陣凍小説を時系列順に読む


  同じおもいで


 「しまった」と思った時には遅かった。ヒトの膝ほどの高さの窓辺に置かれていた小さな“それ”は、陣が思っていた以上に重量に乏しく――そういえば手に触れて持ち上げてみたことはなかった――、彼が起こした風に簡単すぎるほど簡単に煽られ、バランスを崩した。次の瞬間にはその場から落下し、音を当てて床に散らばっていた。それを聞いて駆けつけてきた凍矢の表情は凍り付いていた。
 残骸となった“それ”の傍で、陣はまだ自身の身体を空中に浮かせたままだった。そうでなかったとしても、「自分じゃない」等と言ったところで信じられはしなかっただろう。その部屋には、他の者は誰もいなかったのだから。ポルターガイスト現象を引き起こすような者が入り込んでいれば、彼等が気付かぬはずがない。
 凍矢がその場にその小さな植木鉢を置いたのは、5日ほど前のことだった。どうしたのだと聞くと、蔵馬にもらったと返ってきた。何に使うのかと尋ねれば、育てるのだと。何の花だとの質問には、自分にも分からないと言って少し笑った。陣は首を傾げた。
 『蔵馬から』ということは、魔界の植物である可能性もある――むしろおそらくはそうだろう――それは、果たして危険な物ではないのだろうか――例えば毒を持っていたり、人や妖怪を喰らうタイプの物であったり――と、陣は思わずにはいられなかったが、毎日小さな芽に水をやる凍矢のその表情は穏やかで、楽しげで、窓から日光が差し込んでいることを抜きにしても、輝いていた。魔界を出てからは明らかに変わったとは言え、まだ常人よりは感情の変化が表情に現れ難い相棒のそんな様子を、しかし陣はいささか面白くない気持ちで眺めていた。これまで一緒にいて――今はひとつ屋根の下で寝食をともにしてまでいる――、凍矢が園芸に特別な興味、関心寄せているという様子は見られなかった。彼はむしろ人間界にある――魔界にはなかった――全ての存在を愛しんでいるようですらあった。なのに、その小さな植物に向ける、その眼差しはなんだ。明らかに他の物よりも特別な感情を向けているその理由は。率直に聞いてみても、凍矢は「まだ内緒だ」と言って教えてくれなかった。陣にはそれが面白くない。
 ともに戦い、ともに暮らし、凍矢の喜びは陣の喜びでもあった。そしてそれを分かち合うことが出来るということが、また新たな喜びを生んだ。今までは。凍矢は凍矢であり、自分ではない。自分の付属品でもない。そんなことは分かっている。分かってはいても、唐突に半身を奪われたような不安を抱かずにはいられなかった。そんな感情を持った自分に対して、苛立ちも感じていた。
 無残にも砕け散った植木鉢からは土が零れ出し、まだ短い根が露出してしまっていた。凍矢は鉢の破片を摘み上げ、眉間に皺を寄せている。かと思えば、蒼い瞳が陣の顔を睨み上げた。
「陣! 屋内で飛ぶなと何度言えば分かるんだッ」
 それは実際に何度も言われていたことだった。だがいつものそれは、あくまでも穏やかな口調であった。「危ないだろう」と咎める言葉も、省略された主語が陣の身であることは自明だった。それでも陣にとって飛ぶということは、他の者が地上を歩くことと、ほとんど変わりないも同然であり、それをやめろと言うのは、鳥に鳴くな、囀るなと無理を言うことに非常に似ていた。凍矢もそれを分かってくれているはずだった。だからこそ、彼等の住まいに壊れ易いような調度品は置かれていなかった。これまでは。元より魔界の奥深い森の中で暮らしていた彼等には、多くの物は必要なかった。はずだった。はっきりと言葉に出したことこそなかった――そんなことをしなくても充分通じ合えていると思っていた――が、それは2人の暗黙のルールのようなものだ。と、陣は思っていた。それが突然、自分のために守ってくれていたルール――のようなもの――を破られた。片方の手の平に乗せてしまえるほどのちっぽけな植木鉢。ここに置く。蔵馬にもらった。壊すなよ。理由は教えない。なにか、大切な場所を奪われた気がした。そんな“ちっぽけ”な、ただの草なんかに。
 それでも、壊してしまったのはあくまでも事故だった。わざとそんなことをするほど、陣は子供ではない。むしろ出来る限りその存在を視界と頭の中に入れないように、忘れてしまうようにと努めてすらいた。そのため、配慮することが出来ずに、今回のことに至ったのだ。気を付けるように言われていたのに怠った。それは、百パーセント陣に非がある。陣自身もそれは素直に認めようと思った。だが、彼を非難した凍矢の口調は、普段のそれより遥かに強く、明らかに怒りの色を含んでいた。
「……なんで」
 無意識の内に口から零れた小さな声は、凍矢の耳には届かなかったようだ。彼の視線は、もう植木鉢の残骸へと戻っている。その表情は、苦痛を感じている時のそれだ。まるで壊れたのがただの植木鉢等ではなく、彼自身の心であるかのように。
