ディオジョナ 全年齢 幼児化


  Little Star 1


 聞こえてきたのは何かが落ちたような音だった。硝子、あるいは陶器のような物が割れる音もあった。そしてその直前にかすかに聞こえた悲鳴のような声は、ジョナサンのものではなかっただろうか。そう思ってディオは、耳をそばだてた。が、続く物音は何も聞こえない。
 ディオは最近のジョナサンの様子を思い浮かべていた。血の繋がりはないとはいえ、7年弱の歳月を共に過ごした“兄弟”である彼は、ディオには全く理解出来ない物事に興味を示しているらしく、自室や書斎に篭ってナントカ遺跡からの出土品らしき――ガラクタにしか見えない――物を一日中――授業や部活には欠かさず出席しているが――眺めている姿が珍しくはない。さては今日も休日であるのを良いことに、朝から資料漁りにでも興じているのだろう。そこで何かひっくり返したに違いない。
(面白くもなんともない)
 心の中でそう呟いて、自室へ戻ろうとした。そのつもりだった。にも関わらず、彼の足は歩く速度を次第次第に落とし、最終的には止まっていた。
「……チッ」
 ディオは舌打ちをすると、「心配等はしていないが」と誰にともなく弁解をしながら、歩みを再開した。そして書斎の前に辿り着くなり、ノックもせずにドアを開けた。
「ジョジョ!」
 返事はない。
「おいジョジョっ、いないのか!?」
 気付けば口調に苛立ちが混ざっていた。それでも応える声はない。
 部屋の中に足を踏み入れて気付いた。床の上に、踏み台が倒れている。周りには古い書籍や――ディオには――よく分からない置物のような何かの残骸が散らばっている――いつか見た“石仮面”はそこにはないようだ――。そして、それ等に囲まれるように横たわっているのは……、
「子供……?」
 それはどう見ても子供だった。眠っているようだ。いや、気を失っているのか? 踏み台から落ちて、頭でも打ったのだろうか。だが問題は、何故このジョースター邸に見知らぬ子供がいるのか、だ。
(“見知らぬ”……? 本当にか?)
 年の頃はまだ4歳から5歳といったところだろう。性別は男。床に広がる髪は黒。身に纏っているのはどう見てもサイズが合っているとは思えない大人物の服――だが一見しただけですぐ貴族が着るような上質の物だと分かる――だ。そして、面影がある。そう、その子供は……。
(い、いやまさか。そんなはずはない。すごく、似ているが……)
「…………ジョジョ?」
 「まさか」と思いつつも、自然と口が動いていた。それに応えるように、横たわる子供の閉ざされていた目がゆっくりと開いた。碧い瞳。ジョナサンのそれと、同じ色だ。
 起き上がった子供は、どこかぼんやりとした眼差しのまま周囲を見廻した。その表情に、やはり見覚えがある。
「ジョジョ……、お前なのか?」
 ディオはいつの間にか歩み寄り、子供の腕を掴んでいた。その拍子に、辛うじて引っかかっていただけの状態に近かったぶかぶか過ぎるどころの話ではない衣服がばさりと肩から落ちた。露になった細い首筋に、星の形をした痣が現れる。何かの印のようなそれは、ジョナサンの首筋にあるものと同じだった。
(馬鹿な……)
 頭の中が混乱している。子供……、星の痣……、古代のアイテム……、ジョナサンの研究……、未知の力……、未知の能力?
「お兄ちゃん、だれ?」
 高い声が問う。そう言うお前こそ誰だと問うことが、ディオには出来なかった。不測の事態に遭遇したことによる動揺のためか? いや、心臓が鼓動を速めたスイッチは、“別のもの”によって押されはしなかったか。
「お、おにぃ……ッ!?」
 声が上擦った。何故か急に暑さを感じた。この部屋は暑い。本が大量にある部屋で誰かが火を焚くとも思えないのだが……。
 少し落ち着いて考えてみれば、ジョースター卿に公にされていないもう1人の子供が存在したのだろうかと――彼を尊敬して止まない者達の耳に入ったら面倒臭そうなこと――を思い付くことも出来たかも知れない。が、ディオはすでに理屈以外の何かによって、“それ”がジョナサン・ジョースター本人であることを確信してしまっていた。状況が把握出来ていないらしく首を傾げる間の抜けた表情なんて、あいつにソックリではないか。おそらくは、ジョナサンが収集していた怪しげな古代の品々の中に、未知の力を秘めたアイテムが混ざっていたのだろう。彼はそれを研究中に発動させてしまったに違いない。
「マヌケめ……」
 呆れて溜め息しか出てこない。そんなディオの顔を、幼いジョナサンが覗き込んでくる。
「お兄ちゃんだれ?」
「その呼び方はやめろ!」
