまでアスカ×シンジです。


息の、
貯蔵器


 永遠に夏の世界は夕暮れが遅い。と、父が話していた。
「ふーん。確かに日本って昼間が長いって感じはするわよね」
 しかし真実かどうかは判らない。
「そうなの?海外って行った事無いから……でもこれ以上お昼が短かったら、何も出来なくて不便そう」
「そうね。夜だけに出来る事なんて、昼だけに出来る事に比べたら少ないだろうし」
「うん、私全然思い付かない」
 談笑しながら下校する右を歩くアスカと彼女の左を歩くヒカリ。中学生の下校時刻に夕日が見えないのは、2015年を迎えた日本では当然の事だった。
「アスカは夜だけにする事なんて有る?」
「そうねぇ……シャワーは朝にも入るし、深夜番組ったって、最近面白いの無いし」
 あれもこれも、昼間でも出来る事ばかりだ。
「ヒカリは?何か有る?」
「うーん……次の日持ってくお弁当作ったり……それ位かな?でもお弁当なら朝作ったって問題無いよね」
「そうよ、夜作ると傷んだら困るじゃない」
 よく微妙なニュアンスの日本語を使えるのだと誉めたかったが、自分の分の弁当を作らせている同居人の言葉なのだろうと思うとヒカリは誉め言葉が出てこなかった。
「お弁当と言えば、うちの学校もお弁当食べられる中庭とか有れば良いのにね」
「中庭?」
 聞きなれない言葉に眉間に皺を作るアスカ。しかしヒカリはアスカが『中庭』と言う単語を知らないとは気付かずに話も歩みも止めなかった。
「うん。昨日テレビで見たんだけど、新神戸の私立の女子校、凄い綺麗な中庭が有ってね、お昼には皆がそこでご飯を食べるの」
「へぇ……」
「でも人が集り過ぎて、涼しさに欠けるーって話だったの」
「いやぁね、人が沢山居て暑いだなんて。お弁当位涼しい所で美味しく食べたいわよ。……ヒカリのお弁当、本当何時も美味しそうよね」
「そう?有難う。でもアスカのも……って、今日はお弁当じゃなかったわね」
「そうなのよ!あの馬鹿宿題が有るからーってさ。昨日もよ?宿題なんて、日本語読めるんだからものの数分で出来るじゃない!」
 設問が読めれば必ず答えられるのはアスカの学力が高いから。普通の中学生として過ごしてきた、あまつさえ最近は全人類の生命を守る為だ何だと学校を公的に休む事が多いシンジには簡単に解ける物ばかりが宿題になるとは限らない。
 愚痴るのはシンジが作る弁当がそれなりに気に入っているからだろう。そう考えるとヒカリは口元に笑いが込み上げてきた。頻繁に口喧嘩をしている様に見えるが、決して互いが嫌いなワケではない、所謂痴話喧嘩だ。知らない筈の4時台の夕暮れ以上に懐かしさを感じる関係。
「今日も宿題出たから作ってもらえないかもね」
「何でこの私が3日も連続で昼ご飯買わなきゃならないのかしら。朝コンビニに寄る時間が有るなら、もう少し寝てるわよ」
 大袈裟に両手を広げる仕草はアスカの外見以上に日本人離れしている。ドイツ人と言うよりアメリカ人っぽい雰囲気だ。確か国籍はアメリカだと本人から聞いたのをヒカリはぼんやりと思い出した。
「私、ヒカリにお弁当作ってもらいたい。美味しそうなんだもの」
「良いわよ。あ、でも碇君に作らなくて良いって、ちゃんと言ってね?折角作ったのに、食べてもらえないなんて可哀想だから」
「でも余ったら鈴原辺りが食べるんじゃない?アイツ凄く食べそうだし」
「確かに鈴原は沢山食べそうよね。でも……いつもコンビニのお弁当よね」
 ヒカリが少し寂しそうに言ったのは成長中の男子が粗食なのを心配したからだろうか。違う。反語的に脳内で考えながら、アスカはヒカリの感情を読み取った。
「だったら、作ってあげれば良いじゃん」
「え?」
「作って手渡しして、『はい、鈴原お弁当よ〜』『おお有難うや委員長〜』ってやれば良いじゃん」
「なっ……」
「でしょ?」
 関西弁が思いっ切り可笑しい事にツッコミが入らなかったのは、ツッコミ担当であるヒカリが顔を真っ赤にして言葉を失っていたから。
「あぁあ〜私の為にはシンジを言い訳に使って作ってくれないクセに、鈴原の為には作りたがっちゃってさ〜」
「そ、そんなんじゃないわよ!」
 右手で持っていた学生鞄を胸元で抱き締めるヒカリの姿は、どう見たってその通りとしか言っていない。
「ヒカリを鈴原なんかに取られちゃうの、嫌だなぁ〜」
「取られるって……んもぉ」
 言葉を続ける前に洞木家とアスカの住む葛城家との境目たる角に辿り着いてしまった。
「アスカが変な事言うから、明日はアスカのお弁当なんて作らないからね!」
「はいはい。じゃあ鈴原に作ってあげればぁ?」
「だ、だから!……じゃあね」
 どうせ口では敵わないと判断したヒカリ。
「うん、また明日ね」
 別れの挨拶を済ませるとヒカリは左の細い道へと入っていく。アスカの帰り道はこのまま真っ直ぐだ。
 ヒカリってば、真っ赤になっちゃってさ。あんな判りやすいのに、どうして鈴原気付かないのかしら。
 からかったのが楽しかったのか、明日以降はいつかヒカリの作る弁当で昼を迎えられると考えると嬉しいのか、いつもより歩行ペースが遅くなる。使徒が来ないと言う条件の元とは言え、こんなにも学生らしい日常を味わえるのなら日本に来て良かったと思う。
 その足取りがピタリと止まる。アスカの白いソックスに映える赤いラインが綺麗に横にならんだ。
「何よ、私より鈴原を選ぶなんて、有り得ないわよ」
 誰も居ないのに、居ないからこそ思わず口に出していた。声音も表情も固い。
 いつからかは忘れたが、かなり前から自分の大親友であるヒカリがクラスメートであるトウジに片想いをしているらしい事は気付いていた。日常会話の遣り取りや、視線等で何と無く判るのだ。これはアスカが自覚する察しの良さ以上に、ヒカリの言動の判りやすさが理由だ。
 正直に言って自分はトウジにはとても恋愛感情を向けられない。トウジはガサツに見えたり女子との交際よりも男子との友情を優先したりしそうには見えるが、女性を騙して食い物にするとは思えない。そう言う意味ではヒカリの邪魔をするつもりは一切無い。
 しかし。しかし、だ。もしもヒカリが自分よりもトウジを優先するとしたら……それは嫌だ。何が嫌なのかは判らないが、とても不快になる。
 今はヒカリから告白する気配も無く、アスカとの時間をとても大切にしてくれている。ヒカリは誰よりもアスカを優先してくれている。
 それに答えると言うワケではないが、アスカもヒカリを優先している。勿論ネルフに行かなくてはならないとなれば必然的にそちらを優先するが、それ以外に関しては誰と比べても1番はヒカリだった。
 加持に対して慕情を持っているが、加持との約束をした日にヒカリが今にも泣き出しそうな顔で「頼みが有る」と言ってくるならば加持との約束を断るだろう。
 そんな関係がこのまま続くなら良い。だが、もしもヒカリが鈴原やアスカ以外の人物を優先する様になるとしたら……それは耐えられそうにも無い。
「そんな事、絶対させないわよ」
 先程よりも少し大きめの独り言を呟いて、再び歩き出す。誰も、猫1匹居なくてもアスカの歩き方は姿勢が正しくて美しかった。