 悪かったと思っている。だがそれほどまでに大切な物なら、何故そう思う理由を話してくれないのか。凍矢が愛おしく思う物なら、それは陣にとっても同じではないのか。そんな感情が先走って、謝罪の言葉は喉の奥に落ちていってしまった。代わりに出てきたセリフは、自分が言ったということが信じられないようなものだった。
「そんなものが、そんなに大事だか?」
 意表をつかれたのは凍矢も同じだったようで、彼は驚いたような顔を上げた。が、それも一瞬のことだった。その眼はすぐに鋭さを取り戻し、陣を睨んだ。
「『そんなもの』?」
 その声は思いの外冷静に聞こえた。怒りに燃えているかに思えた眼差しは、むしろ冷たかった。思わず身震いするほどに。それは、初めて彼に出会った時のものに似ていた。まだ心が一切通い合っていなかった、全く知らない凍矢のものに。その眼が、陣には怖かった。眼の前にいるはずの凍矢が、自分の知る彼ではなくなってしまったかのようで。凍矢が凍矢ではなくなってしまう、凍矢がいなくなってしまう、そのことが。
 放った言葉はもうどうにも出来なかった。陣のそれを繰り返した凍矢は、ゆっくりと立ち上がった。その唇が再び開くより先に、陣は俯きながら言った。
「そんなものが、オレより大事?」
 それから陣は、どうやって外に出たのか――植木鉢が置かれていた窓からか、それとも、廊下を奥まで行ったところにある玄関からか――すら覚えていなかった。気が付くと何かを振り切ろうとするような速度で空を飛んでいた。「陣」と呼び止める声だけは辛うじて聞いたような気もしたが、今は風の音だけがひゅんひゅんと鳴っている。
 飛び出してきてしまった。謝罪も、弁解すらせずに。凍矢の言い分も聞かずに。
(最悪だ……)
 最低だ。そのことだけは分かっている。だが、どうすればいいのか分からない。こんなことは初めてだった。今まではなかった。凍矢のことならなんでも分かる――と思っていた――はずだったのに。何かが変わってしまったのだろうか。凍矢か、彼自身が?
 いつの間にか呼吸をとめていたことに気付き、陣は喘ぐように息をした。汗と思って拭った頬を濡らしていたのは、眼から流れた液体だった。それが遥か下方の地面へと落ちて行き、すぐに見えなくなった。
(どうしよう……)
 どうしたら良いのか分からず、陣は空中で膝を抱えて身体を丸めた。

 陣の姿はあっと言う間に見えなくなってしまった。どんよりと曇った空からは、今にも雨粒が落ちてきそうである。開け放った窓から吹き込む風は、季節が撒き戻ってしまったかのように冷たい。氷の妖怪である――寒さには強い――にも関わらず、凍矢は何故か肌寒さを感じ、身震いした。
 風の音に混ざって、陣の声が脳裏に蘇る。
『そんなものがオレより大事?』
 その一言で我に返った。が、それも遅かった。とめる間もなく、彼は飛び出して行ってしまった。空を飛べる陣を追うことは、凍矢には不可能だ。
 長い溜め息を吐いても、それを聞く者は誰もいない。窓を閉めると、家の中は奇妙なくらいに静まり返っている。
 砕けた植木鉢を眼にした時、この程度、新しい容器に移してやればどうということはないと、頭では分かっていた。だが、口から出たのは自分でも予想外のきつい調子の言葉だった。それが瞬時にして陣の表情を曇らせたことには気付いていたが、放ってしまった言葉を取り消すことは叶わなかった。それでも、カッとなってはいけない、一先ず落ち着こう、そう自身に言い聞かせようとするだけの冷静さは失っていなかった――つもりだ――。それなのに。
 飛び出して行く陣を呼びとめようとした声は間に合わなかったようだ。陣には何も説明していなかった。言えば彼がどんな顔をするかは容易に想像が付いた。きっと彼は、笑うだろう。笑ってくれるはずだ。それが見たかったからこそ、何も伝えずにいた。それこそが目的だった。花を飼育するのはただの手段でしかなかった。だが陣は、凍矢が何か隠しているとでも思ったのか、不満げな顔をしていた。それが数日続き、このまま黙り通すのは難しいかと思い始めた矢先の出来事だった。すぐにその場で全てを説明すれば良かったのかも知れない。「あの時の花を覚えているか?」と。だがその隙も与えず、陣は出て行ってしまった。まだその程度の余地はあるに違いないというのは、完全に凍矢の読み違えだった。いつの間にか失念してしまっていたのだろうか。陣は陣であり、自分ではないという、当たり前のことを。自分が思うように相手も思ってくれていると思い込み、きちんと意思を伝えることに怠慢であったのか……。