 問題はそこだ。原理は分からぬが、彼の肉体は幼少期にまで逆行してしまった。それだけに留まらず、記憶すらも幼い頃に戻ってしまっているようだ。ディオと出会う、遥か以前の状態に。そしてもちろん、自分が置かれている状況を理解していない。
 細い腕を掴んだままでいた手に、無意識の内に力が入っていたらしい。ジョナサンは顔をしかめて「いたい」と言った。ディオが慌てて離すと、ジョナサンは自分の腕を擦りながら、「ぼく、何してたんだっけ?」と呟くように言った。斜めに傾いた首の動きに合わせて、黒い髪の毛がふわりと揺れる。初めて出会った頃よりも更に幼いその顔は、しかしすでに“家も金も人もすべて持ったぼっちゃんヅラ”だ。ジョナサン・ジョースターに、間違いない。
「ねぇ、おに……あの、あなたは、だれ?」
 ディオを指す言葉こそ変わったが、その質問はこれで3回目だ。よほどディオのことが気になるらしい。なんにでも興味を持つ年頃といったところか――いや、それは“今”でも変わらないかも知れないと、床に散らばったガラクタを見ながら思った――。おそらく答えなければしつこく尋ね続けるのだろう。それも鬱陶しい。この状況をどうするか考えるどころではなくなってしまう。
「……ディオだ」
 溜め息交じりというよりは、溜め息に声が混ざったような返答に、ジョナサンは再度首を傾げた。
「ディオ?」
 年上の者を躊躇いもなく呼び捨てるとは、すでに使用人達に対してそうすることに慣れ切ってしまっているのか。だが「ディオお兄ちゃん」とでも呼ばれたらたまったものではない。「ディオさん」だとか、「ディオ様」だとか、敬称を付けろと命じたら素直に従うかも知れないが、流石に子供相手に大人気ないと思わないでもない。
(まったく、面倒臭い)
 苛立ちに任せて舌を鳴らす。そんなディオの表情とは真逆の笑みを、ジョナサンは浮かべた。
「ぼくはジョナサン!」
「知ってる」
 ジョナサンのその瞳は、星屑でも散りばめたかのように輝いていた。名乗りあっただけ――しかもフルネームを教えたわけでもない――で、もう唯一無二の親友を得たかのような眼差しだ。
 一方ディオは、この短い遣り取りの間にもう疲労していた。やっぱり、様子なんて見に来るんじゃあなかった。そうだ、いつまでもこんな子供に付き合っている必要はない。ジョナサンのことは使用人にでも任せて、さっさと部屋へ帰ってしまおう。このまま彼が元に戻らなかったとしても、そんなことはディオには関係ない。
(……いや、待てよ?)
 ふと、彼の心の中に影が差した。
(この状態のジョジョなら、簡単に始末出来るのではないか?)
 それは悪魔の囁きだろうか。いや、悪魔がいるなら、むしろこちらから囁いてやる。例えば、川底から子供の死体が上がったとして、誰がそれをジョースター家の跡取り息子だと思う? 魚に食い荒らされて顔の判別が出来ぬとあれば、なおさらだ。死体は身元不明のまま処理されるだろう。そしてジョナサン・ジョースターは“偶然にも”それと同時期に謎の失踪を遂げる。そうなれば、この家を“守れる”のはこのディオただひとりだ。
 ディオは知らず知らずの内に唇を歪ませるように笑っていた。
 突然息子がいなくなったなんてことになれば、“風邪で寝込んでいる”“父”の容態が心労から悪化してしまうかも知れない。それは少々“気掛かり”だ。だが、心配せずとも最終的に行き着く“場所”は同じだ。きっと父子は、ここではない“世界”で再会を果たすだろう。他界したというジョナサンの母親も“そこ”にいるかも知れない。そうなれば、後は親子水入らず、好きに過ごせばいい。邪魔立てする気は微塵もない。
「……ディオ?」
 幼いながらに不穏な空気を感じ取ったのか、ジョナサンの目は不安そうに揺れていた。
「ディオ、おなかいたいの?」
 自分が置かれている状況も解せず、場違いな気遣いの言葉を口にする様に、ディオは思わず小さく噴き出した。
「いや、なんでもない。君は優しいな」
 初めて顔を合わせたあの日、微笑みを向けながら歩み寄ってきたこと。頼まれてもいないのにディオの荷物を運ぼうとしたこと……。あの頃から何も変わっていない。いや、“この頃から変わっていなかった”と言った方が正しいか。なんて甘いんだろう。
「ジョジョ」
 ディオは努めて優しい声で語りかけるようにその名を呼んだ。ジョナサンの目が再びきらきらと光る。おそらくその愛称は、それを口にする者が彼に愛情を向けていることの証明なのだろう。こんな子供でも、彼はそれを理解しているに違いない。
「ここがどこだか分かるかい?」
「ここは……ぼくのうち?」