 その日の夕食のメインは麻婆豆腐だった。本格的な物ではなく、買ってきた『麻婆豆腐の素』とやらに豆腐を切って入れて温めるだけで出来る。
 それに関してアスカが文句を言わないのは、この味が意外と気に入ってしまったから。また、ミサトが文句を言わないのは、本来ジャンケンで決められた当番表の名前が自分になっているにも関わらずシンジが作ったから。
 アスカが同居する事になった際に、当番表はすっかり役目を終えて唯のキッチンの壁飾りになっていた。
「香港土産、何が良い?」
 夕食時からビール片手に気前良く尋ねてくるミサト。
「要りませんよ、餞別用意出来ませんし」
「大体香港って何が主流なのか知らないし。興味無いんだモン」
 そしてペンペンは何も言わず、果たして食べて体に問題無いのか知れない麻婆豆腐を啄ばんでいた。
「何か冷たいわね、アンタ達……」
「そうですか?」
「別に要らないんなら助かるんだけどさ」
 そう言いながら右手のビールを煽る。どう見てもミサトだけは食事のメインが麻婆豆腐ではなくビールだ。
「明日は良いけど、明後日は2人共忘れずにネルフ行くのよ?」
「はーい」
 間延びしたアスカの返事。明日・明後日・明々後日と2泊3日でミサトは香港行く事になっていた。
 ミサト自身が仕事だと言うし、実際にネルフの支部が香港に有るのは知っている。だがアスカは何と無く仕事ではない、別の理由が有る気がしていた。
 加持さんに電話すれば判る事だけど。
 推測の域を出ないがミサトは加持と行動するだろうと踏んでいる。泊り掛けで旅行と洒落込むのか、本当に香港視察なのかは判らないが、もしも加持とは別行動ならば2人のお守りとして加持がここに泊まるだろうとアスカは踏んでいる。
 親友のリツコではなく、加持が。2人の関係はあの日を境に少し変わったのが判る。判りたくないのだが。
「でも、大変ですよね。ずっと仕事忙しかったみたいなのに、更に海外にまで行くだなんて」
「まぁね〜。でも香港って1度行ったきりで、もう1度行ってみたかったし……でもやっぱ大変なのよね。大変って言うか面倒って言うかさ」
 何が大変よ。どうせ加持さんとナニするのが大変とか思ってるんでしょ。大人って不潔だわ。
 小皿に装った豆腐に箸を突き刺すアスカ。自分は怒っているとアピールするつもりは無く、また2人の目にも未だ箸には不慣れだから刺して口まで運ぶだけに映っているのだろう。
「そだ、シンちゃん麻婆豆腐避けておくって言ってなかったっけ?」
「そうだった、忘れてました」
 慌てて箸を置いて立ち上がり、余り大きくない食器棚へ向かう。
 戻ってきたシンジは小皿と大きなスプーンを手にしている。麻婆豆腐の入った大皿にそのスプーンを入れた。
「ちょっと、何してんのよ」
「明日の弁当の分だよ。今日買い物行ってないから明日弁当に入れるの無くて……だから晩ご飯麻婆豆腐にしたら丁度良いかなって」
「こんなの入れたら匂いが移るじゃない!」
「そりゃ、そうかもしれないけど……でもアスカ昼間凄く怒ってたじゃないか、昨日も弁当無かったのにーって!」
「ちょっとぉ、喧嘩は止めてよ?明日から家留守にするの、不安になるでしょうが」
 2人が本気で罵り合ってはいない事位ミサトにも判っている。しかし保護者として、そして家族として止めないのは色々と不味いだろう。特に夕食の味が不味くなるのが問題だ。
「本当アンタ達子供2人を残してかなきゃならないなんて……」
「子供扱いしないで」
「はいはい」
 漸く缶ビールを置いたミサトは、次は味噌汁に手を伸ばした。
「2人共、友達の所泊まる予定とか無いの?」
「ミサトが家を空けるからってヒカリの家に泊まるだなんて、そんな恥ずかしい事出来るワケ無いじゃない」
 口喧嘩をしながらも既に麻婆豆腐を皿に取り分けていたシンジも座り直しながら言った。
「僕も無いです。明日ケンスケ居ないし」
「相田君が居ない?」
「はい、明日は朝からどこだかに行く〜って今日自慢されちゃって」
 口振りからすると相当自慢された様だが、場所を覚えていないのはシンジが興味の無い、戦艦関係の港にでも行くのだろう。シンジもトウジも、ケンスケの楽しそうに話す姿は好きだが、話している内容までは理解しきれていない事が多い。
「だから……お土産買ってきてって話になったんですよ」
「へぇー」
「未だ買うとも何とも言ってないのに、トウジが先に「ペナントは要らん!」って言っちゃって」
「ペナントねぇ。最近見掛けないわよね」
 相槌を打ったのはミサトのみだったが、シンジは話を続ける。
「だから僕、逆に珍しくて良いんじゃない?って言ったら、トウジが猛反対してきて」
「何か嫌な思い出でも有るのかしら」
「さぁ……何か有ったのかトウジに聞いても、理由全然言わなくて」
 帰宅時にトウジの事を考えていたアスカとしては、シンジがトウジの名を連呼するのは複雑な気分だ。これがもし自分がヒカリの立場で、トウジと言う好きな人の名前を連呼されているとなると更に複雑な気分なのだろうか。
 知らないわよ、そんなの。
 自分で考えて、余計に苛立ちが増してくる。会話に入る事無く、少しわざとらしく大きめの音を立てながら咀嚼して飲み込む。同じく会話には入っていないペンペンには喉を通る音が聞こえていたかもしれない。
「明日じゃなかったら、トウジに泊めてもらえないか相談したんですけど……」
「ん?明日鈴原君何か有るの?」
「妹さんの病院に行くから……」
 あぁ、と言いながらミサトは再び缶ビールを手にした。視線が斜め下に向いた辺り、気まずそうな表情だと、すぐに判る。
「そんな日に泊めて欲しいとか、その、ちょっと……言い辛くて」
 それはアスカが来日する前の出来事で、アスカはシンジとトウジとトウジの妹の事情を余り知らない。エヴァに関する誤解が有ったんじゃないかと言う位は簡単に想像が付く位の頭の回転の速さを持っているアスカだが、興味が無いので確かめようとは思わない。
 だからこそ夕食の会話に入れず浮いている。ほんの数ヶ月の差を見せ付けられているみたいで飲み込んだ夕食を戻しそうになる。
 どうでも良いわよ、馬鹿シンジの事なんて。全部知る必要なんて無いわ。
 込み上げる不快感と辛口の豆腐をしっかりと飲み込んで、アスカはガタンと音を立てて立ち上がった。
「ご馳走様」
「食器さげてくれる?」
「自分でやって」
 シンジの申し出を考える間も無く断って、そのまま背を向けてアスカはリビングへ向かっていった。
「自分でって……食べたのはアスカなのに」
 妙なまでに言いえる独り言の愚痴を漏らしたシンジに、ミサトも苦笑するしか無かった。そうして皮肉が言い合えるのは、他人ではなくクラスメートで同居人でパイロット仲間と言う強い繋がりが有るからだろうと思い込めんで。
 一方アスカは食器をさげるのは自分の仕事ではないと悪びれもせず、リビングを抜けて自室に入った。
 前から何度か駄々を捏ねているがちっとも叶えてもらえない、相変わらず『鍵』の無いフスマをしっかりと閉じる。
「何でシンジもあんな馬鹿な男と一緒に居られるのかしら」
 1人きりだから余計に言葉にしてしまう。アスカの声が途切れれば部屋は静まり返り、ほんの少しだけ秒を刻むのが遅い安物の時計の針の音しか聞こえない。
 常時コンセントがささりっ放しのノートパソコンが置いてある学習机。そのパソコンの電源を点け、自分はカーペットに膝を付けて1番下の引き出しを開ける。
 机の1番上は教科書を乱暴に入れてある。2番目と3番目はプリントやらCD−ROMやら、時には日本語の辞典等が、重要そうな物とそうでない物に分けられて入れてある。そして4番目の、1番下の引き出しは特別な引き出しだった。
 色で表すなら桃色。14歳の少女が持つには早過ぎる性玩具を幾つか入れていた。
 あんな馬鹿でガキな男とヤる位なら、自分1人でヤってる方が未だマシよ。私に1人で出来ない事なんて無いわ。
 流石に引き出しから溢れそうな程持っているワケではない。しかし他の引き出しよりも少し深いのに、整頓すると言う考えが無いのか乱暴に詰め込まれ、収納量を大幅に減らしている。
 もしもアスカにこんな収納方法では……と説教をしよう物なら「使いやすい様に入れてある。自分だけが判る整頓法だ」とでも返してくるだろう。勿論そんな事を尋ねる者は、この性玩具の数々を知る者は居ないのだが。
「男の人とスるとしても、加持さん以外は絶対に嫌よ」
 でもその加持さんがシてる相手はミサト……
 独り言として続けようとしたが、その現実を認めたくなくて声に出来なかった。右手を引き出しに入れたまま何も掴まず、そのまま項垂れる。オレンジイエローの派手な長い髪が流れて顔を隠す。
 ミサトの相手をした体で自分の相手をするのかと考えると、加持が相手でも具合が悪くなるかもしれないと思った。寧ろなるのだろう。先程飲み込んだ筈の夕食がまた込み上げてきた。
 もしかすると、ヒカリもそう思っているのではないだろうか。
「ヒカリ……」
 好きな相手が、もし自分以外を好きだとして、自分以外の相手をした体で迫ってきたら……自分の様に具合を悪くしてしまうのだろうか。
 特に潔癖気味なヒカリの事だから体が拒絶して吐き戻してしまい、そんな姿を曝す自分を憎んでしまうのではないだろうか。
 そんなのは許せない。カーペットにだらしなく置いていた左手で固い握り拳を作る。
 大切な友達を汚されるのは許せない。どうせ14歳の男子なんて汚い子供、ヒカリの純情を遊んで踏みにじるだけだ。
「どうかしてるわよ、ヒカリ、目を覚ましなさいよ」
 ほぼ真下を向いて吐き捨てる様に呟くアスカの声は、当然誰にも聞かれなかった。

 授業の終わりと10分の休み時間の始まりを告げるチャイムが2−Aの教室に鳴り響く。2時間目を担当していた数学教師はこのチャイムと同時にどんなに途中でも授業を終わらせる。それ故に生徒から人気が有った。
 朝早くから電話を掛けて迷惑扱いされるのが嫌だったアスカは、待っていましたと言わんばかりに携帯電話を取り出してアドレス帳を開く。
 今出なかったら、ミサトと旅行決定。
 脳内で勝手に決め付けて、通話ボタンを押す。
  只今留守にしております。ご用件の有る方はピーと言う発信音の後に――
 呼び出し音すら無く、すぐに機械で合成された様な女性の声が流れる。
 先程の脳内決定を取り消したりはしない。認めたくはなかったが、実際心の奥底では予想していた。電話には出る事無く、留守番メッセージが流れる事を。つまりは既に加持はミサトと共に居る事を。
 下らない。
 そう思いつつも、どうする事も出来ない。今出来る事、しなくてはならない事と言えば次の授業の準備位。そして3時間目は歴史の授業なので教室を移動する必要が無い。
 B4サイズと妙に大きく机に入れっ放しにしておいた資料集を机上に出し、教材用に先日配布されたばかりのCD−ROMを学生用のノートパソコンにセットする。
 歴史の授業はドイツに居た頃には余り習わなかった日本の『昔話』を知る事が出来てそれなりに楽しかった。しかし時折年老いた科目担当の教師の言葉が判らない事も有る。
 そう言えば『ナカニワ』って何だったのかしら?
 漢字に変換されていれば未だ理解出来たかもしれないが、昨日の下校時の会話では検討が付かなかった。恐らく私立の女子校には普通に有る物なのだろう……程度には考えていたが、調べたりはしなかった。
 少し遅れたが、自分より右斜め後ろに座っているヒカリに聞いておこうと思って振り返ると、ヒカリは次の授業の準備を済ませて大人しく座っていた。
 しかし顔がこちらに向いているのに反応が無い。正確に言えば、目線が全く違う方向へ向かっている。
 左側、窓側へと向いている視線を辿ってみると、意外な人物が居た。
 教室の備品の白いカーテンの前でシンジが楽しそうに笑っている。
 ……と、勘違いする所だった。その隣にトウジが居て、2人で何か話をしていた。ヒカリは隣のトウジを見ていたのだ。
「昨日夜中コンビニ行ったから、そん時一緒にパン買うたわ」
「じゃあ昼休みは屋上に行こうよ。今日涼しいって天気予報で言ってたし」
「それエエな。先買うといて良かったわ。シンジは飯有るん?」
「うん、昨日宿題出なかったから弁当作ったんだ」
「偉いやっちゃなぁ〜」
「トウジも作れば?」
「ンな面倒臭い事ワシが出来るか」
「即答しないでよ」
 そして2人で笑い合う。その後もパンが半額で置いてあったのは期限が近いから、弁当の中身を分ける等の話を続ける間、2人の笑いは耐えない。
 幸せそうなトウジの笑顔。それを目線だけを向けて見ているヒカリも幸せそうだ。
 そんな中、アスカだけが幸せを感じていない。シンジと笑い合い、その姿を見てヒカリを微笑ませる。トウジの事を馬鹿と思おうとも嫌ってはいない。しかしこの状況は妙に腹立ったしい。クラスメートがアスカに視線を向ければすぐに不機嫌なのが判る程、アスカの眉間に皺が寄っていた。
 何なのよ、鈴原って。ヒカリが見てるのに、何でシンジとしか話をしないのよ。何で、シンジなんかと……
 どんどん自分のテンションが下がっていくのが判る。理由は候補が2つ。ヒカリがトウジしか見ていないからか。見られているトウジはシンジしか見ていないからか。
 どうしてヒカリがトウジに恋心を抱くのだろうか。男は見ての通り友情ばかりで異性の好意に気付かないし、気付いていても加持の様に胸の大きな女性とばかり行動をする様な最低な生き物なのに。別にレズビアンになって欲しいとは思わないが、ヒカリがそんな男に夢中になるのは気に入らない。勿論、アスカ自身が夢中になるのだって考えただけで耐えられそうに無い。
 早く大人となって真剣な男女交際をしたいと思わないと言えば嘘になる。しかし同年代の、男子同士で笑っている方が自然な同い年の子供との真剣な付き合いなんて考えられない。この年の男は男と楽しそうにしていれば良い。そして自分達女性は女性達で将来を見据えた恋人をしっかりと選ばなくてはならない。
 CD−ROMを読み込み終えたノートパソコンのキーボードの上に手を乗せていたので、画面がアルファベットの『J』だらけになってしまっているが、気にせずにアスカは半身後ろを向いたまま、ヒカリと男子2人を見ていた。
 あの2人が付き合いでもしたら、ヒカリも鈴原なんか見なくなるんじゃないかしら。
 別に絶対に見るなとは言わないが、恋愛対象として意識し過ぎて自分を見ない様になるのだけはゴメンだった。
 男同士で付き合うなんて、変態のする事だけどさ。
 遂に文字を入力しきれなくなったノートパソコンがピピピッとエラー音を鳴らしたのに気付いてアスカは前を向いた。見上げれば黒板の上に有る時計の針が3時間目を始める時刻に近付いている。
 背中では見えないが、未だヒカリは2人を見ているのだろう。そして2人は気付かずに2人の世界で楽しく笑っているのだろう。声変わりを迎えていない幼い声と、未だ完全には把握仕切れない方言の声とが笑っているのが左耳に届いた。