 大切なのは花自体ではない――ましてその器なんかではありえない――。そこにある思い出こそが……。鉢が割れても、仮に花が枯れ、死んでしまったとしても、思い出が傷付くことは決してない。そうは思っていても、いや、むしろそう思っていたからこそ、陣がそれを汲んでくれなかったことに苛立った。思い出そのものを粗末に扱われたようで。
(オレもずいぶん感情的になるようになったものだな)
 感情自体をほとんど持つことのなかった過去を思えば、それはある意味では喜ばしいことなのかも知れない。が、それを喜んでいる余裕は、彼の心にはない――少なくとも今は――。
(何も話さなかったオレが全て悪いのに……)
 すぐに謝らなければならない。陣が忠告を聞き入れなかったことに対して文句を言うにしても、それは後廻しだ。
(陣のやつ、一体どこへ……)
 今すぐ探しに行きたいが、その行き先が分かるはずもない。落ち着いた陣が戻ってきて行き違いにならないとも限らない。そもそも空を飛べない自分に行ける場所なのかどうかすら……。だが、
(じっとしていても、どうにもならない)
 おそらく――他人の心を把握することは出来ないが――、陣ならきっとそう言うだろう――そうであってほしい――。
 床に零れた土を掬い集め、近くにあった空き箱にそれを詰めた。後でちゃんと新しい鉢を用意してやるからなと心の中で根と芽を出して間もない小さな植物に謝罪をし、凍矢は外へ出た。
 とりあえず、人間界にいる知人の許をあたってみることにする。となると、幽助か、蔵馬あたりか。なんの手がかりも心当たりもない以上、近い方から訪ねてみる他ないだろう。「近く」と言えば鈴木と死々若丸の住まいが最も当て嵌まるが、陣が飛んで行った方角的に、それは除外しても良さそうだ。それでもふと別の考えが浮かんで、そちらへ向かって駆け出した。
 数分もしない内に見えてきた家屋の縁側で、脚をぶらぶらさせている小さい方の姿をした死々若丸を見付けた。凍矢は挨拶も交わさずに、「鈴木は?」と尋ねた。
「知らん。部屋に篭ってまた怪しげな物を作っている」
 死々若丸は不機嫌そうに答えた。おそらく、かまってもらえないのが不満なのだろう。このくらい分かり易い態度なら、見誤ることもないだろうなと思ったが、あるいは自分達も、傍目には同じように見えていたのだろうか。
「すまない、留守番を頼まれてくれないか」
「番をするほどの物があったか?」
「オレがいない間に陣が戻ってきたら、引き止めておいてほしい」
「ふん。簡単に言ってくれる」
 顔を歪めるように笑うと、死々若丸は奥の部屋に向かって「出てくる」と宣言した。鈴木の生返事が辛うじて聞こえたが、本当に今のやり取りで大丈夫なのだろうかと凍矢は少し心配になった。それでも、1秒後には「頼んだ」と言い残して、駆け出していた。
 人間の町には何度か脚を運んだことがあった。が、まだその空気に慣れたとは言い難い。自分には、今の山の中での生活の方が合っている気がする。豊かな自然と、静かな時間、そしてそれをともに過ごす仲間の存在があれば。
 蔵馬の住居が見えてきた時、すでに陽は沈み切ろうとしていた。この時間なら、蔵馬は在宅中であることが多い。あるいは陣ももう戻っているのではと振り返りたくなる気持ちを抑え、足早に道を行く。すると、不意に視界の隅で影が動いたのが見えた。思わず脚をとめた凍矢は、そこに珍しい人物を見た。それこそ影と見紛う黒いマントに全身を包んだその男は、凍矢と同様の――すなわち「珍しい物を見た」という――顔をしていた。
「飛影?」
 交流がある……と言えるほどの直接のやりとりの記憶はない――強いて言えば、仲間の仲間だろうか――その人物は、何事もなかったかのように踵を返そうとした。凍矢は、瞬時にその腕に飛び付いた。飛影なら、千里眼の能力を持っていることを思い出していた。
「頼む」
「離せ」
「陣を探してくれ」
「オレの知ったことじゃない」
 飛影は元より愛想のいい人物であるとは、お世辞にも言えない。加えて、炎を操るという、自分とは真逆の性質を持つ妖怪である所為だろうか、正直に言うと、あまり近寄りたいと思うような相手ではない。一言で言うと、接し方が分からない。根気良く交流を続けていれば、悪いやつではないと思えるのだろうと――幽助や蔵馬を見ていると――分かりはするのだが、これまでその機会は皆無に等しかった。そんな相手に、禄に事情も話さず不躾極まりない頼み事をしている。思った以上に、自分は追い詰められているらしいと気付く。待っていればその内帰ってくるだろうと思いたい。が、もしも陣の気持ちが同じではなかったら……? 自分ではない者の考えを、どうして「大丈夫だ」等と断言出来るだろうか。
「お前なら見付けられるだろう?」
「貴様等の痴話喧嘩なんぞ、付き合ってられるか」
 あ、こいつ何か知っているなとは思ったが――そう言えば飛影は煙鬼からの命令で、人間界に住む妖怪達の動向を時々監視していると聞いた覚えがあった――、それなら却って好都合、説明は不要だとばかりに、凍矢は飛影に詰め寄った。