 彼が幼少の頃から書斎に出入りしていたとは考え難いが、すでにそのくらいのことは分かっているようだ。ディオは頷いてみせた。
「君のお父さんは、仕事で出掛けているんだ。使用人達も忙しい。邪魔をしないように、君は大人しくしているんだ。いいね?」
 ゆっくりと言い聞かせると、ジョナサンはこくりと頷いた。父親が日頃から不在にしがちなのは、ディオがこの屋敷にやってくる何年も以前から変わっていないらしい。そして他人の言うことをあっさりと信じてしまうジョナサンの純粋さも。
「とりあえず、君の部屋へ行こうか。そこで大人しくしているんだ」
 念入りに計画を立てるのだ。今すぐ始末してしまうわけにはいかない。ディオはこれまで7年もの時を耐えた。あとほんの数日かけたとして、それがなんだと言うのだ。確実だ。確実にやる。百パーセントでなければならない。

 子供の体には到底合わない大き過ぎる服は、シャツを残して全て脱がせた――というよりも、彼を立ち上がらせると自然に脱げて落ちた――。袖を首の周りに巻いて、スカーフのように縛り――間違いなく皺になるがディオの知ったことではない――、とりあえずマントのような形で着させておくことにする。手を外に出すことは出来ないが、そうでなくても何かをさせるつもりはない。彼には、ただ大人しくさせておけば良い。
 「いいと言うまで動くな。音も立てるな」と言い聞かせて、ディオは廊下へ出た。使用人達の目に付かないようにしなければと思った直後、1人の男が通りかかった。ディオがこの屋敷にきた時からずっとここへ勤めている者だ。年を取ってからは階段の上り下りが辛いと言っているのを聞いて、ディオが彼の仕事の一部――ジョースター卿に薬を運ぶこと――を“代わって”やっていたのだが、今日はジョナサンに構っている内にうっかりその時間を過ぎてしまったようだ。水の入ったグラスと薬を乗せた盆を持って、彼はすでに2階に上がってきている。
「ああ、すまない。うっかりしていたよ」
 いつものように盆を受け取ろうと手を出すと、使用人の男はにこやかな表情を浮かべながら首を横へ振った。
「いえいえ、今日は膝の調子が良いものですから、このまま私めがお運びいたしますよ」
 すでに階段を上がり切ってしまった彼を今更引き下がらせるのは少々不自然だ。ディオは心の中だけで舌を鳴らし、今日の“薬”は諦めることにした。
(たった1日だ。たった1日“その時”が延びたといって、何が変わるというのだ)
 むしろジョナサンが“ああ”なって、物事はこのディオの都合の良いように動いている。焦る必要はない。慎重に、確実にやらなければならない。
「ああそうだ」
 ディオは口調を変えることなくジョースター卿の部屋へ向かおうとする使用人を呼び止めた。
「ちょっと突然なんだが、ジョジョが大学の研究の都合で、2、3日泊り込むことになったそうなんだ。それで、部屋に大事な資料が残してあるから、誰も自分の留守中に部屋に入らないでほしいと伝言を頼まれていたことを思い出したよ。掃除も帰ってくるまで不要だそうだ。なんでも、壊れ易いような物も置いているらしいんだ」
 ディオの言葉を疑った様子もなく、使用人は「さようでございますか」と返した。長くこの屋敷に勤めている彼は、ほぼ間違いなく幼少の頃のジョナサンの姿を知っているだろう。そうでなくても、子供がうろついているのを見られたら、説明――言い訳――が面倒だ。今のジョナサンを、彼――等使用人――の目に止まらせてはいけない。
「くれぐれも誰も入れるなということだ。頼んだよ。何かあっては、ぼくがジョジョに叱られてしまうからね」
 おどけたように肩を竦めてみせると、使用人は笑みを浮かべたまま「かしこまりました」と言って頭を下げた。これだけ言っておけば、有能な彼が言い付けに背くことはないだろう。後は、ジョナサンが部屋で大人しくしていれば、まず見付かる心配はないはずだ。
 薬を持った使用人がジョースター卿の部屋に入って行くのを見届けると、ディオは踵を返した。これで、誰にも邪魔されることなく計画を練ることが出来る。
(全てを、このディオの物に……!)
 書斎に戻ろうとして、しかしディオの手はぴたりと止まった。ドアが薄く開いている。閉めそびれたか? いや、そんなはずはない。
(まさか……)
 ジョナサンの名を呼ぼうとした。が、下手に大きな声を出せば先程の使用人が聞き付けて戻ってくるかも知れない。一瞬迷ったディオの視界の隅で、何かが動いた。誰か上がってきたか。いや、誰もいない。そう思った直後に、階段を降りて行く黒い髪の頭が見えた。大人の背丈ではない。
(あいつ……!)