 教室掃除はサボれないので特に嫌いだった。
 尤も、今はヒカリと同じ班なのでどこが担当でもサボる事が出来やしない。席替えで同じ班になれたのはとても嬉しかったが、掃除の時ばかりは違っても良いとアスカは思う様になっていた。
 今日はサボろうと思えばサボれる。ヒカリは委員会が有るので掃除を免除されている。羨ましい反面、相当時間が掛かるらしいので先に帰っていて良いと言われてしまうと、掃除を放棄して帰宅するのには逆に気が引けてしまう。
 せめて理科室の掃除ならなぁ。机後ろに下げたりしなくて済むからちょっと楽なのに。
 教卓の前で青い柄の回転箒に顎を乗せて、帰らないが掃除をする気も無いらしいアスカ。他の掃除当番は何故か注意してこない。アスカがエヴァのパイロットで天才美少女と言う特別な立場だからか、はたまた何時もの事だからだろうか。
「お待たせ」
 いい加減聞き慣れたと言うより聞き飽きた声がしたので出入り口の扉の方を見ると、そこには予想通りシンジが居た。
「アンタ今日理科室掃除だったわよね」
「え?うん」
 はあぁ、と判りやすく溜息を吐く。せめてと思っていたばかりなだけに何だか損をした気分だ。
「あ、そうだ、アスカ」
 後ろに寄せられた机の、自分の席から学生鞄を取ってきたシンジが歩み寄ってきた。
「晩ご飯、何が良い?」
「晩ご飯?……私嫌よ、晩ご飯の買い出し付き合うの」
「それは良いよ」
 屈託の無い笑みを見せるシンジだが、まるで必要とされていないと言われた気がしたアスカは笑顔を返さなかった。
「あっそ。1人でちゃーんとお買い物出来る様になったのねー」
「何それ。それに1人じゃないよ。綾波が一緒に行ってくれるんだ」
「はぁ?ファースト!?」
 バッと大袈裟に手を広げたので、顎を支えていた回転箒が落ちて大きな音を立てた。真面目に掃除をしていた同じ班の生徒が同時にこちらを見たが、また何時ものやりとりか……とすぐに掃除に戻った。アスカがシンジに対して怒り方向でオーバーリアクションをするのは見慣れているし、それ以上に掃除をしないのも見慣れている。
 アスカが視線を先程シンジが帰ってきた扉に向けると、そこにはレイが左手で学生鞄を持って立っていた。自分の話題が出ていようと気にせず、顔はこちらを向いているが無表情のまま何も見ていない。
「何でファーストと一緒に行くのよ」
 私には来なくて良いなんて言ってさ。
「家に1人で居ると、何食べて良いか判らなくなるんだって。だから今日ネルフに行かなくても良いし、同じ物買って同じ物作ろうって話をしたんだ」
 理由尾聞いたのは自分なのに、しっかりと話してもらっているのに、何故か言い訳されているだけに聞こえてしまう。
 取り敢えずアスカは先程落としてそのままになっていた回転箒を拾い上げ、視線をレイに向けてから考えるフリすらせずに言った。
「ハンバーグ」
「え?」
 案の定聞き返してきたので、今度はシンジの目を見て言う。
「ハンバーグが食べたいの」
「判ったよ、じゃあ今日はハンバーグね。付け合せ何が良い?」
「その位自分で考えなさいよ。私掃除しなきゃいけないんだから」
「ゴメン。じゃあその辺りは適当にするよ。もし食べたいのが有ったら電話くれる」
「はいはい」
「じゃあね」
 すぐに謝っちゃって、と文句を続けようと思ったが、シンジは早々にレイの元に駆け寄っていた。
「じゃあ行こっか」
 シンジの声にレイは何も言わずに頷いてこちらに背を向ける。どうせ気の所為だろうが、レイがこちらを見た気がした。そのままニヤリと笑われた気もした。
「何よ……」
 低い声で呟くアスカ。無意味に拾った回転箒を握る手にも力が入る。
 自分からトウジがヒカリを奪った様に、レイもシンジを盗んでいくのだろうか。否、どちらも奪われたり盗まれたりしたワケではない。その前に別段自分の物でもない。だが続け様に手元から離れていく気がしてならなかった。
「不倫は嫁さんに見付からん様にな〜!」
 そんな所へ根源たるトウジの独特に訛った声が聞こえてきた。遠くで「嫁でも不倫でもないって!」と叫んでいるシンジの声も聞こえた。
「何や、未だ教室掃除終わっとらんのか」
 誰に言うでもなく呟きながらアスカの真横を通り過ぎるトウジ。後ろに下げられた自分の机から鞄を取って戻ってくる。
 そのまま教室を出ようとするトウジの目の前にアスカは立ちふさがった。左手に回転箒を持ったまま腰に手を当て仁王立ちで。
「……何か用か?」
 流石に威圧感が大きかったのか、少し怯み気味にトウジが尋ねてくる。
「アンタ馬鹿ぁ?何で引き止めないのよ」
「何の話やねん」
「シンジよ、シンジ!どうしてファーストと一緒に居させるのよ!」
 つまりは八つ当たりか、と判断したトウジは砕けた笑みを見せる。
「奥さん、不倫されとるんですかー?」
「馬鹿!だから馬鹿なのよ!私じゃなくて、アンタでしょ!」
 ヒカリに気付かずにシンジと話してるクセに、そのシンジをファーストに持ってかれてどうすんのよ!!
 流石にそこまで口にはしなかった。そこで漸く無意識の内にアスカは自分の考えが一方向に纏まっているのに気付いた。
 トウジがシンジと向き合っていれば、ヒカリは汚い男子に目を向ける事が無くなる。自分を1人置いて何処かへ行ってしまう事も無くなる。
 何だかんだ言いながらトウジを嫌っているワケではないのでシンジをくれてやっても構わない。が、レイに横からシンジを取られてしまうのは許せない。
 先程あの場でレイからシンジを引き離し、古臭い映画の様に独占し出せば事が丸く収まったのではないか。そこまで心の奥底の自分の見えない部分で考えていた。しかしトウジは裏切ったかの様に呑気に自分に軽口を叩いてくる。
「本当アンタは馬鹿でガキでどうしようも無いわね!」
「な、何でワシがそこまで言あれなアカンねん」
 強く言い返してこないのはアスカがトウジを嫌って怒っているのではなく、ただ興奮状態に有るから。鈍感そうに見えて人の心の動きには敏感なトウジは判っていた。
 しかしアスカの身勝手な妄想までは知らない。この時期の女子に訪れている生理にでもなっているのだろうと思い込み、触らぬ神に祟り無しと白い鞄を肩に掛け直した。
「アンタが1人になっちゃってるじゃない!何考えてんのよ!!」
 背を向けようとしたトウジに尚も食い掛かるアスカ。声が大きくなってきて、流石にクラスメート数名がこちらに目を向けている。
「1人に言うても……何や?ワシん事心配しとんのか?」
 グッと唇を噛み締めるアスカ。心配しているのはトウジの周りに居るヒカリと、そしてシンジの事でトウジ自身の事を心配しているのとはまた違う。それに対しての反論は幾らでも出来るが、イコール他人を心配しているのを知られてしまう。それは完璧才女として生きてきた自分のイメージを崩す事に繋がるので言いたくない。
 そんなアスカの態度がトウジには不思議だった。体調の問題で苛々しているだけではないのだろうか?しかしここで「生理で辛いのか?」なんて大っぴらに聞く程無礼な人間でもない。
「確かに1人になってもうたしな」
 少し肩を下げて溜息を吐いてみせる。アスカの表情がまた変わった。眉を寄せトウジをジッと見る、本当に心配してきている様な表情に。
「ほな、惣流もまた明日な」
 今がチャンスと言わんばかりに振り返らずに背を向けて、ほんの少し早足で歩き出す。追い掛けも、その背中に声を掛ける事もアスカはしなかった。
 廊下を歩きながらトウジはこの時間なら妹の入院先の病院に真っ直ぐ行けるバスが丁度良い筈だなぁと呑気に考えていた。先程のアスカの剣幕は恐ろしい物が有ったが、明日にはもう直っているだろうと頭から追い出して。
 シンジ、帰ったらどないに文句言われてまうんやろな。
 それに関しては、少々心配していなくもない。
 教室では机が元の位置に戻され、掃除も終わりを迎え始めている。珍しくアスカも掃き集めたゴミを塵取りに移す作業を手伝う事にした。
 アイツ、やっぱりシンジに変な気が有るのかもしれない。
 アスカは先程の寂しそうなトウジの表情を勝手に誤解していた。
 そう考えると何故か掃除も手伝う気になり、ゴミ箱のゴミを正面玄関近くまで捨てに行く係を立候補までしていた。
 何が有ってもゴミ箱を持つ事が無かったアスカがそんな事を言い出すなんて……とクラスメートはアスカやトウジとは全く別のベクトルの心配をしてしまった。

「ただいまー」
「お帰り」
 きちんと挨拶を返したのは良いが、アスカは真剣に見ているテレビから目を離そうとしない。
「そんなに近いと目ぇ悪くするよ」
 シンジの忠告も聞かず、1年程前にゴールデンタイムで放送されていた有名なドラマの夕方再放送に見入っている。
「……ペンペンにも言いなさいよ」
 暫く間を置いてから返事をしたアスカはすっかり自分専用にしたクッションを両腕の下に敷いてうつ伏せに近い状態で見ている。
 そのすぐ隣で白と黒の座椅子に腰掛けてペンペンもテレビに見入っていた。
「2人共、視力落ちても知らないからね」
 ペンペンも含めて言い直してみるが、2人……もとい、1人と1匹は動こうとしない。
 ある程度予想していたシンジは諦めて、買ってきたばかりの買い物袋をキッチンのテーブルにおいて、ガサガサと音を立てて中の物を取り出し始めた。
「晩ご飯、何にしたの?」
 漸くアスカが首を動かしてキッチンの方を見た。音が煩いからと言うよりは、ドラマがCMになったからが理由だったが。
「ハンバーグ。アスカが自分で食べたいって言ったんだよ。忘れたの?」
「忘れたりなんかしないわよ」
 テレビの前を陣取っているアスカと、テーブルと冷蔵庫の間に立っているシンジの間には距離が有る。アスカの位置からは買い物袋の中身までは見えない。
「……ファーストも、ハンバーグにしたの?」
「綾波は違うよ。肉類苦手だからって……付け合せのサラダだけ同じ物にしたんだ。この前食べた美味しいミート缶教えたら、パスタにするって言ってたよ」
 なぁーんだ、やっぱ肉食べないんじゃん。
 判りやすく頬を膨らませて再びテレビの方向を向くアスカ。角度的にも買い物袋の中に真剣な視線的にもシンジからは見えないが、ペンペンは見落とさなかったらしくアスカの顔を覗いている。
 ドラマが再開すると同時にシンジの足音が右横を通り過ぎた。少し間を置いてすぐに戻ってくる。どうやら鞄を置いただけで着替えはしていないらしい。アスカもドラマが気になって制服のままだ。
「晩ご飯何時位?」
「うーん、ちょっと時間掛かるかな」
「何でぇ?」
「これから作るからだよ。本当はあの湯煎するだけのヤツが良かったんだけど、思ってたよりも高くてさ。だから安売りしてたし、挽き肉から作ろうと思って……」
 そう言いながら緑色のエプロンを付けボウルの用意等の準備を着々と進めるシンジ。
「……よくやるわね」
「ミサトさんのお給料だけで3人……とペンペンが食べていくんだよ?余り無駄遣い出来ないから仕方無いよ」
「何でそんな所で言い訳してんのよ」
 アスカの言葉は蛇口から流れる水の音で掻き消されてしまった。手を洗っているのか、今朝そのままにした洗い物を片付けているのか。どちらにしても自分のやる事ではないが、男のやる事でもない気がしてくる。
「女々しいわね」
「んー?」
 先程より大きな声を出したが、それでも聞こえなかったらしく聞き返された。
「本当、シンジが女だったら鈴原と付き合えて、ヒカリに変な虫付かなくて丁度良いのにって言ったのよー」
 どうせ聞こえないと思い軽口を叩いた。返事が無い辺り本当に聞こえなかったのだろう。
 アスカにはそうなると次はシンジが子供な男子に……と苛々するかもしれない、と言う考えは出なかった。
 テレビでは顔立ちの良い男性が、先輩と呼び慕ってくる余り年の離れていないこれまた美しい女性の髪を撫でている。
 これ程綺麗で、尚且つ大人な男性ならば自分の髪に触れても良いかもしれないと思う。自慢したくて伸ばしているのとは違うが、赤くも見える綺麗な金髪を、泥遊びでもしていそうな男子の汚い手で触られるのは嫌だった。
「ハンバーグ以外は何?」
 蛇口を閉めたらしく水の音が消えてから、ドラマよりも夕食が気になってアスカが聞いた。
「ポテトサラダ」
「スープはぁ?」
「缶のヤツ買ってきたから温めるよ」
「そこを手ぇ抜くワケ?どうせまた安かったんでしょ」
 はいはい、の様な事を余り聞こえない声で言ったきりシンジから返事は無かった。
 意識をドラマに戻せば未だ先程の役者が仲睦まじくやっている。羨ましいとも汚らわしいとも思わないのは、それが作り物だからだろう。
 アスカは体の下のクッションをぎゅっと抱き締める。体とクッションに挟まれて赤いリボンタイが見えない所で解けた。