「鬱陶しい。暑苦しいやつだ」
「そういうお前は冷たい」
「消し炭にしてやろうか?」
「飛影、その辺で」
 突然割り込んできた声は、蔵馬のものだった。いつからそこにいたのか、見ればその姿――人間の勤め人の服装をしている――から、ちょうど帰宅途中だったらしいことが伺えた。
「町中で火災騒ぎは困る。しかもオレのうちの眼の前で。2人とも、オレを尋ねてきてくれたのでは?」
 にこりと微笑むと、飛影が小さく舌打ちをした。彼は凍矢の手を振り解くと、つかつかと蔵馬に歩み寄り、マントの中から取り出した封書のような物を突きつけた。
「煙鬼からだ」
「ご苦労様」
 飛影を伝書鳩代わりに使うとは、やるな煙鬼と思っている暇はない。そのまま立ち去ろうとする飛影を再び捕まえようとすると、すでに蔵馬の手がそれをしていた。
「待って飛影。煙鬼から返事を受け取って来いとは言われてない? それと、凍矢はどういった用件で? そういえば、あの花はもう芽を出した?」
「そのことなんだが」
 凍矢は件の鉢を誤って陣が壊してしまい、そのことでちょっとした口論があったのだと説明した。「陣が飛び出して行って戻らない」と言うまでの間に、苛立たしげな飛影の舌打ちが数回聞こえた。
「早い話が嫉妬ですか」
「嫉妬?」
「くだらん」
「そう、花に対する」
「花に?」
「そうでないならオレにということになってしまう」
「は?」
「く、だ、ら、んッ」
「飛影、そんなこと言わずに、探してあげたら?」
 蔵馬はこともなげに言った。
「貴方ならそのくらい、難しいことじゃないと思ったけど」
 蔵馬のセリフの言外に「その程度も出来ないの?」との皮肉を聞き取った時には、飛影はすでに――やはり苛立たしげに――額を覆う布を取り払っていた。
「邪眼の力を舐めるなよ」

 空の上の空気は冷たかった。それに吹かれていると、いくらかは冷静さも戻ってきたようで、陣はようやく顔を上げた。周囲は暗くなり始めていた。
 凍矢が何を思っているのかを話してくれないが不満であるというのは事実だが、それを伝えもせずに分かってほしいと言うのは、陣のわがままでしかない。腹を立てるにしても、言うべきことは言わねば。それに、謝罪の言葉も。陣は、凍矢が全てを理解してくれるものとして、いつしか甘えを持っていた自分に気付いた。今なら、そんな馬鹿なことがあるものかと言い捨てることが出来る。自分のことだって、全ては気付けないというのに、と。
 帰って謝ろう。そして自分が思ったことも、きちんと伝えよう。そう決めて地上へ戻りかける。が、数秒の後に、陣は進行方向をくるりと変えた。その脳裏に浮かんでいたのは、今よりもずっと幼い頃の記憶だった。
(あの花……)
 正確には、花が咲き終わって種が出来、それを飛ばすための綿毛に姿を変えた状態の植物だった。厳しい師の許を離れられない凍矢のために、こっそりと魔忍の里を抜け出し、陣が摘んできたそれは、薄い蒼色をしていた。凍矢の髪と同じ色、魔界に存在しない空の色、特別な色。
 凍矢と草花のイメージは、どうも上手く結び付かない――氷の世界に咲く花がほとんどない所為だろうか――。だが幼いあの日、彼は陣の手からそれを受け取ってくれた。あの頃の陣は、表情を変えることすらあまりしない少年のことをもっとよく知りたくて仕方がなかった。“知らないこと”は、“これから知ることが出来ること”だった。知らないことを嘆いたりはしなかった。戻ろう。あの頃に。
 陣は風を操って魔界を目指した。あの時のあの綿毛を、もう一度凍矢に渡したい。あの植物になら、自分の素直な気持ちを込められる気がした。今の季節でもあれは存在しているだろうか。もし綿毛ではなく、花が咲いていたとしたら、それはそれで構わない。あの日、きっと種が芽を出し、いずれ花になるだろうと期待して飛ばした綿毛がその後どうなったのか、実は彼等は知らなかった。魔忍の者達が修行の場としている土地はいくつもあり、定期的にその場所を変えるのが普通のことだったためだ。それはまだ未熟な修行者達が敵対する者達に見付けられぬための配慮だったようで、彼等は正式な任務に付くまでの間に、何度かそうした移動を繰り返していた。種を飛ばしたのは、ちょうどそのタイミングと重なる時期だったのだ。それ以来、あの場所を訪れる機会はないままだった。
 あの場所に行けば、彼等が飛ばした種が根を張り、その数を増やしているだろうか。そうであってくれと願いなら、陣は飛んだ。もし土や水が合わなくて根を張ることなく終わってしまっていたら……、それは一先ず考えないことにする。季節の違いで何もなかったら……、それも、その時考えよう。つまり、何も考えていない。自分らしい。陣は少し笑った。何も考えていない男が、他人の考えを容易く理解しようとしていたなんて。