 呼び止めたいのを堪えて、ディオは駆け出した。毛足の長い絨毯のお陰で誰かに聞き付けられる恐れのある足音は立たないが、それの所為でジョナサンが勝手に出歩く音も聞こえなかった。
「くそっ……」
 捕まえようとするも、相手が小さい上に階段を降りて行こうとしているので余計に低い位置に向かって手を伸ばさなければならない。走りながらだと転倒しそうだ。やっと届いたと思った正にその時、ジョナサンの足がずるりと滑った。一瞬息が止まる。しかし時間は止まらない。ジョナサンの体は間違いなく重力に引き寄せられ、落下しようとしている。
「くそッ!」
 間一髪のところで、ディオの手はジョナサンの後ろ襟を掴んでいた。その拍子に細い首がやや絞まったようだったが、驚きの方が勝っていたのか、ジョナサンが泣き出すことはなかった。ディオは無意識の内に長く息を吐いていた。安心したのではない。こんなところで負傷やそれ以上のことが起こったら、どこかにその痕跡が残ってしまいかねない。それでは計画が――まだ立てていないが――台無しだ。だから、助けたわけではない。そう自分に言い聞かせるようにしながら、小さな体を階段の上に引き上げた。
「おい貴様、おれはじっとしていろと言ったんだぞ」
 声量は抑える代わりにジョナサンの耳を引っ張りながら強い口調で言う。ジョナサンはまだ目を丸くしている。たっぷり5秒は経ってから、先程のディオよりも長く――こちらは正真正銘安堵の――息を吐いた。
「……びっくりしたぁ」
「だから出るなと言ったんだ」
 ジョナサンは「でも」と口篭った。叱られているという自覚はあるらしく、他人の顔色を伺うような目付きがディオを苛立たせる。
「なんだ」
「お父さんのへやには、入っちゃあいけないから……」
 今でこそ、ディオもジョナサンも書斎への出入りは禁止されていない。が、小さな子供にはそれなりに危険な物――高所や重量のある書籍等――もあると判断してのことだろう、この頃のジョナサンは、書斎は入ってはいけない場所であると教えられていたようだ。甘やかされてばかりの頃かと思ったが、彼なりに言い付けを守ろうという意思は持っているようだ。
 ディオは再び息を吐いた。
「分かった。もう行こう」
 また勝手に歩き廻られないように――ついでに靴を履いていない足を何かが傷付けないように――、ディオはジョナサンの体を小脇に抱え上げた。本来の体格であれば考えられないことだ。何が面白いのか、ジョナサンははしゃいだように笑った。
 とりあえず書斎に戻り、ジョナサンの服や靴を回収した。床に散らばった物も、誰かに見られる前に片付けておいた方がいいなと思いながら、ディオはジョナサンの部屋へ向かった。彼の部屋はディオの部屋とほぼ同じ作りをしている。何度か――時には無断で――足を踏み入れたことのあるそこへ、誰にも気付かれることなくその身を滑り込ませた。
「ここならいいだろう。君の部屋だ。今度こそじっとしているんだ。いいな」
「はーい」
 慣れ親しんだ部屋に帰ってきて少し落ち着いたのか、ジョナサンの表情はいくらか和やかになっていた。ディオが2度とこの場所へ帰って来られぬようにしてやろうと考えている等とは知らずに……。
(具体的にはどうするか……だ)
 と言っても、そう難しいことではないだろう。今のジョナサンなら、大きめの鞄に入れて運ぶことが出来てしまう。屋敷の者が寝静まるのを待って、やはり眠っているジョナサンを運び出し、絞殺でも刺殺でも、何でも良い、その命を奪った上で屋敷から離れた川なり山なりへ捨ててしまえば……。いっそ彼の母親が死んだという崖をその場所に選んでやっても良い。顔は念のために判別出来ないようにしておくか。明らかに事故ではなく他人が手をかけた痕跡があることはそれほど問題ではない。“子供の死体”がジョナサン・ジョースターと結び付くこと等、あるはずがないのだから。後はディオが現場、あるいはその子供と一緒にいるところを目撃されずにいれば……。
(無力なものだな、ジョジョ)
 所詮、子供の力では大人には敵わないのだ。かつてディオ自身が一刻も早く離れたいと思いながらも結局は10年以上の歳月をあのクズのような父親の許で過ごさなければならなかったように。
 ジョナサンは椅子の上によじ登ろうとしているようだ。が、手が出ないので上手くいかない。ディオが抱え上げて登らせてやると、彼は眩しいほどの笑顔を見せた。
(きっとこいつは、おれのような苦痛を味わったことはないんだろう)
 ジョナサンはどこまでも恵まれている。母と行者、大人2人が死んだ事故を生き延び、着る服も、食べる物も、住む場所も、そして父が不在でも面倒を見てくれる人間も、全て揃っている。心身共に子供に戻ってしまうというわけの分からない状況にいても、こうしてちゃんと望んだ通り、椅子に登ることだって出来る。階段からも落ちない。ディオが生まれ育った地ではこうはいかない。これから訪れる死も、きっと彼に苦痛を与えることはないだろう。眠っている間に全てを終わらせてやる。それが、抵抗の力を持たぬ――ただ無知で無力な――今の彼への、せめてもの情けだ。
「お前は幸せ者だよ、ジョジョ」