 夕食時には2人共私服に、寝巻きに着替えていた。どうせ風呂に入ってまた着替えるのだが、客人が来る事も無いのでしっかり着替える必要も無い。アスカもシンジも体に合っていない大き目のTシャツを着ていた。
 メインはハンバーグで、合計3つ作っていた。同じ大きさの物を2つ作って2人の皿に。もう1つは少し小さめで台所の皿に別に置かれていた。付け合せのサラダも台所に少し取り分けられている。流石にスープは食卓にしか無いが。
 ペンペンはハンバーグも食べられるらしいが、万が一の事を考えて魚を生で与える事にした。ミサトの居ない所で腹痛を起こされても困るので確実に安全な物だけを食事に出す様にしている。尤も、ミサトが居れば家族なのだから同じ物を食べないと、と言っていた所だろう。ペンペン自身もビールも飲めばつまみも食べるのだからハンバーグだって食べたかったに違い無いが。
「ご馳走様」
「お粗末様」
 2人きりの夕食は滅多に無い。何時も座る席が隣同士なので、わざわざどちらかがミサトの席に座る事も無く隣に並んで食べていた。故に食後の挨拶も隣から聞こえてくる。
 昨日と違って機嫌が悪くない、寧ろ自分好みに美味しい物を食べる事が出来て少し上機嫌なアスカは、言われる前に食器を重ねてキッチンへ運んだ。水を張るまではしないが、それでも食べたままにするよりは良いだろう。
「どうだった?」
「何が?」
「ご飯。ハンバーグ」
「美味しかったわよ。……た、多分ね」
「良かった。明日弁当に入れるけど良い?」
「良いわよ」
 ここに有るハンバーグと、そしてポテトサラダはその為かと思いながら尋ねる。
「……アンタ、今日もお弁当作るの?」
「うん。嫌だった?」
 首を傾げて尋ねる食事中のシンジにアスカは訝しげに答えた。
「嫌じゃないわよ。ただ……」
「今日も宿題無かったし。明日行ったら学校休みだから、暫く弁当作らなくて良いしさ」
「そ」
 短く答えながらもアスカは記憶を巡らせる。確か2時間目の数学で宿題が出された筈だ。
 覚えてないのかしら?やっぱり馬鹿ね。
 食事を続けるシンジの横顔を見ながら思わず笑い出しそうになるのを堪える。
「美味しかったわよ、ハンバーグ」
「本当?」
 笑いを誤魔化す為に言った様な物だが、思いの外目を輝かせそうな勢いでシンジは嬉しそうな表情を見せた。
「……普通作った食べ物誉められただけで喜ぶ?アンタ専業主婦とか向いてるんじゃない?流石に料理人になるには未だ未だだしね」
「主夫に向いてるって言われても……なりたくないよ。ならない為に、洗い物手伝ってくれない?」
「嫌よ」
 アスカの即答。そのまま食卓を横切ってリビングへ向かう。
「1人でやって主婦になりなさいよ。お風呂入れる?」
「……洗ったけど未だお湯溜めてない」
 歩みを止めて振り返ってアスカは声を少し大きくした。
「主婦も失格ね。お風呂の準備位しといてよ」

 安っぽい入浴剤で青緑に染まった浴槽。湯船の縁に左腕を置いて首を左右に鳴らす。
「やっぱお風呂って1番リラックス出来る時間と場所よね」
 漏らす独り言もすっかり日本語のアスカ。元から日本の血を受け継いでいる所為も有るのだろうか。
 湯につけていた右腕を上げ、白く細い腕を伸ばす。
 美しいか醜いかに分ければ10人中10人が美しいにアスカを分類するだろう。アスカは自分でそう思っていたし、それはあながち間違いではない。
 右手の指先を見る。コンタクトは使わないので親指の爪は余り短くしていない。薬指と小指の爪もかなり伸ばされていて、細い指にはとても似合っていると自覚している。
 人差し指と中指の爪だけは短い。掌側から見ると爪の白い部分は見えない。それでも少し伸びてきたかなと思う位アスカはこの2本の指だけは深爪していた。
 理由は1つ。この2本の指を使って自慰をするから。万が一自分の体内に入れる爪を伸ばし、体の見えない所を傷付けてしまっては困るから。
 別段自慰を恥ずかしい事だと思って自粛したりはしない。しかし他人にしていると知られるのはやはり恥ずかしい。
 左手も含めた他の指の爪はそれなりに伸ばしているのにこの2本だけは短いのは何故?と何も考えていないヒカリに質問された事が有った。忘れてしまったが、確かその時は適当に曖昧な事を言って誤魔化すと言うアスカらしくない事をした気がする。
 ヒカリは自分じゃしないのかしら……
 自慰をしている姿を想像するのは相手に失礼な事だと思い、それ以上は考えなかった。
 1人で……ミサトは加持さんとシてるから、1人でスる事無いのかも。
 そうだ、今この瞬間にも性行為をしているのかもしれない。本人や周りの人物にきちんと確かめたワケではないが、ほぼ確実に2人は一緒に居る。自分やシンジと言う子供の見えない所に居る。
 加持は女慣れしているからこそ、あの様に男らしく大人らしい態度をしているのだろう。だがそれは言い換えればアスカ以外の女性と肉体関係を持ったと言う事。
 アスカと加持が結ばれる日が来たとして、その時は他の女性を抱いた体で自分に触れるのだろうか?何よりも大切に守ってきた、自分以外の侵入を認めた事の無い秘部に、誰かを乱した物を受け入れる事が出来るのだろうか。
 温かな湯に使っている筈なのに、寒気がしてきた。両腕を湯に入れて自分の細い体を抱き締める。
「……耐えられない……」
 思わず口をついて出た。膝も寄せて体を丸くする。
 加持だけは特別だと思っていた筈なのに、やはり1人の男。馬鹿だ子供だと罵っていた自分と同年代の男子と何ら代わりは無い。
 サバッと大きな音を立てて立ち上がる。いつも通りに1番風呂だから次に入る人とペンギンが困るかもしれない、等とは考えていない為に湯が大幅に溢れ流れてしまう。
 リラックス出来ると思っていた筈の風呂の中が本日1番の不快所になってしまった。