(お笑い種だべ)
 魔界に入ってしまえばもう人間達に目撃されることを心配しなくて良い。陣は思う存分に風を巻き起こし、記憶の中の場所を目指して一気に飛んだ。が、どんなに急いでも、人間界にある彼等の住まいに戻れるのはおそらく真夜中近くになってしまうだろう。凍矢に何も言わずに来てしまった。それも含めて、全力で謝ろう。もう迷いはなかった。
 目的の場所は木々に囲まれた湖のほとりだった。枝が茂った森の中は視界が悪く、飛び廻れるだけのスペースも少ない。やむを得ず速度を落として進んでいると、草木を揺らして音を立てているのが自分が操る風だけではないことに気付いた。
(誰かいる)
 そう思った直後に、彼の進路を塞ぐように現れたのは、頭からすっぽりとマントを被って姿を隠した3人組の男――見えないので推定の性別でしかないが――だった。それは、魔忍が姿を隠す時に用いていた装束に少し似ている――陣はあの格好が動きにくくて大嫌いだった――が、正体を晒さぬようにと思えば、おそらく誰も皆同じような格好になるのだろう。
「とまれ!」
 3人の内の誰かが言った――少なくとも男の声だった――。が、その顔は言葉を発する口元さえ見えない。
「なんだオメー等」
 どの人物に顔を向ければ良いのか分からず、陣はほとんど区別の付かないシルエットを見廻しながら言った。
「我々は本来の魔界の姿を取り戻すために暗躍する者」
「人間界なんぞに媚び諂う今の魔界を変える者だ!」
「魔界とは本来無秩序に満ちた場所。それが魔界の秩序!」
「統治なんぞクソ喰らえだ!」
「この地に再び混沌を!」
「人間界に恐怖と苦痛を!」
「暗黒の世界を取り戻すのだ!!」
 声高らかに言いながら、同じような格好の男が1人、また1人と現れた。いよいよどこで誰が喋っているのか分からない。陣は正面にいる男に向かって口を開いた。
「わりぃ、何言ってんのか全然分かんねぇ」
 何しろ自分は、何も考えていないのだから。
「貴様、頭悪いのかッ!?」
「うん」
「あっさり認めるな!」
「開き直るな!」
「つまり、我々は今日の魔界のあり方に不満を持ち、煙鬼の統治を打ち砕こうとする者だ!」
「ああ、反乱軍ってことだか? そうならそう言えばいいべさ。回りくどい連中だなー。なんかもっと分かり易いチーム名とかねーだか? 霊界のぶそーなんとか党みたいな」
「馬鹿め! 我々は馴れ合いをやっているのではない!」
「というかお前、『分かり易い』とか言ってほとんど覚えられていないじゃないか……」
「魔界に住まう者は本来群れぬものだ!」
「でも今はばっちり群れてるべ。お揃いのコスチュームまで作って」
「こっ、こすちうむぅッ!?」
「それが本当なら、それぞれ勝手に煙鬼のとこに仕掛けて行ったらいいべさ」
「我々は利害関係の一致を理由に一時的に手を組み、効率良く敵に攻め込もうとしているのだ!」
「ああ、一対一じゃ勝てねーから、大勢で行くべってことか。オメー等、その変な喋り方なんとかなんねーだか? まどろっこしいっちゃ」
「お前に喋り方のことでどうこう言われたくないぞ!?」
「なんかわざとらしい喋り方だべな。鈴木みてぇ」
「よく分からんが侮辱された気がするぞおい!!」
「で、オレに何の用だ?」
「それはこちらのセリフだ!」
「ここは我等が拠点! 貴様何用で踏み入った!?」
「ああ、そーゆーこと」
 陣は両手をぽんと叩いた。魔忍が解散となり、この土地を使わなくなった後で、どうやらおかしな連中が居ついてしまったようだ。黒尽くめの男達は相当怒っているようだが、何しろ表情も伺えない。しかも彼等の妖力の強さは1人1人区々ではあるが、どれも陣よりは遥かに弱い。緊迫感を持つのは少々難しいことだった。
「別に、オメー等に用があって来たんじゃねーだ。そもそもオメー等なんて知んねーし。オレが用があんのはこの先だ」
「通すわけにはゆかぬ」
「ここは我等が拠点」
「今すぐ立ち去れ!」
 どうやら話してどうにかなる相手ではないようだ。伝える努力もせずに理解してもらいたいと思うのはただの怠慢でしかないが、端から次元の違うイキモノもいるのだなと陣は思った。この連中とは、努力をしても会話が噛み合いそうな気がしない。
「さあ退くが良い。さもなくば……」
 陣は相手を睨み付けた。視線が合っているかどうかは定かではないが、全身に纏った妖気に気付かぬほどはあちらも愚鈍ではないだろう。
「オレさ指図すんじゃねぇ」
 低い声で言うと、何人かがたじろぐ気配が伝わってきた。それでも他の何人かは、マントの中から取り出した武器を構えた。
「やれ」
 1人の声を合図に、全員が――わずかに遅れた者もいたが――地を蹴った。その攻撃を、陣は風の壁で容易く弾き飛ばした。