 子供には高すぎる椅子に座って足をぶらぶらさせていたジョナサンは、ディオが無意識の内に声に出していた呟きを聞いて、首を斜めにした。
「しあわせ? ぼくが?」
「ああ」
「どうして?」
「ぼくがいるからさ」
 動き廻った所為か、首許で縛っていた袖が解けかけていた。ディオはそれを結び直してやった。
「ほらな」
 ジョナサンは少し考えるような仕草をしながら、新しく作られた結び目を眺めている。かと思うと、幾度目かの“あの”笑顔を見せた。
「そっかぁ!」
 瞳がきらきらと輝いている。
「ぼく、ディオがいたらしあわせなんだ!」
 ディオは急に息苦しさに似た何かを覚えた。心臓を内側から掴まれたとしたら、こんな感じだろうか。胸の中心部で何かが動いているかのような……。この感覚がなんなのか、ディオには分からない。ただ、この部屋も暑いと感じた。

 幼いジョナサンは椅子やベッドに登って飛び降りるという遊びを独りで延々と続けていた。見ているディオは最初の5分でとっくに飽きていた。一体これの何が楽しいのだろう。ナントカと煙は……というやつだろうか。手が使えないジョナサンに一々「だっこして」とせがまれるのが鬱陶しくて――それに着地の時に手を付けないのは少々危ない――、何か着られる物はないかと部屋の中を漁ってみた。袖のないベストなら良いだろうかと思ったが、広過ぎる襟を絞ることが出来ないので、あっさりと肩から落ちてしまった。
「ああくそっ、面倒臭い……」
 つい口調が荒くなった直後に、丁寧に畳まれた状態の子供用の服を衣装棚の一番下の引き出しに見付けた。おそらくは昔ジョナサンが着ていた物だろう。こんな物、なんの目的で残してあるのだろうか。思い出か。馬鹿馬鹿しい。着られる者のいない服なんて……。そう呟いた己の心の声が、一瞬違う男の声に聞こえた。それは父の声だった。「死んじまった女のものなんか――」。
 いつの間にかディオの表情は強張っていた。今でもあの男のことを思い出すと、体の奥底から憎しみが湧き上がってくる。特に今日は“子供”なんかが目の前にいるから、無意識の内に自分の過去を重ねてしまっているのだろうか――重なる要素等、ひとつもないのに――。
「ディオ……」
 ベッドから飛び降りたジョナサンが駆け寄ってきた。何故か、少し泣きそうな顔をしている。なんだと尋ねるよりも早く、彼はしゃがんだままのディオの肩に掴まりながら背伸びをし、ディオの頬にキスをした。ちゅ、と、小さな音が鳴る。
(……は?)
 意味が分からなくて、一瞬固まってしまった。ジョナサンは先程のしょぼくれた表情から一変して、満足そうな笑みを浮かべている。
「何をした」
「げんきが出るおまじない!」
 ディオは自分の頬に触れてみた。そこにはもう、なんの感触も残ってはいない。温もりさえも。一瞬で消えてしまう程度のこんなものが『おまじない』に等なるものか。そんな下らないことを教えたのは、どこの誰なんだ。
(下らない)
 だがディオは、少しだけ笑っていた。本人はそれに全く気付いていなかった。

 使用人の目を盗んで、厨房からパンを失敬してきた。それをジョナサンに食べさせている間に、ディオは書斎を片付けることにした。
 ジョナサンを子供にしてしまった古代のアイテムは一体どれだったのだろうかと周囲を見廻してみたが、眺めただけで分かれば、考古学者なんて職業は存在していないだろう。散らばった物の中には明らかに破損してしまっている物もある。それ等の中に該当の品があったとしたら、その謎は永遠に解けずに終わるのかも知れない。ジョナサンのノートに何か書かれていないかと見てみたが、発掘品のスケッチや発掘された場所や日時が記録されているだけで、どうやらまだ本格的な研究を始めたような痕跡はなかった。あるいは、まだ『本格的な研究』を始める対象を絞っている段階なのかも知れない。きっと、こんなことになるとはジョナサンも予想していなかったことだろう。
 出しっぱなしの本は空きのある本棚に適当に突っ込んだ。その他のガラクタは近くにあった収納用の箱に放り込んでおく。倒れた踏み台を元に戻せば、誰もジョナサンが作業中――のまま姿を消した――とは思わないだろう。
 廊下に誰もいないことを確認してから、ディオはジョナサンの部屋に戻った。本当は静かな自室で今後の計画を立てたいところだが、目を離した隙に――また――勝手に出歩かれては拙い。誰もいないはずのジョナサンの部屋から、子供の笑い声が聞こえてもいけない。
 ところが、ドアを開けた先は静かだった。
「……ジョジョ?」
 椅子に座ってパンを食べていたはずのジョナサンがいない。早速勝手に部屋を出たかと思ったのと、ベッドのシーツに不自然な膨らみを見付けたのはほぼ同時だった。
「ジョジョ、何をしている」
 寝ているのだろうか。返事はない。
 ディオがシーツを捲り上げると、そこにあったのはジョナサンの姿ではなかった。子供が潜り込んでいるのだろうと思って疑わなかった場所にあるのは、ただの枕だった。稚拙ではあるが、明らかなカモフラージュの意図がそこにはある。
(このディオをおちょくっている? いや、それよりもジョジョはどこへ……!?)