 苛立ちも露にそのままアスカは浴室を出た。浴室近くの洗濯機の上に前もって置いておいた派手に真っ赤なバスタオルで体を拭いて、そのまま体に巻く。同色のハンドタオルで髪を適当に拭いて、そのまま髪をアップにする。
 髪に癖が付いてしまうから長時間していられないが、部屋に戻ってゆっくりドライヤーを使うので問題は無い。最初は洗面所にドライヤーを置いていたが、髪の長いアスカが何時までも使っていて次の人が入浴出来なくなり、結果自分の部屋に置く事になった。
 アスカが内側から風呂とトイレに繋がる洗面所のカーテンを開けると、マンションらしくダイニングキッチンでもある食卓にはペンペンも食事を済ませているので誰も居なかったが、すぐ奥にシンジが居る。長くて使い辛そうな菜箸で何か作業をしている背中が見える。やはり緑色のエプロンを付けていた。
「お弁当作ってんの?」
「うん」
 やっぱり忘れてんのね。
 弁当を作るのは強制ではないので、ネルフに行ったり宿題が有ったりする日にシンジは弁当を作らない。
 アスカも弁当が無いと文句は言うが、よく考えるとシンジが自分とアスカの分の弁当を作らねばならない義務は無い。だから考えさせない為にも絶対に作れとだけは言わない。
 こうして作っているのは、明日の5時間目までに提出しなくてはならない数学の宿題等綺麗サッパリ忘れているのだろう。今にも鼻歌を歌いだしそうな程妙に楽しそうに準備する後姿はアスカの笑いを誘う。
「泣き付いてきたら見せてあげなくもないわよ」
「何?」
 いきなりの独り言なのか自分に話かけたのか判らないアスカの言葉に左手に空になった皿を持ったままシンジが振り向いた。
「明日になれば判るわよ」
「だから、何が?」
 不思議そうにこちらを見ているシンジ。ふとアスカは自分がバスタオル1枚である事実を思い出す。しっかりと落ちない様に巻いているとは言え、同い年の異性がバスタオル1枚だけの姿に対してシンジの反応、無反応と言う反応は女性として無礼な言葉を吐かれた気がしなくもない。
「そうだ、アスカお風呂上りいつも牛乳飲むよね」
 言いながらシンジは皿と菜箸を置いて数歩歩くとすぐ有る冷蔵庫に手を伸ばす。
 半袖から伸びる腕は逞しさから程遠い物で性別が特定出来ない。足も同様にジャージ素材のハーフパンツから伸びる足は贅肉所か必要な筋肉すら欠いていそうな程細い。
 顔の作りも、髭まで蓄えて威厳の有る碇ゲンドウの息子とは思えない程に中性的な作りで、髪形さえ違えばパッと見女性に見えない事も無い。
「健康的って感じだけど、お腹痛くならない?」
 声変わりが訪れていない為どちらかと言えば高い声で、喋り方が子供臭い。これだけなら『馬鹿でガキな同年代の男子』とは思えない。
 冷蔵庫から2リットルの牛乳パックを取り出して、食卓テーブルに置く。そのままキッチンに伏せて置いてあるコップを1つ右手で取る。
 生活感溢れるシンジの仕草を見ながら、アスカは下ろした両手の位置に丁度有る自分の体を唯一隠しているバスタオルの下の部分を掴んだ。先程体を拭いたので湿っている。
「はい」
 シンジはコップ八分目辺りまで注がれた牛乳を食卓テーブルのアスカに近い位置に置いた。
 伸ばした腕の先に有る緑色のエプロンと青色のTシャツで見えない胸。14歳になればアスカまではいかなくても、女子ならばそれなりに膨らみを見せる。男子のシンジは当然膨らみ等欠片も無い。
 女性的に見えても、あくまで男。
 体の中心に有るのは、男性としての醜い象徴。
「……気ぃ利くのね。その気の利かせ方で鈴原位たぶらかしなさいよ」
 無愛想で感情のこもっていない、まるでレイを連想させる様な口調で、アスカは右手で乱暴にコップを持ち上げた。中の牛乳がほんの少し零れてテーブルを汚した。
「は?トウジ?トウジが、どうかしたの?」
「どうしたもこうしたも無いわよ!!」
 勢い良く右手に持っていたコップの中身を、シンジに向けて投げ付けるアスカ。当然の様に中の牛乳は全てシンジが頭から被った。
 空になったが透明ではなく真っ白い中身をしているコップを叩き付ける様にテーブルに置く。ガンッと言う音と共にテーブルが少し揺れた。だが、幸いコップは割れなかった。
「ヒカリは私の友達なのよ!?アンタや鈴原や、アンタみたいな馬鹿でガキで変態で最低な男の玩具にされるなんてゴメンだわ!ヒカリも、私も!!」
 大きく左右に首を振ると、激しさの余り赤いハンドタオルが落ちて長い髪が乱れる。未だ濡れている髪は靡かずに顔や首に張り付いた。
「アンタみたいな中途半端な男が……」
 目を見開いてシンジを睨み付ける。と、そこには驚いて何も出来ない、牛乳を被って固まっているシンジが、何度も瞬きをしてこちらを呆然と眺めている。
「あ、あの……」
 アスカの言葉が途切れたのを見計らってシンジが漸く声を出した。
「ゴメン」
 謝罪の言葉と同時に浮かべられたのは口元にだけのわざとらしい愛想笑い。
「何でアンタが謝るのよ」
 怒ったり困ったりするのが当然なこの状況で、適当に謝って適当に笑顔を繕う。そんなシンジの行動がアスカには理解出来ない。
「えと……何か、怒らせたみたいだから」
 当然アスカの意味不明な言葉と突然牛乳を掛けてくるなんて行動はシンジには理解出来ない。怒るよりも困るよりも先に、最近癖になってしまっている謝罪が出ただけだった。
「みたいだからって……そんなんじゃ、ないわよ」
 怒ってなんかいないと言い返そうとした。しかし顔の、特に目尻や眉間の辺りの筋肉が怒っている形相をしているのが判る。
「そう……なの?何か、有ったのかと思った……けど」
 俯き気味になったシンジの目が泳ぐ。どんなにアスカがシンジの目を見ていても、絶対に目が合わない。先程アスカがバスタオルの裾を握っていた様に、右手でエプロンの裾を握り締めている。
 シンジの髪にまで掛かっていた牛乳の雫がポタリと落ちる様が、音がしても良い程にハッキリと見えた。短い髪の下の顔も牛乳まみれだ。顔の左半分、特に鼻から下辺りはベタ付きそうな程に汚れている。そんな自分の状態を考えてか、きつく唇を噛み締めている。
 女々しい奴。
 アスカもアスカで言葉にならない。思っている事をそのまま言葉にしても会話になりそうも無い。
 昨日からどうにも調子が狂っている。ヒカリの態度が、トウジに向ける好意がどんどんとあからさまになってきたからだろう、と心のどこかでは気付いていた。
 そしてそれが原因でヒカリが自分から離れていくのが嫌なのだ。何故ならヒカリは大切な友達だから。日本に来て初めて出来た、唯一の友達。
 否、日本に来てからではない。考えてみればドイツに居た頃はこんな友達が居ただろうか?自分の小さくすぐにかき消せる悩みを真剣に考えて、相手の恋愛やら友情やらの可愛らしい悩みを相談してくれる友達なんて居なかった。家庭環境が悪化して母が絶命してから、エヴァのパイロットとして訓練を積み重ね、猛勉強をして大学を卒業して生き急いできた。だから当然友達なんて……居なかった。
 そんな大切なたった1人の友達が、自分とは全く違う汚い男子の手で汚されるとしたらどんなに辛いだろう。単純な想像が恐ろしい妄想となって昨日・今日とアスカを苦しめていた。自分で自分の首を絞めていた。
「何か嫌な事が有ったら言ってくれないと判らないよ……」
 漸くシンジが言葉を漏らした。言葉尻は消え入りそうだったが、ちゃんと聞こえた。エプロンを掴んでいない左手は握ったり放したりを繰り返している。
「お風呂の温度、合わなかった?その……いつもと変えてないんだけど」
 目を合わせないまま不安そうに尋ねてきた。やはり声が少し高くて、身を固くした姿も弱々しくて、男性的な印象が無い。
 そうよ、コイツが女になって、ヒカリと鈴原の間に立って、ヒカリを守れば良いのよ。なのにどうしてシンジは動こうとしないのよ。
「……アス……カ?」
 恐る恐るこちらを見てきた。漸く目が合う。
「怒ったわよ」
「ゴメ……」
「謝らなくて良いから、ちょっとこっち来なさい」
 下に落ちたハンドタオルを拾い上げ、バスタオル姿のままリビングへと抜けていくアスカ。
「こっち来なさいって言ってるでしょ?」
 振り向くとシンジは呆然と、顔だけはアスカに向けて同じ場所に立っていた。
「来なかったら殺すわよ」
 ほんの少し早口に言うと、シンジは慌ててエプロンを外してミサトがいつも座る椅子に掛け、軽く走ってきた。まさか本当に殺されるとは思っていないが、アスカは言葉通り怒っているのだと思った。
 どうして、怒ってるんだろう。
 理由は判らないまま、聞き出せないまま、牛乳まみれのままついていく。

 こっちと言ってシンジを連れてきた先は自分の部屋。
 滅多な事が無ければアスカの部屋に入らないシンジは不躾なまでにジロジロと辺りを見回している。元は自分に与えられた部屋が、女性らしいとはまた違うが、家具や小物で満たされた全く別の部屋に化けているのが面白い。
「着替えるからそっち向いてて」
「うん」
 シンジを窓から光の差し込むお気に入りの配置のベッド側に立たせ、そちらを向かせる。反対側に立っているアスカは部屋には不釣合いに大きいクローゼットを開く。中央より下の方に有る引き出しを引くと、外出着には出来ない露出の高いトップスがいくつも入っている。
 入浴前まで着ていた黄色い大き過ぎるTシャツをそのまま寝巻きにするつもりだったが、今から浴室の方まで戻るのは不格好なので、洗濯から戻ってきたばかりの水色のタンクトップを取り出す。
 バサッと音を立てて濡れたバスタオルを落とす。流石にその音にも性的な事柄に無頓着と言うか興味を余り示さないシンジにも良からぬ想像をさせたらしく、アスカは後ろから生唾を飲み込む音が聞こえた。
「シンジぃ、アンタちょっと牛乳臭いわよ」
「仕方無いじゃないか、拭いてないんだから」
「このバスタオル貸そっか?」
「い、いいよ!」
 慌てる声が面白くて、寝るだけなので下着を着けずにタンクトップを羽織ってすぐ振り向くと、予想通り後ろから見える耳が真っ赤に染まっていた。
 アスカが理由でそんな姿を見せるシンジと言う関係は我ながら微笑ましい。同時に男としての片鱗を見せられた気がした。それはアスカにとって余り微笑ましくない。
 クローゼット内の1番下の引き出しに下着が入っている。しゃがんで1枚取り出して履く。毎日やっている動作だが、後ろにシンジが居ると思うと妙に気恥ずかしい。……それもまた微笑ましくない。
 クローゼットを開けっ放しのまま、部屋の奥にまだ開けられずに置いてあるダンボールの方を見る。大きなダンボールには日本のクローゼットには入りきらない服が畳んで入れてあり、その上の半分位の大きさのダンボールには中学生として必要な教材や文房具を入れてある。持ち歩くのが面倒で、頻繁に使う物は学校に置きっ放しにし、余り使わない物は小型のダンボールに入れっ放しにしている。
 紙と紙がすれる様な音を立てながら上に乗っている小型のダンボールを開ける。自分で想像していた以上に適当に詰め込んでいて少し驚いたが、手を入れて探るとすぐに目的の物が掴めた。
「……アスカ?どしたの?」
 明らかに着替え以外の何かをしていると判断したシンジが声を掛けてくる。答えずにアスカは再びシンジの後ろに立った。今度は先程よりも近くに、密着する程近くに。
「腕、両方ともこっちに出して」
 思いの外声が近くから、真後ろから聞こえた事に驚くシンジ。
「え?」
 聞き返しても返事が無い。しかしこっちに出す、と言われてもどうすれば良いのかイマイチ判らず、両腕を後ろに突き出してみる。体の柔らかさが人並みのシンジは肘辺りまでしか上げられない。
「……こう?」
「それで……そうね、両手の指絡めて握って」
 何が目的なのか皆目見当も付かないが、言われた通りに自分の手で貝繋ぎをしようと試みるが、背筋が痛いので先程よりも腕を下ろす。
「これで良いの?」
 自分の腹のすぐ前に有るシンジの両腕を見下ろしながらアスカは小声で呟く。
「アンタって、本当に馬鹿よね」
 その手が自分の視界から見えなくなる様に先程取り出した物、ガムテープを目の前に出す。
 シンジの耳にバリバリっと何かを剥がす様な音が真後ろから聞こえた。何の音かは判らないが、妙に恐怖を誘う音が。
「な、何!?」
 慌ててシンジが首だけ動かして後ろを見ようとする。
「見ないで!」
 と、同時にアスカの大きな声。
「着替えてるのよ」
「そ、そうだよね、ゴメン……」
 顔を前に戻し、再び先程の体制に戻った。明らかに着替えとは関係無い音だったが、シンジは無理矢理着替えの途中の音だったと割り切る事にした。事実アスカは未だタンクトップと下着1枚だけ。当然後ろを向ききらなかったシンジは見ていないが、もし見ていたらまた謝罪の言葉を口にしなくてはならなかっただろう。
 急にシンジは左腕の自由を奪われた。アスカが後ろから強い力で肘の真下を掴んできた。
「わっ!?」
 そしてその左手の手首に冷たい感触がベタリと張り付く。
「何!?」
「ガムテープよ」
 嘘を吐かずにアスカはそのガムテープでシンジの左腕と右腕をグルグル巻きに固定する。
「ちょ、な、何、何が……」
 5周巻いて千切り、ガムテープの使っていない方を左手で部屋の奥のダンボールが有る方に投げ捨てた。右手はしっかりとシンジのガムテープで固定された両手を押さえている。
「ガムテープで、し、縛ったの!?そんな事しなくても、着替えてる所なんて見ないよ!」
「別に良いわよ、こっち見たって。もう着替えなんて終わってるわ」
 かなり力強く掴んできていたアスカの右手を振り解いて、シンジは後ろを向いた。その拍子に足がベッドにぶつかって擦り傷を作ったが、それ以上にガムテープを巻かれた腕の方が痛い。
「どうしてこんな事す……」
 言葉を続けられなかった。アスカが右足を高く上げ、シンジの腹部を蹴り付けてきた。
「かはっ」
 見事に鳩尾に命中し、苦しそうな声を上げてそのまま後ろに倒れ込む。幸い後ろがベッドなので背中を強打する事は無かったが、当然ベッドは横に置かれているので頭までは受け止められず、後頭部を窓の縁にぶつけてしまった。
 腹部と二次災害の後頭部の痛みで声が出せないシンジ。腹や頭を押さえたいが両腕が自分の下敷きになる様に背中に纏められているのでそれすらも叶わない。
「シンジ、女の子になって」
 はぁ?と聞き返したいが、痛みが邪魔をして声が出せない。
「そしてヒカリを守るの。ヒカリが私を置いていかない様に、ヒカリが私の友達を辞めない様に」
 シンジの為でもヒカリの為でもなく、アスカ自身の為だけに。
 無表情に近いが、ほんの少しだけ苛立ちが口元に見えるアスカの顔。その下には成長途中の胸によって押し上げられたタンクトップと、そのタンクトップに隠されて少しだけ見える女性らしい下着。下から見上げているので酷く扇情的だ。
「あ……」
 漸く声が出たシンジだが、言葉にならなかった。縛られたり蹴り倒されたりしても尚、アスカの姿が女性的でいやらしく見える。
 そんなアスカが屈んでシンジの両足を持ち上げた。両足はベッドの足を置く側に乗せられ、シンジはされるがままベッドに寝かされてしまった。
 抵抗しなかったのは無意味だと判っていたから。そしてぶつけた後頭部が柔らかな枕の上に乗せられた事で少しだけ痛みが引いた気がしたから。柔らかければそれで良いというアスカの枕選びのセンスを今までで最も感謝した。
 両腕をシンジの肩の隣に置いて、両膝はシンジの腰の辺りで曲げて、アスカがベッドへと覆いかぶさってくる。普段アスカ1人しか乗せていないベッドがギシリと嫌な音を立てた。
 シンジの視界がアスカだけになった。顔が、アスカの唇が近付いてくる。が、口付けをされるのではなく、唇はシンジの右耳に微かに触れた。
「アンタ馬鹿だからミルクの匂いしかしないわ。……違うわ、アンタじゃなくて男が馬鹿なのよ。ちっとも男に見えない癖に、中途半端に男だからいけないのよ」
 両足と細い左腕1本でそのままの体勢を崩さずに右腕を伸ばして、シンジの履いているゴムウエストのハーフパンツに手を掛ける。
「な、何するんだ!?」
 いつもより掠れた声を荒げるシンジ。
「煩いわねぇ」
 耳元で叫ばれた事に苛立ちながらアスカは体を起こした。そしてハーフパンツに左手も添える。
「ね、ねぇ、止めようよ?や、止め……」
 恐怖なのか何なのか理解出来ない感情とガムテープに邪魔されて足が動かせない。シンジは必死に唯一動かせる頭を左右に振り続けた。
 その甲斐虚しくハーフパンツは造作も無く膝下まで下げられた。
「……最ッ低」
 呟いたアスカが見たのは牛乳よりも透明に近い液体で下着の中央部分を汚しているシンジの下半身だった。