「怯むな! 殺せ!!」
 寄せ集めの戦力であるというのは、どうやら本当のことらしかった。男達の動きはばらばらで、チームワークもなにもあったものではない。それらの攻撃は、陣にとってなんの障害にもならなかった。竜巻を纏った腕を構え、手近にいた1人を殴り飛ばす。腕を引き戻す力で、もう1人。
「こんなとこで時間潰してられっほど暇じゃねーだ!」
 しかし実際には言うほど時間は潰れなかった。数分もせぬ内に、地面に立っている者は誰1人としていなくなっていた――陣は相変わらず宙に浮いている――。
「百年修行して出直してこい!」
 聞こえているかは最早分からぬが、そうとだけ言い残し、陣は先を急いだ。記憶の中にある湖まで、もう遠くはないはずだ。景色にも見覚えがある気がする。
 あるいは先程の者達が切り開いてしまっている可能性も考えながら、その場所へと辿り着いた。開けた視界に飛び込んできたのは、記憶していたそれよりはいくらか小さく感じるこれと言って特徴のないただ丸いだけの湖と、その周辺をぐるりと囲むように生息する蒼白い大量の綿毛だった。多少ヒトが行き来した痕跡は見られるものの、見事なまでに地面を埋め尽くしている。まるで、雲の上にいるようだ。あの日飛ばした種が、こんなにも……。
「すげえ……」
 陣は思わず呟いていた。
 あの時と同じ綿毛の季節であったのはただの偶然でしかない。だが陣は、その景色が自分を待っていてくれたように感じた。
 近くにあのマント集団がいて、しかもこの場所にも彼等のものと思われる足跡がいくつも存在していることから、その植物が近付くだけで危険な毒を放出しているなんてことはなさそうだと判断出来た。手を伸ばしてみても、子供の頃にそうした時同様、喰らい付いてくる様子もない。食用に適しているかいないかという意味では不明だが、少なくとも摘んで持ち帰ることに危険はなさそうだ。茎に指を絡め、軽く力を入れると、まるで摘まれることを待っていたかのように、それは地面を離れた。
 少し迷って、片手に握れる程度の束になるだけ摘んだ。その気になればもっと摘み取ることも出来ただろうが、あまり時間はかけたくない。それ以上に、この景色を壊してしまいたくなかった。今度は凍矢も連れて来よう。花が咲く頃に。ちゃんと仲直りが出来たら。
 帰りは来た時ほどのスピードは出せなかった。強い風に吹かれれば、綿毛はあっと言う間に飛んでいってしまうだろう。逸る気持ちを抑えながら森を抜けると、遠くから人影が近付いてくるのが見えた。「誰だろう」と思ったのと、接し慣れたその妖気に気付いたのはほぼ同時だった。
「凍矢!」
 綿毛を守るために手で風除けを作りながら、可能な範囲で加速した。そのまま飛び付きたい気持ちを堪え、凍矢の正面に着地する。凍矢は色素の薄い唇を開いて何か言おうとしたが、そこから出る声を遮るように、陣は言った。
「ごめん!」
 両手で持った植物の束を突きつけるように差し出した。勢いで小さな綿毛が2、3、宙にふわりと舞った。
 凍矢は眼を大きく見開いて、動きをとめていた。が、やがて白い両手がゆっくりと動いた。陣が差し出したそれを、受け取ろうとする。
「あれ? その花、まだ咲いてないんじゃなかったですか?」
 割り込むような声に驚いて顔を上げると、凍矢以外の人物が傍にいることにようやく気付いた。
「あ、蔵馬。あと飛影」
「ついでですか」
「来たくて来たんじゃない」
「咲いてないって、何のことだ?」
 陣が首を傾げると、蔵馬も同様の仕草をした。飛影はただ不機嫌そうである。
「……ああ、そうか。陣には話してなかったのか。凍矢が育てようとしていた花は、今陣が持っているのと同じ物なんですよ」
「えっ?」
 視線を戻すのと同時に、手に何かが触れた。その冷たさに思わずびくりとなったが、触れてきたのは凍矢の手だった。彼は蒼い綿毛の束をそっと受け取っていた。そして、微笑んだ。
「えと……、ど、どーゆーことだ? ちょっと待って、よく分かんねーだ。なんで、蔵馬と飛影がここに?」
 蔵馬はやれやれと息を吐くように肩を竦めた。飛影は……、相変わらずだ。
「凍矢がどうしても陣を探してほしいって言うから、飛影の千里眼でここへ。というのはついでで、本当の目的はこの近くで仕事が出来たから」
「ついでか」
「オレはどちらとも関係ない」
「飛影、煙鬼からは『この件に関しての指示を全てオレに一任する』と言われてるんですよ。つまり、誰に手伝わせるかもオレの自由。それを断るなら、煙鬼の命令に背いたのと同じことになる」
「ちッ」
「仕事の内容は反乱組織のアジトの発見。貴方なら簡単でしょう? 人数は数百から数千とも。これが本当なら、暇潰しにはもってこいだ」
「反乱?」
 今度は陣が口を挟んだ。どこかで聞いた単語だ。しかし、数百から数千……?