 まさかディオの企みを察して逃げたのでは……。中から開けられないように、ドアに楔でも打ち込んでおくべきだったか。しかしそれが部屋の外を通る者の目に止まっては拙い。いや、それよりも、ジョナサンを探さなければ……。
 ドアに向かって駆け出そうとすると、部屋の中で何かが動く気配がした。窓を開けているわけでもないのに、カーテンが不自然に揺れている。かと思うと、その中から子供――もちろんジョナサンだ――が飛び出してきた。
「ばあ!」
 ジョナサンは両手を広げてそう言った。
「……何をしている」
「かくれんぼ!」
 ディオは溜め息を吐いた。
「このディオが鬼か」
「うん!」
「それなら出てきたら駄目だろうが。そもそも勝手におれを巻き込むな。食人鬼だか吸血鬼だか知らんが、そんなものに付き合うつもりはないぞ」
 自分は忙しいのだ、独りで遊べと言うと、途端にジョナサンの表情は曇った。
「ひとりじゃあかくれんぼできないもん」
 碧い瞳が下を向く。泪こそ溜まってはいないが、そこにある感情は間違いなく“哀しみ”や“寂しさ”に類するものだ。
「お父さんはおしごとでいそがしいし、お母さんもいないんだもん」
 まだ精々4歳か5歳――いってても6歳――。親に甘えるなと言う方が無理な年齢だろう。だが同時に、己を取り巻く環境を理解してもいる。叶えられないその望みの代わりに、きっと彼は多くの物を差し出されてきた。恵まれた生活。満たされた日々。それでも心の奥底に空いた穴が塞がることはない――それはディオにも想像出来ないことではない――。そんな我が子を見かねて、ジョースター卿は一頭の犬を買い与えたのだろう。自分が家を空けている間の“友達”として。あの犬が傍にいるようになってからは、間違いなくジョナサンの孤独は癒されていたのだろう。そうでなければ、心の拠り所を持たぬ彼は、きっともっと卑屈な人間になっていたに違いない。そんな“支え”を奪ったのは、他ならぬディオだ。そのことを知るはずもない幼いジョナサンは、言葉を続ける。
「ぼく、きょうだいがほしかった。いっしょにあそべるお兄ちゃんか、弟が。そしたら、さみしくないでしょ?」
 「それはどうかな」と、ディオは心の中で呟く。ディオとジョナサンは、今では義理の兄弟の関係だ。だがディオが現れたことによって、ジョナサンの生活に影が差し始めたことは間違いない。“今”のジョナサンなら、こんな兄弟なら欲しくなかったと言うだろうか。
 小さい――しかも俯いている――ジョナサンに合わせるために、ディオは膝を折ってその場にしゃがんだ。上から見下ろしていた時よりも、幼い顔がはっきりと見えるようになる。その頬に、彼はキスをした。ちゅ、と、小さな音を鳴らす。
 ジョナサンは大きな目を更に大きく開いた。口までぽかんと開いている。間の抜けた表情に、ディオは思わず少しだけ笑った。
「おまじないだと、さっき言っていただろ」
 「もう忘れたのか、このマヌケめ」という言葉は心の中に留めておく。
 ジョナサンは再び光を散りばめたような笑顔を見せた。どうやらこの『おまじない』は、本当に有効であるようだ。

 夜になってから雨が降り出した。この天候の中、計画――と呼べるほど大した考えは浮かばなかった。が、きっとなんとでもなるだろう――を実行するのは危険だろうか。人目に付く可能性は減っただろうが、逆に万が一誰かの目に付くことがあれば、「こんな雨の中を大きな荷物を持った男が……」と、返って強い印象を与えてしまうことになる。それに道も悪い。下手をすれば本当に――ディオ自身も――事故に遭いかねない。夜が明けるまでに雨が上がりはしないか待ってみようか……。
 窓の外に目をやっていたディオの耳に、控えめなノックの音が届いた。こんな時間に誰だ。
(まさか……)
 ドアを開けると、予想通りの姿がそこにあった。子供用の寝間着が見付からなかったので昼間と同じように袖を縛ったシャツを着ているジョナサンは、不安そうな顔でそこにいた。
「なんだ。トイレか」
 しかしジョナサンはふるふると首を振った。
「あの、そうじゃあなくて……」
 はっきりしない態度だ。面倒臭いなと苛立っていると、窓の外を吹く風が、一際強く鳴った。雨脚も強くなっているようだ。やはり今日は無理か。
 ジョナサンの小さな体がびくりと跳ねた。どうかしたのかと思ったが、一瞬遅れて風の音に驚いたのだと気付いた。甲高い笛の音のような響きは、女の悲鳴にも似ている。
「……怖いのか?」
 ディオがにやりと笑いながら尋ねると、ジョナサンは「うー」と小さく唸るような声を上げた。
「だって、オバケが出るかも……」
 ディオがこの屋敷に来て間もなく7年になるが、そんなものは一度も見たことがない。が、
「ああ、いるかもなぁ。赤ん坊を残して死んでいった若い女の霊とか、生きたまま焼かれた犬の怨霊とか……」