 羞恥心だけでシンジの目から涙が零れる。アスカはそんな泣き姿をシンジの足元に座って見下していた。
 起き上がれないのだから体は平坦に見える筈なのに、体の中央部分だけが緩やかにだが隆起しているのが見える。
「何で男ってどうしてそうなのよ。蹴られて縛られて興奮するって、本当変態じゃない!」
「違うよ……」
 言葉の最後にグズッと鼻を啜る音が聞こえた。必死に涙を堪えている様だが、結局は流れている。
「何が違うのよ」
 呆れた……と言うよりは不貞腐れた様にぼやいてアスカは右足でその勃ち始めている部分に触れてみる。汚い物を踏みつけるかの如く嫌そうな表情で。
「んぅっ!」
 同時に甲高い声が聞こえてきたので思わずアスカは肩をビク付かせた。
「な、何よ……もしかして、気持ち良いの?」
「違うよ!ち、違う……痛かったから、それだけだよ!」
 素早く否定してきた声もどこか上擦っている。
「本当にぃ?」
 侮蔑を含んだ声音で問いながら、右足にゆっくりと力を込めて押してみる。
「……っ……」
 息を呑む声がシンジから聞こえた。本当に痛みに耐えているのかもしれないし、やはり興奮しているのかもしれない。声だけでは男性に対する経験の乏しいアスカには判らない。
「どっちなのよ」
 押し付けては離す行動を数回繰り返してみる。足の裏に伝わってくる生温かい物体が徐々に固さを覚え、尚且つアスカの足に存在を誇示する様に勃ち上がってくる。
 10回は繰り返した辺りから、シンジの息遣いが変わってきた。アスカの足が動くのに合わせる様な呼吸をしている。それも、かなり荒い。
「……恥ずかしい奴。私アンタの蹴ってるだけよ?」
 罵倒するとシンジの息を吸う音が大きくなった。アスカの位置からは見えないが、きつく目を瞑っているらしい。
 アスカは一旦右足を離し、両手を腰の後ろに置いて体を支えた。そして両足で先程よりも更に天へと向いているシンジの下着の中央部分を両足で包んだ。
「あっ!」
 左右から人間の肌に包まれる感触に驚いてシンジが声を上げる。ぐっと体をうねらせるが、両腕を纏めて固定されて更に自分の体の下に敷いているので上半身は起こせない。
 潰す様に足と足の間を詰めていく。足の裏に有るすっかり固くなった未発達の為太さが足りない棒が、音が聞こえそうな程に脈打っているのが判る。
「ねぇ……止めてよ、アスカぁ……」
 言葉では終了を求めているが、その声音はどう聞いても継続を求めていた。それ程までに甘ったるく、男性とは思えない声。何故かアスカは背筋に何かが走り去る感覚を覚える。
「こうして欲しいの?」
 アスカは何に対しても天才と呼べる才能を持っていたのか、器用に両足を上下に動かす。
「んぅ、嫌だぁ……」
 吸う息も吐く息もどんどん大きくなる。途切れ途切れに聞こえる甘い声がアスカの息までも荒くさせていた。
「何が嫌なのよ?嫌なのは私の方よ、こんな、こんな汚い物足で擦らせられちゃってさぁ……」
 このままでは下着を破りかねない程大きくなってきた物体が余りにも熱く、足の裏を火傷してしまうかもしれないとアスカは足を離す。
 突然少し痛々しい快楽が消え、シンジは驚いた。が、更にアスカの取った行動に驚く羽目になる。
「ちょと、アスカ!」
「窮屈そうだから出してあげるのよ」
 先程ハーフパンツを下ろした時の要領で下着にまで手を掛けてきた。
「だ、駄目!それは駄目!今は駄目ッ!!」
 お願いだから、と何度も駄目と言う単語を繰り返したがアスカは聞き入れず、一気にずり下ろす。
「え……」
 声を漏らしたのはアスカだった。
 膨張し過ぎた物体に1度引っ掛かったが、両手は後ろにガムテープで固定されているので抵抗されずに下ろす事が出来た。膝下のハーフパンツに重ねられた下着が隠していたのは、アスカが生まれてこの方見た事が無かったグロテスクな物体。
「何よ、これ……嫌!」
 普段自分を慰める際に使っている玩具に似ている事は似ている。形は太さが足りず長さが増えた程度でほぼ同じだ。しかし、色合いも浮かんで見える血管も全く違う。漸く外気に触れられて喜ぶかの様にピクピクと動く姿も違う。
 ギシッとベッドが音を立てるのにも構わず、アスカはベッドの上に立ち上がった。
「もう止めてよ、助けて……」
 そんなに天井が高くない部屋なので立ち上がると頭をぶつける危険が有ったが、幸いアスカの身長では大丈夫だった。
 立ち上がるとシンジの全身を見下ろす事が出来る。切なそうな表情を浮かべる幼い顔立ち、牛乳で汚れてベタ付くTシャツから伸びる細い首や腕、意外と日焼けをしているのか露出部分に比べると少し白い太股、そして陰毛すら生えていない子供の陰部。胸さえもう少し膨らませれば少女として見ても許されそうなのに、相反するグロテスクな性器。
「有り得ない、アンタには有り得ないわよ!」
 消してしまおうとシンジの性器を目掛けて左足を下ろすアスカ。踵が付け根に程近い部分を踏みつけた。
「ああぁっ!!」
 アスカの左足の裏がドクンと足を持ち上げる程に大きく震えた。
 一際甲高く大きな声を上げたシンジはそのまま射精した。どれ程自己処理をしていないのか、勢い良く吹き飛んだ白濁液はシンジ自身のTシャツ、その上の顔までにも飛び散った。
「ほ、本当に……出た……」
 呟いてアスカがそっと左足を離すと、そこには先程より大分萎縮してしまったが未だ熱を持つ物体が見える。自分が足で牛乳よりも透明な、しかし匂いのキツイ液体を吐き出させたのかと思うと体の力が抜け、ペタリとベッドの上に座り込む。
「あぁ……しょっぱい……嫌だぁ……」
 恥ずかしさや悲しさではなく、悔しさでシンジは涙を零した。顔に飛んだ精が大きく開けていた口にまで入ってしまった。鼻のすぐ近くにも飛んでいるので、否応無しに自分が吐き出した匂いが感じられる。
「じ、自分の顔に掛けるなんて、馬鹿みたい!」
 シンジのか細い言葉に自分を取り戻した、自分自身を取り戻そうとしたアスカ。
「どんな事になってるか鏡見てみる?恥ずかしいったりゃ有りゃしないわよ」
 ベラベラと早口でまくし立てるアスカに、シンジは何も言えない。涙を止める事も出来ず、鼻を鳴らすのを止める事も出来ない。
「何よ、何か言ったらどうなのよ。男のクセにたーだ泣くだけなんてさ。……そうよ、男じゃなくしてあげるわよ」
 ベッドからぴょんと跳ねる様に降りて学習机の1番下の引き出しを漁るアスカ。乱暴に入っているがどこに何が有るかは判る。しかしこの場合どれを取り出せば良いのかが判らない。
 これが1番相応しいかもしれない、と思い取り出したのは皮肉にもシンジが専属パイロットになっている初号機の、自然には存在しない紫色とよく似た色の性玩具。
 右手にしっかりと握って机の引き出しを開けっ放しのままベッドを見ると、シンジはすっかり泣き止んでいた。少し嫌だったが下半身に目をやればこちらもすっかり萎えきっており、この小ささでは無毛なのも手伝って生まれたての赤ん坊のそれが少し大きくなった程度にしか見えない。
「ねぇ、ガムテープ剥がしてくれる?」
 憮然とした喋り方で尋ねる……のではなく、頼んでくるシンジ。先程の弱々しい少女めいた声音ではなく、普段通りの口調なのがアスカには苛立たしかった。
 何コイツすかしてんのよ。さっきまであんなにヤラしい声出してたクセに。
 それでもシンジはやはり吐精後だからか体に、特に足には力が入らないらしく自分から動こうとはしないでいた。
 再びベッドに乗り、アスカは先程の様にシンジに覆い被さった。
「誰が剥がすモンか!」
 顔を近付けて大声で言い放つ。……が、シンジは先程の様に怯えない。
「何がしたいのか知らないけど、もう気が済んだんじゃないの?」
 少しでもこちらが機嫌を悪くしていると目を合わせようとしない筈のシンジが、臆する事無くアスカの目を見て言った。
 死んだ魚の様な目で。
「何……よ、何よ!どうでも良い事言ってんじゃないわよ!」
「こんな事されてるんだから、どうでも良くなんかないよ。第一アスカが何か言えって言ったんじゃないか」
「煩いわね!」
 右手に持っていた性玩具をシンジの左頬に力強く押し当てて喋る事が出来ない様にする。
「どうでも良い事は鈴原に言いなさいよ!ヒカリ1人守れないアンタに用は無いんだからね!」
 紫色の性玩具を再び離してシンジの腰の辺りに置く。アスカはシンジの両足の間に入り、ハーフパンツと下着を取り去った。そして両方の膝を持ち上げた。
「ちょっ!?」
 漸くシンジの慌てる声が聞こえた。何故かそれが嬉しくて堪らないアスカは口の両端をニヤリと上げる。
「今からこのアスカ様がシンちゃんを女の子にしてあげまーすっ」
 芝居がかった口調のアスカが自分の足と足の間からわざとらしい作り笑顔を覗かせている。
 シンジは最早嗅ぎ慣れてきている牛乳の匂いと、未だ耐えられそうにない精の匂いに困惑し、再び不安そうな表情に戻っていった。