「蔵馬、その話、かなり大袈裟に伝わってると思うだ」
「はい?」
「さっきそれらしーのに会ったけど、十人ちょっとしかいなかったし、弱っちかっただぞ?」
「倒したんですか?」
「たぶん死んではいねーと思うけど」
「ならオレは帰る」
「確認してからです」
「あっちの森ん中だべ」
「そう、ありがとう。探す手間が省けた」
「ならオレは」
「くどいですよ飛影」
「ちッ」
 半ば飛影を引きずるようにして、蔵馬は陣が指差した方へ行ってしまった。それをぽかんと見送っていると、ふうと息を吐く音が聞こえた。凍矢だ。
「えっと……」
 結局蔵馬はきちんと説明しないまま行ってしまった。陣は頭の中を整理しようとしたが、どこから手を付けていいのか分からない。やはり、考えることは自分には向いていない。
「陣」
 凍矢が口を開いた。
「悪かった」
 謝罪の言葉を口にしたのは陣の方が先だった。が、自分が謝りたいと思ったことがきちんと伝わったのかは分からない。そんな状態での凍矢の言葉は、なんだか先を越されてしまったかのような気持ちにさせられた。
(謝んねーとなんねえのはオレの方なのに)
「凍矢っ、ごめん! オレ……」
 陣が再び謝罪しようとすると、しかし凍矢はそれを押し留めるように手の平を向けてきた。そして口を開く。
「桜……を、覚えているか?」
「え?」
 一瞬何を言われたのか認識するのが遅れたほどに、凍矢は陣が全く予想しなかったことを言い出した。桜? 人間界の樹がいったいどうしたというのだ。まただ。また、凍矢が何を思っているのかが分からない。
 桜の花が咲いたから見に行こうと誘われて、仲間数人で人間の町にやや近い公園へと出向いていったのはひと月ばかり前のことだった。薄く色付いた花弁は、この季節の極短い時期にだけ咲くのだと蔵馬が言っていた。
「覚えてっけど……」
 陣は訝しげな表情をしながらも頷いた。
「ただ『花』と言うと、あの国では桜の花を指すそうだ」
「へえ……」
「……オレなら、あの花だなと思った」
「あの花?」
「“この”花だ」
 凍矢はふっと笑った。その視線は陣が摘んできたばかりの綿毛の束に向いている。
「オレにとっては、ただ『花』と聞いて思い出すのはこの花だった。だが、オレはまだその“花”を見たことがない。それを思い出して、蔵馬に頼んだんだ。種を手に入れてほしい、と。口に入れるのは勧めないが、観賞用としてなら何の問題もないと言われたよ。飼育も、それほど難しくないと。人間界の水や空気でも充分育つそうだ。それなら、自分の手で育ててみたいと思った」
 陣はそれを知らなかった。凍矢が水をやっていたあの小さな芽が、かつて自分が彼に贈ったのと同じ花だったなんてことは。知らずに、凍矢に謝罪の気持ちと一緒に贈るなら、あの花以外にはないと思った。つまり、
「つまり……」
 そうとは知らぬまま、2人は同じ思いでいたらしい。
「最初からそう言っていれば良かったな」
 くすりと笑い、「すまなかった」と告げる凍矢の表情は、穏やかだった。
 陣は無言のままに、頭を左右に振った。胸がいっぱいで、すぐには言葉が出てきそうにない。それを察してくれたのかのように、凍矢はゆっくりと喋り続けた。
「明日、新しい植木鉢を買いに行こう」
「うん」
「この綿毛の種も、一緒に植えよう。帰るまでの間にいくらかは飛んでしまうだろうが、少しは残るだろう」
「うん」
「新しい鉢は、割れ難い素材の物がいいな」
「もう落とさねーだよぉ」
「言ったな? 確かに聞いたからな?」
 魔界の暗い空の下を、2人は並んで歩いた。陣の飛翔術を使えばもっと早く帰れるが、凍矢の手の中にある綿毛を出来るだけ多く残そうと思えば、多少時間がかかってしまうのは仕方がないだろう。袋か箱でも用意してくれば良かったなと思ったが、今更だ。無理に持ち帰らずとも、帰宅すれば芽を出したそれがあるのも分かってはいるが、凍矢がそう望むなら、叶えてやりたい。
「あ、でもなんでわざわざ蔵馬に頼んだだ?」
「『なんで』?」
「ここまで来ればすぐ手に入ったのに」
「種がなっている時期かどうか分からなかったからな。それに、もし花が咲いていたら、1人で先に見てしまうことになる」
 凍矢がわざわざ一から花を咲かせようと思ったのは、彼ひとりのためではなかったようだ。
(オレと一緒に?)