 ジョナサンの喉がひっと鳴った。正直言って、彼をからかうのは面白かった。だがそんな小さな楽しみのための代償は大きかった。蒼褪めた顔が一瞬にして赤くなったかと思うと、彼はもう泣き出していた。誰かに聞き付けられたら、子供の霊が出るなんて怪談になりかねない。
「おい、このっ……煩いぞ! 静かにしろ!」
 怒鳴り付けたが逆効果だった。ジョナサンはわあわあと声を上げて泣いている。
 結局ディオは、今夜一晩ジョナサンの部屋で一緒に寝ることを条件に彼を泣き止ませるハメになった。左手で自分の枕を持ち、右手をジョナサンに引かれながら――ジョナサンの背が低く、下方向に引っ張られるので腰にきそうだ――廊下を移動する。何故こんなことにと呟いても、答えてくれる者は誰もいない。それどころか、本当に誰かに尋ねたら、「もう子供じゃあないんだから自分で考えなさい」とでも言われそうだ。
 一方ジョナサンは、すっかり機嫌が直ったようだ。ディオの手を引きながら歩くその表情には、笑顔が戻ってきている。本当に“オバケ”がいたとしたら誰か――ディオ――が近くにいようがいまいが、大して変わらないと思うのだが……。
 「ディオはこっちね!」と言いながら、ジョナサンはディオの枕をベッドの窓に近い方の位置に置いた。ちゃっかり外――悲鳴に似た風の音がする――から遠い方に自分は寝るつもりらしい。早く早くと急かされて、ディオは仕方なくベッドに入った。
「ディオ、おやすみなさい」
 ジョナサンがシーツの中へと潜り込む。子供特有の体温が伝わってきて、少し熱い。
 ふと、今なら簡単に“やれる”だろうかと思い付いた。こんなに近くに、彼はいる。あまりにも無防備だ。それどころか、ディオを頼ってすらいる。この小さな口と鼻を塞いでしまえば……。
 痕跡を残してはいけないとは、頭の隅の方で常に考えていた。故に、どこまで本気だったのかはディオ自身にも分かっていない。それでも彼の手は、ジョナサンの顔に触れていた。柔らかい。それに温かい。ジョナサンはすでに微睡みの中にいるようだ。少し力を加えれば、それで“終わる”……。
(本当にマヌケなやつだ)
 頬を軽くつねってやると、ジョナサンの口から「ふにゃあ」とおかしな声が出た。ふっと息を吐いて、ディオはその手を離した。
 明日の天気がどうなるか分からない。今ここでジョナサンを始末したとしても、捨てに行ける機会がなかなか訪れないなんてことになっては困る。焦ってはいけない。
(明日だ。明日やってやるぞ、ジョジョ)
 ジョナサンの寝息と風の音を聞きながら、ディオはそう決意した。

 ジョナサンが寝入ったら、さっさと自分の部屋へ戻ろう。そう思っていたのに、いつの間にか寝間着の胸元をぎゅっと掴まれていて、身動きが取れなくなってしまっていた。ジョナサンは悪夢を見ている様子もなく、すやすやと安らかな寝息を立てている。それに引き込まれるように、いつしかディオも意識を手放していた。ジョナサンのベッドに入って1時間もしない内に雨も風も嘘のように止み、星空がその姿を見せていたことを、当然彼は知らない。

 目が覚めるとカーテン越しの朝陽で部屋の中はわずかに明るかった。窓の方へ顔を向けて寝ていたので、少々眩しくすら感じた。
 昨日は結局無駄に時間を過ごしてしまった。そういえば授業がない日だからと、論文を仕上げてしまおうとしていたのではなかったか。今日こそはと起き上がって視線を後ろへ向けると、そこには2日振りに見るジョナサン・ジョースターの姿――呑気そうな顔で寝ている――があった。即ち、昨日見た子供ではなく、今現在の――ディオと同い年の――ジョナサンの姿だ。元の年齢に戻っている。
 寝起きで頭が働かない。もしかしたらあれは夢だったのか? いや、そんな馬鹿な。そうだとしたら、何故自分はジョナサンの部屋で――ベッドで――寝ているのだ。
 部屋の主はすやすやと寝息を立てている。呑気だ。昨日はオバケが怖いと泣きじゃくっていたのに。彼を子供にしてしまった古代のアイテムの力は、1日しかその効力を持たないものだったのだろうか。それは、まあ良い。とりあえず置いておくことにしよう。問題は、何故ジョナサンが全裸なのか、だ。寝る時は何も身に付けない派か? いや、良く見ると枕元にかつてはシャツだった物がある。残骸と化したそれは、昨夜ディオが――子供の――ジョナサンに着せた物だ。おそらく、元の体型に戻る時に自然と破れたか、窮屈さに眠ったまま裂いたかしたのだろう。そのまま首が絞まれば良かったのに。
 なるほど、ではやはりあれは夢等ではなく、現実にあったことなのだ。つまり、ディオが裸のジョナサンの隣で寝ていたということもまた事実だ。まさか“夢だった”どころか、逆に忘れてしまった記憶がありはしないだろうな……?