 持ち上げた膝をそのまま体の方に折り畳む。そのままシンジの太股に手を滑らせて、苦しそうな体勢のまま固定する。やはり体育の授業でも露出しない部分は肌の色がとても白い。
「ね、ねぇ、恥ずかしいよ……」
「そうね、恥ずかしいわね、こんなにしちゃってるもの」
 両方の太股の間にある性器が先程の萎えきった姿から、ほんの少しだけ勃ち上がっているのがアスカにはしっかりと見える。出したばかりだからか、挿入には不十分な大きさにしかなっていないが、無反応とは全く違う。
「それに私からはここもよく見えるわよ」
 アスカがほんの少しだけ顔を下げる。苦しい体勢の中無理矢理頭を起こしてアスカを見ていたシンジにも、性器の下の排泄器官を見られている事が判った。
「な、ど、どこ見てるんだよ!」
「どこだと思う?」
 目を細めるアスカ。興味はシンジではなくシンジのその器官だけに向いている。
「言ってみなさいよ、私がどこ見てんのか」
「言え……ないよ……そんなの言えないよ……」
 恥ずかしそうにシンジが言葉を口にする毎に排泄器官がヒクヒクとこちらでも喋る様に動く。
「男も女もこっちの作りは変わらないのね」
「そんなの知らないよ!」
 喋るのにも自分の足の下に居るので苦しく、下腹部に力を入れてしまう。そうすればやはり排泄器官がヒク付く。
 体内にとって不要な物を出す部分であるにも関わらず、他人の排泄器官を見ているアスカはちっとも汚いと感じていなかった。自分で見た事は無いので比べられないが、シンジのその部分は綺麗でどちらかと言うとアスカの性器を連想させる。
「似た様なモンなのかしら」
 更に太股の尻に近い部分に手を滑らせて顔を近付ける。意識せずとも鼻孔に独特の匂いが漂ってきた。アンモニア臭やアスカに掛けられた牛乳ではなく、先程放った精の匂い。嫌悪感が込み上げる程ではなかったが、生涯好きになれそうには無い匂い。
 アスカはその独特で強く、そして青い匂いに理性がどんどん掻き消されていく。気付けば舌を伸ばしていた。
「あっ、あぁあアスカぁ!?」
 突然の感触。アスカの顔の位置から何が起きたのかはすぐ判った。だが、信じられない。余りにも非日常的で、そしてアスカがするとは思えない。
 名前を呼ばれても返事をせずに、アスカはシンジの排泄器官を舌で弄っていた。
 アスカは愛撫するのでも慣らすのでもなく、ただ興味本位で舌を伸ばした。どんな感触がするのか、どんな味がするのか、そしてシンジはどんな反応を見せるのか。
 細い舌でも穴の中にまで入るのはなかなか難しい。しかし舌で周りをなぞるだけでシンジからは充分な反応が有った。
「……ん、うっ……んぅ……」
 必死で声を殺そうとしているので時折しか聞こえてこないが、充分にシンジの状態が判る。感じているというよりは困惑している様子だが、それでもただ舐めているより余程楽しい。
 どうしてもこの排泄器官の中にまで入りたい、と自分の舌が言っている気がしたアスカは顔をもっと近付け、そして唇を押し当てる。
「……だ、駄目だよ……」
 漏らす否定の言葉すら息が上がっていて拒まれている気がしない。
 アスカが押し当てたままの唇を開くと、ほんの少しだが一緒にシンジの排泄器官が開かれる。その微かな隙間に無理矢理舌を押し入れた。
「やっ、だ、駄目だってば!あ、そ、そんなぁっ!!ふぅんっ……」
 上擦った声を上げた後にシンジは体を強張らせて黙り込む。アスカの舌は窄められた穴の中で必死に左右に動かした。
 排泄器官の中は妙にヌル付いていた。当然こんな部分に舌を入れた事等無いので普通なのかシンジが可笑しいのかは判らない。1つ判るのは舌に伝わる感触がそんなに嫌な物ではない事。
 スッと強く息を吸うとますます穴が窄まり、舌の付け根に意識して唾液を溜めてから流し込むとシンジの力が抜けて舌を潰そうとする筋肉が柔らかくなっていく気がした。
「もっと声出したら。女の子みたいに高い声出して、女の子になっちゃいなさいよ」
 顔が離れるとアスカの唾液で濡れた排泄器官が外気で冷やされ、再び体を硬直させるシンジ。
 アスカが顔を離してシンジを見ると、再び性器が勃ち上がってきている。それでも少し上向きになっているだけで、先程精を出した時のグロテスクさは未だ無い。
 更に強くシンジの左足を前に押しやり、アスカは自分の右肩に太股を乗せた。そして空いた右手で先程置いておいた性玩具を取る。親指でスイッチを押すと起動して卑猥な動きを見える筈……だったが、妙にゆっくりとした動きしかしない。
 電池切れてんのかしら。
 思い返せばずっと電池を交換していない。忘れていたのは最近これ以外の性玩具しか使っていなかったからだ。ベッドに入ってからしようと思った時には道具を使わず自分の指だけの時も有り、最近は専らそうしていた。
 多少動きが鈍くても今ここでシンジの足を解放するワケにはいかない。スイッチを切って唐突に秘所に突き刺した。
「イッ!?」
 突き刺した、つもりだったが入らなかった。多少アスカの唾液で濡れているとは言え、普段は物を入れるのではなく出す所、そしてこの性玩具を入れる本来の部分とは全く違う部分なのだから、入らない事こそ至極当然だった。
「どうしてよ!」
 それが不服なアスカは何度も突き立てる様に押し付け続けたが、一向に入る気配は見せない。シンジの口からは先程の快楽の混じった息ではなく、痛みに耐えかねた声だけが何度も短く漏れる。
 悔しさに叩き付ける様に性玩具を置いてアスカは右手の人差し指と中指を同時に自分の口に咥え込んだ。
「うぐっ……んぅむ……」
 勢い余って喉の奥を少し付いてしまい、微かに嘔吐感が込み上げたが堪える。
 2本の指で舌を挟み唾液で湿らす。自慰に耽る際には自分の分泌液で充分に事足りていたのでこんな事をするのは初めてだ。
 最初の失敗で少し苦しかったが、慣れれば面白い気もしてくる。舌に集中すれば細く骨っぽい感触が判るし、指に集中すればぬめりの有る柔らかい肉の感触が有る。
 ふと視線を感じてシンジの顔を見ると、涙を流しそうな程に潤んだ瞳でこちらを見ている。
 口から2本の指を抜き取って、舌を伸ばしてシンジからも見える様に舐めてみる。舌先も、舌の側面も使って器用に舐める。
 こちらを見ているシンジの息遣いがどんどん荒くなる。先程性玩具で敏感に出来ている部分を痛め付けられたのにも関わらず性器も益々存在を大きくしている。天才と持てはやされてきた自分にこんな事に関する才能まで備わっているとはアスカ自身も思っていなかった。
 自分の指や舌に興奮しているのか、シンジからの視姦に興奮しているのか、アスカも息が荒くなってきた。もしもこの場にシンジが居ないのなら、この状況でないのなら、間違いなくこの2本の指を自分の性器に乱暴に押し入れて大声を上げながら自慰をしただろう。
 両の指の付け根までしっかりと舐めきって唾液で汚らしくなった所で、再びアスカは屈んでシンジの秘所に顔を近付けた。
 排泄器官にそっと人差し指を当て、入り口をゆっくりと円を描く。指の動きに合わせて口を閉じても鼻から息が漏れるシンジ。
「んぅんっ……しぃよぉ……」
 苦しそうに、そして切なそうにシンジは必死に何か言おうと口を動かした。肩を震わせて自分の背に敷いているガムテープで固定された両腕も必死に動かそうとしている。
「……もど……かしい、よ……」
 もどかしい?
 アスカは必死に頭の中に有る日本語の形容詞を探すが見付からない。何を意味するのか理解出来ない。しかしシンジの声音からすると嫌がっているとは思えなかった。
「もしかして……挿れて欲しいの?」
 返事は言葉では来ない。しかし甘ったるくつらそうな、シンジの言葉通りもどかしそうにしている息が続いている。
「今女の子にしてあげるわよ」
 躊躇い無くアスカは人差し指1本をシンジの排泄器官に挿れた。
「あぁっ!」
 ぬるりとした感触が有り、すぐに付け根まで入った。
「こんな風になってるんだ……」
 指を折り曲げない様に肘だけを動かして人差し指を出し入れしてみる。手前が妙に湿っているのは先程の自分の唾液だとして、舌が入らなかった奥の方もぬめっている。生温かく、人間の体の中に入っているのだと実感した。全然鍛えていない印象のシンジの細い体付きを見ながら、腸内には強い筋肉が張り巡らされている感じがする。指を締め付け、そして中から追い出そうとしているのが判る。
「……意外とあっさり入るモンなのね」
 シンジは眉間に皺を寄せて声を殺していた。入った瞬間の痛みはもう無いが、便意をもよおした時とは少し違う感覚が排泄器官に有る。意識をそこに集中させるとそれが快楽に近い物の気もしてくる。
「アンタもしかして、1人でヤる時こっち弄ってる?」
 何気ない質問をした直後、急に指が先程までの何倍も強く締め付けられた。
「図星?随分楽に入ったけど、こうやって1人でヤッてるのかしら?」
 声を掛ける度にきゅうきゅうと締め付けてくる感触がアスカにとっては堪らなく気持ちよかった。きっとシンジも気持ち良いから締め付けてくるのだろうと勝手に思う。
 くぃっと指を折り曲げるとシンジが短い悲鳴の様な声を上げた。声変わりしていては聞く事が出来ないだろう高さが他に音の無い部屋に響く。
「そう……ここが良いのね」
 中で半回転させて指の腹が真上になる様に向け、そのまま腸壁をゆっくり優しく擦ってやる。
「駄目、あ……駄目、だめ……だめらめ、あぁ……駄目、あ、あぁっ!駄目ッ!」
 擦り付ける速度を上げれば上げる程シンジの声が大きくなっていく。その反応が面白くて更に擦る。
 アスカの人差し指の長さでは前立腺には触れられないが、性器に近い場所を擦られると否定しがたい快感に声を出してしまう。
「何が駄目なのか言ってみなさいよ」
 人差し指をゆっくりと、しかし全て出てしまわない様に引き抜く。後少しでも肘を引けば排泄器官から離れてしまう位置まで引き抜いて、唾液が未だ乾いていない中指を人差し指に添えた。
「言えないの?」
 先程同様躊躇の1つも見せずに2本に増やした指を挿れる。
「痛いぃっ!!」
 今度は少しだけ指が進みにくかった。第一間接と第二間接が穴の入り口部分に引っ掛かってしまったらしい。が、気にせずに付け根まで押し込んだ。
「痛い?嘘でしょ、どうせ気持ち良いんでしょ」
 今度は肘だけ動かす様な真似はせず、最初から指の腹で腸壁を強く擦る。
「あっ痛ぁっ!痛い!いっ……んっあっ……んぁ……」
 余りにも痛いと繰り返していたので指の動きを変えると、すぐに声色が変わった。付け根を入り口で固定して指の先で円を描く様に回すと荒く深い呼吸と媚びているとも受け取れる声がシンジの口から漏れる。
 アスカとしてはやはり指の側面よりも腹部分で腸壁に触れたい。あの独特のぬめりと硬さは腕1本突っ込んで堪能してみたい位だった。ぐるぐると指を動かすだけではこちらは面白くない。
 シンジの顔を覗き見ると、真っ赤になって目を閉じていた。その表情は人間にとって見られたり触れられたりするのは羞恥に値する部分を弄ばれて苦痛に耐える顔ではなく、その部分に意識を集中させて快楽を得ている顔にしか見えない。
 アスカは舌打ちを1つして指を勢い良く引き抜いた。
「痛ぁいっ!!」
 今までの喘ぎ声よりも低い声を出したシンジを、立ち膝になって再び性玩具を手にしたアスカは見下ろした。
 幼い顔と華奢な体と高い声と。後は下半身に男性器を受け入れる部分が有れば、自身に男性器が有る事を除けば完全に女性になる。
 流石に性器を切り落とす様な真似は出来ないが、今女性にすればトウジと関係を持たせて、親友のヒカリを失う事が無くなる。
 迷う必要は無かった。上半身をゆっくりとシンジに近付ける。そして右手で持った性玩具をシンジの排泄器官に押し当てる。
「っ!?」
 ひんやりとした感触が先程まで性感を与えられていた場所に触れて驚いて目を見開くシンジ。視界は少し離れた中央にアスカの顔、そして左右をアスカの長い髪で覆われている。
「今度はちゃんと挿れるわよ」