 小さな火が灯ったように、陣は胸の奥が暖かくなるのを感じた。
「お前はそこまで考えていなかっただろう」
「うん。全然。ごめん」
「いいさ。お前らしい」
 陣がひとりで花を見ていたかも知れないことを、凍矢は怒ってはいないようだ。おそらく、本当にその花が咲いているのを見付けたら、陣ならすぐさまそれを持ち帰り、凍矢にも見せていただろう。そのことが分かっているからかも知れない。怒るどころか、微笑んでいる。
「お前が考えない分は、オレが考えればいい」
 補い合うこと。それは、2人が共通の存在であったら出来ないことだ。彼は、自分ではない。だからこそ傍にいる意味がある。
「何色の花が咲くべか」
 綿毛と同じ色の髪を見下ろしながら、陣は弾むような口調で言った。すると、凍矢の眼が上を向いた。彼は「その答えならもう知っている」と言い切った。
「綿毛がオレの色なら、花はお前だとあの時決めただろう?」
 わずかに首を傾げるような仕草。緩やかにカーブした唇。陣は今すぐ彼の身体を抱き締めたくなった。少し躊躇ってから、「何故そうしてはいけない?」と心の中で自分の声が問うた。蔵馬達も行ってしまったことだし、見ている者は誰もいない。いたとしても――少なくとも陣は――気にはしないのだが。ただ、凍矢が胸の前で持っている綿毛の束は、抱き付いたらその勢いで大部分が飛んでいってしまうだろうか。いや、でもそっとやれば……。
 そんなことを考えている間にも、陣が起こしたのではない自然に吹く風や、ちょっとした動作の影響を受けて綿毛は少しずつ空へと舞い上がっている。根を張る場所を探しに行ったのだろう。凍矢の手の中にいるのが不満だとは、贅沢なやつらだ。
 手を振るように揺れながら舞う綿毛を追って、2人の視線が空を仰ぐ。幼い頃の同じ思い出をなぞるように。
 いつしか陣は脚をとめていた。少しずつ遠ざかってゆく綿毛は、空中に出来た足跡のようだ。
 視線を戻すと、凍矢と眼があった。身長に差がある所為で、向けられる視線はいつも上目遣いだ。だが、それだけだろうか? 今は心なしかいつもと違う、どこか、挑発的な光が潜んでいるようにも……?
 陣は心の中で「あ」と声を上げた。そして次の瞬間には、凍矢の細い身体は陣の腕に抱きすくめられている。案の定、残っていた綿毛が1つ、2つと飛んだ。凍矢はくすくすと笑っている。「どうしてそうしない?」と、実際に音としては発せられなかった声を聞いたように思ったのは、どうやら気の所為ではなかったようだ。
 言葉に出さないと、伝わらないことというのは確かにある。しかし、そうではないこと――言わなくとも通じる思い――も、存在するようだ。例えば、今ここに。逆に、とっくに伝わっているであろうことでも、時には口に出して伝えたくなる。
「オレ、凍矢のこと大好きだ」
 腕の中で凍矢がわずかに身じろいだ。抜け出たいのかと思って力を緩めると、しかし凍矢はその場を離れることはせず、踵を浮かせて背伸びをした。頬と頬が触れそうになる。耳元に息を吹きかけるように、彼は何か囁いた。小さすぎるその声は、風の音に紛れてほとんど聞き取れない。が、陣は凍矢が何を伝えようとしたのかを、正確に理解出来たように、不思議と思った。その証拠のように、陣が再度強く抱き締めると、背中に廻された腕に、同じように力が込められた。


2015,04,28


実は『笑顔咲く』の続きでした。
が、それ最初に書くとオチがばればれになるなぁと思って後書きに書かせていただきますことをご了承くださいませ。
今頃人間界では鈴木さんが死々若がどっか行ったと騒いでいる頃かも(笑)。
そんなわけで(?)トーコ様よりリクエストいただいて書きました、『陣凍で喧嘩ネタ』です!
が、喧嘩というほど喧嘩になっていない気もしています。
一方的に家飛び出しちゃうと口論にもならないですからね。ちょっと走りすぎたか。
喧嘩の理由考えるのってちょっと難しいですね。
でもなんか知らないけど喧嘩したらしーよー。的スタートは自ら禁じておりました。
それやっちゃうといよいよ今まで通りにしかならないですからね。
だからって冷蔵庫のプリン取ったとかそういうのもねぇ(笑)。
アダムとリリス的なのもやめておいた。
それらはそれらで嫌いじゃあないんですが(笑)。
とりあえず原因不明不可&謝罪シーン省略も不可。これが自分的目標でした。
もうちょっと喧嘩らしく言い合うシーンが書けたらもっと良かったかなぁ。
そんなことよりもトーコさん、リクエストありがとうございました!!
今まで書いたことがなかったものに挑戦する機会をくださって、本当に感謝です。
まあ、結局いつもとそんなに違わないかもなんですが……、でも、読んでいただけたら幸いです。
これからもがんばりますのでよかったらまたいらしてくださいね〜。
<利鳴>

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