(ない……はずだ)
 昨夜は早々と眠ってしまったし、今の今まで目を覚ましてはいない。ディオはきちんと寝間着を着ているし、おかしな痕跡もない。大丈夫だ。そもそも相手はジョナサンだぞ。こんな無駄にでかくて筋肉の塊のような男に、“そんな気”を起こすわけが……だが幼少の頃のあのほっぺの感触は正直気持ち良かった。
(いやいやいやいや、そんなことはどうでも良いのだ!)
 ディオは物音を立てないように、それでいて自分でも驚くようなスピードでジョナサンの部屋を出た。確認は完全に怠ったが、廊下に使用人の姿はなかった……ように思う――むしろ願望――。
 今日は授業のある日だったか? 今日は何日だ? まだ少し混乱している? 部屋で休んだ方が良いかも知れない。なんだか眩暈もしてきた。視界が歪む。自分の部屋に駆け込んだところで、ディオの意識は途切れた。

 シーツの中に、自分の物ではない体温が残っていた。ついでに枕も。やはり夢ではなかったのだと、ジョナサンは心の中で呟いた。それでも彼が感じた感覚は、夢を見ている時のそれによく似ていた。意思を持って行動する自分を、客観的に眺めるもうひとりの自分がいるようなそれ。幼い自分と、ディオが共に過ごした1日に満たない時間を、彼ははっきりと思い出すことが出来る。
 不測の事態に遭遇したジョナサンを見て、ディオが何を思っていたのかは分からない。彼の胸中にあるものには、いつも触れることが出来ない。が、夜の闇と強風が立てる音に怯える自分に、ディオが寄り添っていてくれたことは事実だ。危うく転落しそうになるのを助けてくれもした。初めて出会った日から今日まで、彼との間にある友情を心から信じられたことは残念ながら一度もない。が、もしかしたら最初から年の離れた兄弟として出会っていたら、案外上手くやれていたのかも知れないと思った。
 それにしても、自分が集めた古代遺跡からの出土品の中に、あんな効果を持つ物が混ざっていたとは……。一体どれが原因だったのだろう。見当も付かない。当面の間は研究対象を石仮面に絞ろうと思っていたところなのに、その決意が揺らぎそうだ。
(それよりも、ディオにお礼を言わなきゃ)
 ジョナサンが目を覚ます直前に、ディオは自分の部屋へと戻って行ったようだ。今すぐ行けば、彼がもう一度眠ってしまう前に話が出来るかも知れない。
 ジョナサンは服を着ると、ディオの忘れ物の枕を小脇に抱えて部屋を出た。邸内は静かだ。それでもそろそろ使用人達が仕事を始めている頃だろうか。
 ディオの部屋の前に辿り着いたジョナサンは足を止めた。ドアがわずかに開いている。その先に、誰か倒れてはいないか? “誰か”? そんなの明白ではないか。
「ディオ!?」
 ドアを開け放つと、予想外の光景が視界に飛び込んできた。床に横たわっているのは、小さな子供だった。
「まさか……」
 抱き起こした子供は、透けるような白い肌に、金色の髪をしていた。大人物の寝間着は半分脱げかけている。年の頃は、4歳か、5歳くらいだろうか。左の耳には、オリオン座に存在する3つ並んだ星のようなホクロがある。
「ディオ……? 君なのかい……?」
 ゆっくりと開かれた瞳は綺麗な赤色をしていた。ディオのそれと、同じ色だ。
「ディオ、小さくなったね」
 ジョナサンは微笑みかけた。
「大丈夫。ぼくがついててあげるからね」


2017,08,10


関連作品:Little Star 2(雪架作)

関連作品:Little Sibling


幼児化ネタ合わせしようぜ企画第一弾!
同日更新の2部編(セツさん作)は関連作品リンクから!
「あんたショタコンなのになんでショタネタ書かないの?(要約)」と言われて自分が何者であったかを思い出しました(笑)。
細かい設定は投げっぱなしで書いたのですが、セツさんが2部の方でしっかりした設定作ってくれました! 感激です!!
自分が書いた話の続き書いてもらうの面白い!
あと1部と2部でリンクしている部分と全然違っている部分を見比べると楽しい。なにこれ楽しいっ。
<利鳴>

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