 排泄する時の感触に酷似しているが、やはり違う。逆に物が入ってくるのだから。
「ぐ、んぅ……」
 先程とは比べ物にならない痛みが有る筈なのにシンジは抵抗してこない。苦しそうな呻き声は漏らすが拒絶的な言葉は吐かない。
 指の何倍も有るので当然の様に進みが悪い。ずるりと言う変な音を立てて1番太い部分を挿れる事が出来た。
「入るじゃない……」
 未だ半分も入っていないのだが、残りは今入った部分よりも幾分細いので何とかなりそうだ。
 挿入した部分を見てみると、先日鏡で見た自分の性器とは違い、しっかりと性玩具を咥え込んでいた。排泄しようとしているのだろうが、その力が性玩具を締め付けている様に見える。
「……もう、も……う、良い……?」
 シンジが苦しそうな息の中尋ねてくる。答える代わりに途中までしか入っていなかった性玩具を更に深々と突き刺した。
「ああぁぁぁっ!!」
 見えないが、アスカの後ろに伸ばされているシンジの両足の指先にまで力が込められた。
「何が良いの?……ねぇ、何が良いのよ!」
 感情的に怒鳴り付けたアスカは性玩具を激しく引き抜いた。しかし尤も太い部分でガクンと腕が止まって抜け切らない。
「アンタもすっかり女の子ね。挿れられる側なのによがっちゃってさ!これ抜けなくなってるわよ!」
 最奥まで突き刺して抜ける所まで引き抜いて、それを何度も激しく繰り返してみる。
「んっんっあっやっ……あっあっ」
 アスカの動きに合わせて声を上げるシンジ。手を止めれば深く呼吸をし、再び突き刺せば悲鳴に近い喘ぎ声を出す。
 声だけではなく、手の中の性玩具の動きも面白かった。突き刺す時には抵抗が少ないのに対し、引き抜く時は倍位の力を入れなくては動かない。
 意識しているが反対になってしまったのか、はたまた意識して引き抜かせまいとしているのか。もしくは無意識の内に欲しているのか。もし後者2つなら、アスカは考えただけで笑みが零れた。何故か判らないが口元がニヤ付いてしまう。
「アンタばっかり気持ち良くよがるなんて狡いわよ。女の子同士、仲良くしましょ」
 深く刺した所で手を離しても性玩具は抜け落ちてこなかった。その隙に体勢を変えて大きく股を開き、手で掴んでいた部分にアスカは自分の股間を、性器を下着越しに押し当てた。
 無理矢理腰を押し進めると、最早すっかり挿れられる事になれたのかずぶずぶと淫猥な音を立てながら性玩具は入っていく。下着も履いているし、ろくな愛撫も受けていないのでアスカの性器には当然入らない。
「あぁあアスカぁ……」
 しかし外性器に押し当たって性感は充分に得られた。誰も触れていないのにシンジの上ずった声によってアスカの外性器は下着の中でぷっくりと腫れ上がっていた。
「いい?鈴原とも……こうするのよ……そして、ヒカリ、を……守り抜くんだから……ねぇんっあぁ……」
 腰をシンジの尻に擦り付けるとアスカの下で体をくねらせる。腰を離せば人体の勝手な作用で押し出されてきた性玩具がアスカの外性器を押し付けてくる。
 強く押し付ける事は可能だが、すぐには戻ってこない。じれったくなったアスカは右手で性玩具の側面を探って見付け出したスイッチを、シンジの最奥に入っている状態でオンにした。
「あああぁ、ああぁぁアァアアァァ、アァッ!!」
 やはり電池の消耗が激しく余り激しい振動はしなかったが、それでもシンジには今まで感じた事の無い感覚、快感なので大声を上げる。
「はぁ、あぁあ良い!イイ!!ね、良いわ!」
 自分の外性器に来る振動もやはり普段とは違って緩やかだが、自分の下にシンジが居て喘いでいる事実だけで既にアスカは興奮状態にあった。同じ様に声を大きくして、ふと視線を下へと向ける。
 何これ……何、なの!?
 襲い来る快楽の中が興醒めする事は無かったが、アスカは再びシンジの性器が再び膨張しているのを見付けた。それも精を出す直前と同じ様に大きく赤黒くなっており、更には先端から液体を滴らせている。
「本当に良いみたいね、アンタ……」
「アッアッ!んあっんぅ……イイ!駄目だよッ!もう、もう駄目だよぉッ!!」
 シンジの声がスイッチを入れた辺りから違う。羞恥も何も無くしてただ叫んでいるだけになっている。
 アスカには判らなかったが、丁度互いの体が触れる程に性玩具を押し入れると、1番太い部分がシンジの前立腺に触れていた。その状態で性玩具自体が振動し始めたので理性が一気に吹っ飛んでいた。
「ははっ、良い、良いわよシンジ!良いわ!んあぁっんぅ!」
 それがアスカにとっては都合が良かった。感じているのなら本能に任せて大声を上げた方が何倍も気持ち良くなるに決まっている。日本で暮らす様になってからすっかり声を殺してしか自慰が出来なくなっていたが、こうして声を出している方が断然気持ち良い。
「イキたい、ねぇ、イキたいぃっ!」
 言いながらアスカはシンジの髪を両手で掴んだ。倒れ込んで既に汗で濡れたTシャツに同じく汗で濡れたタンクトップを重ねる。
「あっ!はっンッ!駄目、だめぇッ!!」
 急にアスカの腰が何者かによって更にシンジの体へと押し付けられた。会話にならない言葉しか返してこないシンジが両足でアスカの腰を抱えて引き寄せていた。
 その直後、2人共同時に言葉にならない大絶叫を上げて絶頂へと達していた。
 アスカはそのままシンジの体から右横の壁側に崩れ落ち、ほんの一瞬意識を手放した。意識が戻ると同時に、自分ではどうしようもない程下半身を中心に体が痙攣していた。
 シンジも同じく達し、触れられた時とは違って押し出される様に最初に出した時より薄い精をドロドロと垂れ流して再びTシャツを汚していた。
 そんな中2人の間に有った性玩具は遂に電池が切れて動きを止めていた。

 痙攣が治まったアスカは立ち上がり、ふら付きながらも文房具を入れていたダンボールまで歩き、そこから挟みを出した。
 次は何をされるかと怯える事も出来ずぼんやりと絶頂から抜け出せないで居たシンジをうつ伏せにし、ガムテープを切ってやった。
「……あ、ありがと、アスカ」
 叫び過ぎてすっかり掠れた声でお礼を言われてしまい、アスカは何と返して良いか判らなかった。取り敢えず挟みも投げ捨てていたガムテープもダンボールに戻し、それからシンジの排泄器官に挿れていた性玩具も抜いて、適当にティッシュで吹いて机の引き出しに投げ入れた。
「あの……さ」
 上半身を起こしてベッドの上に座り込み、胸元で自由になった両手を動かしながらシンジが尋ねた。
「委員長と何か有ったの?」
 声は掠れているだけではなく小さかったが、学習机の前に座り込んでしまったアスカにも聞こえた。
「何かって?」
 振り向かずに聞き返す。シンジもアスカの横顔を見るのは止めて前を向いた。両腕も力なく下ろす。
「そりゃ、判らないけど……ずっと委員長の事言ってたから。トウジの事も言ってたみたいだけど」
 正確な所は余り覚えていないが。
「アンタ、さ……もし鈴原がヒカリの事好きだったらどうする?」
「え?好きって?」
「もしもの話!」
 漸くシンジの方を見たアスカだが、こちらを見ていなかったので自分も再び視線を前へ、いつもと何1つ変化の無い学習机へ向けた。
「もしも鈴原がヒカリの事好きで、2人が付き合い始めたらどうするのって話よ」
「それは……トウジが委員長を好きで、委員長もトウジが好きなら、良い事じゃないの?」
「アンタ馬鹿ぁ?鈴原がアンタ置いてヒカリと2人っきりでどっかに行っちゃうのよ?捨てられて良いワケ!?」
 シンジがアスカの方を見る。学習机に怒る姿は滑稽な筈なのに、疲れきった体では笑いの1つも出せない。
「……そりゃ、捨てられるのは、もう嫌だけど、さ」
 アスカが振り向こうとしたので慌てて視線を前に戻すシンジ。故にアスカはまたシンジの横顔を見る事になる。
「でもトウジは多分、委員長と付き合って、2人でその……デートとかする様になっても、別に僕を捨てたりはしないと思うよ。だって、友達だし」
「友達?」
「うん。アスカだってそうだろ?委員長と友達なんだから……別に捨てられるって事、無いだろ?」
「そう言うモンなの?」
「違うの?」
 アスカが余りにも驚いた様な高い声を出したので、ついアスカの方を見てしまうシンジ。目が合う。
「……私に聞かないでよ」
「アスカが持ち出した例え話じゃないか」
「煩いわね、臭い癖に」
「なっ!?……お風呂入ってくる」
 牛乳と精と汗の匂い。否定出来ないと悟ったらしいシンジは立ち上がり、アスカ同様ふら付きながらも何とか歩いて部屋を出て行った。
 室内には部屋の主のアスカ1人。静まり返っている。行為の最中には黙り込んでいた時計の音が聞こえてきた。
 捨てられないなら、こんな疲れる事しなくても良いんじゃん。
 絶対に捨てられないと決まったワケではない。しかしシンジの至極当然の様に図れた言葉で物凄く安堵してしまった。
 昨日・今日とで心も体も疲れきってしまったアスカは机の引き出しに頭を預けた。このままでは風邪を引いてしまうので着替えてベッドに入らなくてはと思いながらも、まどろんでいく――。


2005,12,31


年内最後の更新がこんな物で申し訳無いです。
無駄に長いし、エロはぬるいし、勉強しようと改めて思いました。
是でも相当削りました。削らなかったらもっと長かったのか…
加持とミサトの会話とLRSっぽいお買い物と…ペンペンのちょっとした行動も省きました。
その所為で加持は会話にしか出てこないし、レイは一言も喋ってません。
一層の事1日目(?)も削除しようと思いましたが、話が繋がらないので残しました。

時間軸的には第拾伍話後、第拾七話前。第拾六話よりも前を意識してますが、後と思っても読めるかも。
ついでに女性向けサイトだったりするんで淫語を極力省きました。そうだよ此処女性向けだよ。
因みにこの長さ、メモ帳で72KB、ワードに至っては240KB有ります。
此処まで読んで下さった方、本当に時間を無駄にさせてスミマセンお疲れ様でした。

タイトルはアニメ『少女革命ウテナ』のBGMから。
『円錐形絶対卵アルシブラ』と言う対石蕗戦の合唱曲の歌詞の一部です。
終わり方を『鼻』に関する物にしたくて、鼻=息関連?みたいな。

どうでも良いけど是を書く為のメモ帳の1番下に、
・MarySue32点超
・しぬのはいやーあすかのたねわれ
って書いて有りました。
前者は多分二次創作なのに試しにテストやってみた点数ですが、後者は全くもって意味不明。本当に謎。
本年最後の更新なのに…其れでは皆様、良いお年を。来年も宜しくお願い痛します。
<雪架>
新年明けましておめでとうございます。
2年越しのコメント付けになってしまった……。
その点をまお詫びいたします。
たしかに長い。が、それが悪いことだとはわたしは思わないっ!!
読み応えがあっていいじゃあないですか。
わたしは好きです。
細かい日常の描写とかもちゃんとあって、登場人物がちゃんと“生きてる”みたいです。
そんな風に書けるのは実に羨ましい。
わたしも修行しなければ、ですね。
<利鳴>

【戻】


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